外来機能報告論議の前に「外来医療ビジョン」検討せよ、再診患者の「逆紹介」推進こそが最重要課題―日病・相澤会長
2020.3.17.(火)
外来医療機能を報告させる議論が厚生労働省の検討会で進んでいるが、そうした議論の前に「我が国の外来医療のあるべき姿」をまず明確にすべきである。外来患者の大病院集中是正に向けては、「再診・再来患者」の逆紹介推進が最も重要であり、そこに言及せずに「紹介状なし外来受診患者の定額負担徴収」を議論しても意味がない―。
日本病院会の相澤孝夫会長は、3月17日の定例記者会見でこのような考えを強調しました。
医療計画見直し検討会で「外来機能報告」論議が進む
この方向性については、病院団体等からの「外来医療の機能分化やかかりつけ医機能についての議論をまずしっかりと行うべき」との強い指摘を受け(関連記事はこちらとこちら)、▼社会保障審議会・医療部会等や医療計画の見直し等に関する検討会で、ベースとなる「外来医療の機能分化」「かかりつけ医機能の推進」に関する方向性を固める▼社会保障審議会・医療保険部会や中央社会保険医療協議会で「対象病院」や「金額」「医療保険の負担を軽減する仕組み」などを議論する―という2つのレールで議論を進めることになりました(関連記事はこちらとこちら)。
このうち「医療計画の見直し等に関する検討会」では、外来機能の明確化やかかりつけ医機能の強化などについて4月に中間取りまとめを行うスケジュールで議論を開始。とりわけ外来機能に関して、「医療資源を重点的に活用する外来について、医療機関ごとにその機能を明確化し、地域で機能分化・連携を進めていく枠組み」を検討する方向が厚生労働省から示されました(関連記事はこちらとこちら)。
外来医療ビジョンを作成し、再診患者の「逆紹介」を推進することが最重要
この点について相澤会長は、日本病院会として「200床以上の一般病院に、紹介状なし外来受診患者からの特別負担徴収義務を拡大する仕組みには、明確に反対する」考えをまず強調。
さらに、「医療計画の見直し等に関する検討会」に示された「医療資源を重点的に活用する外来について、医療機関ごとにその機能を明確化し、地域で機能分化・連携を進めていく枠組み」についても、「そもそも我が国の外来医療をどう考えていくのかというビジョンの議論からすり替わってしまっている。医療機関に外来機能報告を求めたとして、外来医療のビジョンがなければ、その先が全く見えない。外来機能の報告が医療の質向上や患者満足度の向上につながるのであれば、我々も協力していくが、そうとは考えにくい」と批判しています。
そのうえで相澤会長は、個人的見解との前置きをしたうえで、「外来医療のビジョン・在り方」「大病院への外来集中是正」に関する議論について、次のような考えを示しています。「紹介状の有無や特別料金」を問題にするよりも、「再診・再来に関する逆紹介」の推進こそが外来医療の機能分化に直結するとの考えと言えるでしょう。
▽まず、外来医療を「初診」「再診・再来」「救急搬送」「特殊外来(人工透析など)」に区分する必要がある
▽このうち、全世代型社会保障検討会議が問題にする「紹介状」が関係するのは「初診」のみである。この点については、▼紹介状患者を中心に診る病院▼紹介でない一般外来患者を中心に診る病院―に一定程度区分できる。その際、外来だけを切り離すのではなく、外来・入院などを一体的にみた「そもそもの病院の機能」で判断が可能である
▽「再診・再来」には、▼がん手術後の患者に対する放射線療法▼がん手術後の患者に対する外来化学療法▼白内障の手術▼一般のクリニック等でも対応可能な指導・投薬―など、極めて多様な形態がある。「どういった形態の再診・再来がどの程度行われているのか」というデータを把握したうえで、「一般のクリニック等でも対応可能な再診・再来」について逆紹介が適切に行われているのかの実態を見て、そうした再診・再来について地域のクリニック等への逆紹介を進めていくべきである
さらに相澤会長は、患者・国民に「高度な機能を持つ病院に、『一般のクリニック等でも対応可能な再診・再来』が集中すれば、勤務医の負担も大きくなり、高度な再診・再来が必要な患者への医療提供が阻害されてしまう。高度な治療が一定程度終了して病状が安定し、『一般のクリニック等でも対応可能』になった場合には、近隣のAクリニックを紹介(逆紹介)するので、そちらを受診してほしい。Aクリニックとは地域連携関係が構築できており、病状の変化などがあれば、もちろんすぐに当院に紹介してくれます」旨をきちんと説明し、理解してもらうことがとりわけ重要であるとも強調。医療機能の分化・連携の強化には、医療機関だけでなく、患者・国民の協力も必須となります。
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