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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

新型コロナの第3波、感染症者減らさなければ地域医療は崩壊、医療計画に「予備ベッド確保、スタッフへの教育」など記載を―日病・相澤会長(2)

2020.12.1.(火)

新型コロナウイルス感染症のいわゆる「第3波」により、例えば北海道旭川市などでは医療崩壊が起こりつつある。まず「感染者を減らす」対策をしなければ最悪の事態になりかねず、国において「きちんとした感染拡大防止策」を実行してほしい―。

2024年度の第8次医療計画から「新興感染症対策」が位置付けられることになるが、例えば「平時からの感染症に関する教育・研修」「医療機関間、診療科間の連携強化」「予備ベッドの確保」「感染症指定医療機関の在り方の整理」「地域のガバナンス体制の整理」などを行っておく必要があり、日本病院会として近く「提言」を行う—。

日本病院会の相澤孝夫会長は、11月30日の定例記者会見でこのような考えも明らかにしています。

2024年度からの第8次医療計画に「新興感染症対策」を位置付ける

医療計画の中に「新興感染症対策」を位置付ける方針が固まりつつあります。これまでに▼厚生科学審議会・感染症部会▼社会保障審議会・医療部会▼医療計画の見直し等に関する検討会―で議論が行われ、次のような大枠が概ね固まりました。今後、医療部会での了承を踏まえて、改正法案(医療法改正案など)が作成され、成立後に詳細を詰めていくこととなります(関連記事はこちらこちら)。

(1)新興感染症対策を医療計画の「6事業」目に位置付ける(2024年度の第8次計画から)

(2)次のような内容を、各都道府県の医療計画に記載することとする
【平時からの取組】
▽感染症指定医療機関(感染症病床)や、感染拡大時に活用しやすい病床・病床以外の部屋(スペース)等の整備
▽医療機関における感染防護具等の備蓄
▽感染管理の専門人材の育成(ICN:感染管理看護師、など)
▽院内感染対策の徹底
▽医療機関におけるPCR検査等病原体検査の体制の整備

【感染拡大時の取組】
▽個々の医療機関における取組の基本的考え方(▼感染拡大時の受入候補医療機関(重症例、疑い症例等を含む)▼患者が入院する場所の確保に向けた取組(病床・病床以外の部屋(スペース)等の活用など)▼感染症患者に対応するマンパワー(医師、看護師等)の確保に向けた取組(病院内の重点配置など)▼感染防護具や医療資機材等の確保―など)
▽医療機関間の連携・役割分担の基本的考え方(▼救急医療など一般の医療連携体制への影響にも配慮した受入体制に係る協議の実施▼感染症患者受入医療機関への医師・看護師等の人材支援―など)
▽臨時の医療施設や宿泊療養施設の開設
▽外来体制の基本的考え方

(3)「新興感染症等の感染拡大時における医療」(上記(2)参照)について、他の5疾病・5事業及び在宅医療と同様に、各都道府県に対し「感染症対応に係る医療資源の状況など、地域の実情に応じた計画の策定と具体的な取り組みを促す」こととする



新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症対応、とりわけ重度者・中等症者への対応は、主に「重点医療機関」等に指定された地域の基幹的な病院が行うこととなり、日病の会員病院がこの中心になってきます。

このため日病幹部はこの問題を注視しており、(1)から(3)の内容について検討を行い、今後「提言」を行っていく方針を固めています。

とりわけ多くの意見が出ているのが(2)の記載内容についてです。例えば、次のような非常に具体的な提案が出ており、今後、記載内容を考えていく際に重要な視点となることでしょう。もちろん地域によって状況(医療資源、感染拡大の状況など、地理的特性)が異なるため、国(厚生労働省)が計画の基本指針を定め、それに沿いながら、地域の実情を踏まえた計画をそれぞれ作成していくことになります。

▼ベッドの確保はもちろんだが、「医療従事者の確保」がさらに重要であり、日常から「感染症に対応できる」ようにスタッフを教育・研修することが重要となる

▼感染症拡大時には「極めて多忙な医療機関・診療科」(呼吸器や救急科、感染症科など)と「新規患者が来ない医療機関・診療科」とが出てくるため、協力体制や総合的に感染症を診療できる医師の育成などが重要となる

▼地域の「感染症対応」のガバナンス体制(どの医療機関を感染症対応に特化させ、どの医療機関を重点医療機関等に指定し、ベッドをどの程度確保するのか、など)を平時から整備する必要がある

▼これまでの感染症指定医療機関は、どちらかと言えば「隔離」を目的としているが、今後はECMO(体外式膜型人工肺)や人工呼吸器等を整備し、重症患者に対応できる施設を感染症指定医療機関としていく必要がある

▼老人施設(介護保険施設など)などでクラスターが発生した際に、どのように対応するのかなどを平時から決めておく必要がある

▼国は「病床削減」の方向を示しているが、平時は使わず、感染症拡大時に稼働させるような「予備ベッド」などを整備していく必要がある

▼地域住民に「感染症とはどういう疾病で、どのように対応していくのか」を啓蒙し、風評被害(一部には「新型コロナウイルス感染症患者を受けている病院のスタッフ」に対する心ない中傷などがあった)をなくしていく必要がある

▼感染拡大時には、医師・看護師・臨床工学技士・診療放射線技師などスタッフ総出で対応することとなり、平時から「チーム医療」を推進していくことが重要である



また、感染症に対応する体制について、「2次医療圏では対応しきれない」「場合によっては都道府県を超えて、ブロック単位での対応が必要になる」といった意見も日病幹部から多数出ています。

日病内の医療政策委員会で意見をまとめ、近く国に対し「提言」が行われる見込みです。



なお、現在、いわゆる「第3波」が襲来しており、全国各地で「即応病床(新型コロナウイルス感染症患者を即座に受け入れられるよう、事実上の空床としておく病床)の占有率が高まる」など、医療現場には緊張が走っています。

相澤会長は「例えば北海道旭川市などでは、医療崩壊が現実の問題となっている。必死に堪えているが、まず『感染者を減らす』ことが必要である。国においてきちんとした感染拡大防止策を実行してもらわなければ、大変な事態が生じてしまう」と強く訴えています。

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