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診療報酬改定、病院経営者は改定率よりも点数配分にこそ注目せよ―ライター・三竦の霞ヶ関ウォッチ(最終回)

2015.9.7.(月)

 6月末に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太方針2015)を踏まえ、7月24日には2015年度予算の概算要求基準(予算シーリング)が閣議了解された。8月には、この予算シーリングに基づいた概算要求が行われ、今後は年末にかけて予算編成作業が進められる。

 この年末の最大の焦点は診療報酬改定だ。とりわけ、「国民健康保険および後期高齢者医療に係る国庫負担と地方負担分の額並びに協会けんぽの国庫補助額」を来年度、どれくらい見積もる必要があるのかが注目される。いわゆる改定率の議論である。厚生労働省や医療関係団体、与党議員らがプラス改定を主張し、マイナス改定を求める財政当局との綱引きで大騒ぎになる。それでは、この改定率に病院経営はどれだけ影響を受けるのだろうか。

 結論から言えば、改定率は収益面では病院経営にあまり関係がない。改定率がプラスになると、何となくその後2年間の経営もプラスになると感じるし、マイナスになると経営に悪影響が及ぶのではないかと心配になるだろう。しかし、これは気分の問題でしかない。その理由は、改定率の意味を理解すれば見えてくる。
 
 実は改定率とは、国と地方が負担しなければならない医療費の負担額を前年度に比べ、どれだけ予算上確保すればよいのかを、名目で示しているにすぎない。もう少し詳しく説明すると、そもそも医療の費用は、国や地方があらかじめ確保した予算額内でキャップがはめられた構造にはなっていない。社会保険制度を採用している日本では、医療の費用は、診療側が保険者に請求し、それに基づいて支払われる。請求を受けた保険者側では、診療側からの毎月の請求に確実に応えるため加入者から保険料を徴収し、支払いに備える。万が一、保険料の徴収よりも支払いが多くなり支払い能力がなくなったら、金融機関からの借入れなどによって支払いの滞りを防いでいる。もちろん、金融機関への返済分は翌年度の保険料額に上乗せして賄うことになる。

 そして国や地方は、それぞれの保険者の財政状況に応じ、法律で決められた医療給付費の総額の一定割合を負担したり、補助したりしているにすぎない。つまり診療側は、国や地方が決めた名目上の医療費の予算額にしばられてはいないのだ。実際、改定率がマイナス3.16%だった2006年度の国民医療費(実績値)は対前年度比0.0%で、改定率通りに下がっているわけではない。

 それでは改定率とは一体何か―。繰り返しになるが、改定率は、保険者(国民健康保険、後期高齢者医療および協会けんぽ)が支払わなければならない予算上(名目)の医療費の対前年度比だ。そして、それぞれの保険者はこの名目上の医療費を基に翌年度の保険料額(率)を決める。病院経営では、改定率は収益面ではなく、従業員に対する法定福利厚生費として費用面に大いに影響するとも言えよう。
 
 病院経営者は2年に一度の診療報酬改定でどこに注目すべきなのか―。当然、それぞれの病院がメーンにしている治療行為の点数と施設基準の見直しだ。改定率をめぐるドタバタよりも、点数配分と施設基準の見直しが議論される中央社会保険医療協議会の動向にこそ注視してほしい。

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