新たな公立病院改革ガイドライン等、公立病院の「経営強化」「機能強化」を目指す―全自病・小熊会長と望月副会長
2022.1.14.(金)
総務省が「2021年度に新たな公立病院改革ガイドライン」を示す考えを明らかにしている―。
各公立病院ではガイドラインを踏まえて改革プランを作成・実行することが求められるが、これまでと異なり「公立病院の経営強化・機能強化」を目指すものとなっている点に留意する必要がる―。
例えば「基幹病院に医師や看護師などを集約化し、そこから地域医療機関へスタッフ派遣をする」ような仕組みを地域ごとに構築することが求められる。総務省はこうした取り組みに財政支援を行う考えも示している―。
全国自治体病院協議会の定例記者会見が1月13日に開催され、小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)や望月泉副会長(八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長)からこういった考えが示されました。
なお小熊会長は、新型コロナウイルス感染症のオミクロン株が猛威を振るう沖縄県の病院に「看護職員派遣」の協力依頼を全自病会員病院に行う考えも明らかにしました。
感染症対応では「一般医療とのバランス」「人材確保」「医療機関間連携」などが極めて重要
Gem Medで報じたとおり、総務省は「2021年度中に新公立病院改革ガイドラインを示す」考えを明らかにしています。
従前より、公立病院については「経営状況が厳しい」「医療従事者の確保が難しい」などの大きな課題があり、総務省の示す「公立病院改革ガイドライン」に沿って、各病院で改革プラン(公立病院改革プラン)を策定・実行することが求められています。ガイドラインは定期的な見直し(当然、各病院の作成する改革プランも定期的な見直しが必要)が行われています。新型コロナウイルス感染症の蔓延により新たなガイドライン策定が遅れていましたが、昨冬(2021年12月)に新たなガイドライン(持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン)の方向性案が提示され、「2021年度中に新たなガイドラインが示される」こととなっています。
この点、総務省の検討会(持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化に関する検討会)委員でもある望月副会長は、「従前のガイドラインでは『公立病院の赤字解消』を目指していたが、新たなガイドラインは『公立病院に持続可能性確保、経営強化』を目指すものとなる」と強調。とりわけ「限られた医師・看護師等の医療資源を地域全体で最大限効率的に活用する」視点が重要であるとし、例えば「地域の基幹病院に医療資源を集約化し、そこから他の中小病院などに医師・看護師を派遣する」仕組みを地域ごとに構築していくことなどを提案しました。こうした取り組みには国による財政支援(医師・看護師等の派遣について特別交付税措置が拡充される)も行われます。こうした点を念頭において、各公立病院で来年度・再来年度(2022・23年度)に改革プランを作成し、実行に移していくことが重要です。
このほか、公立病院の「経営強化」に向けて、総務省では▼機能分化・連携強化の推進にかかる病院事業債(特別分)の拡充・延長(複数病院を統合する場合のほか、基幹病院が不採算地区病院へ支援を強化し、機能維持する場合も対象に追加する)▼改革プラン策定や経営強化を支援する専門アドバイザーの派遣―などの支援を実施することも明らかにしています。
ところで、「コロナ感染症のオミクロン株が急拡大する中で、公立病院に改革プラン作成・実施を求めることはできるのか?」という疑問もわきます。この点、小熊会長は「コロナ感染症対策で厳しい中ではあるが、経営強化・改革を放置するわけにはいかない。2024年度からは第8次医療計画が稼働し、医師働き方改革も運用される。自治体病院の機能分化・強化や人材確保などを進めていく必要がある。全自病の常務理事会で改革プランや改革ガイドラインについて協議しているが、反対の声は出ていない。各病院とも自院の機能を確認し、強靭な医療提供体制構築に向けて対応する意欲を持っている」と、総務省の描くスケジュールに沿って改革案作成・実行していく考えを述べています。
なお、コロナウイルスのオミクロン株が全国で猛威を振るい、とりわけ沖縄県では1月13日朝の時点で628名もの看護職員が「オミクロン株感染、あるいは濃厚接触者などで休暇取得をせざるを得ない」状況となっています。感染拡大はさらに続くと予想され、小熊会長は、全自病の会員病院に対して可能な範囲で「看護職員の沖縄県への派遣」を検討する依頼を早急に行う考えを明らかにしました。沖縄県の県立八重山病院や県立中部病院からは「1人でも2人でも派遣していただければありがたい」との要望が出ており、派遣スタッフは沖縄県を窓口に各病院に配置される見込みです。もちろん他地域でもオミクロン株が猛威を振るい始めており、小熊会長は「可能な範囲での派遣検討を依頼する」考えを強調しています。
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