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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

【衝撃スライド】重症患者のベッド数、予想上回り12倍以上―今さら聞けない2025年問題(6)

2015.9.14.(月)

 今さら聞けない2025年問題。今回は国の予想を大幅に上回り、12倍以上に増えてしまった重症患者のベッド数について、どのような対策が考えられているのかを見ていきます。

限りのある手厚い医療

 7対1の看護師配置(入院患者7人に対して一人の看護師を配置)、10対1の看護師配置が多い状況について、それはそれでいいのではないかと思われる方もいるかもしれません。確かに、入院しているときにより手厚い看護を受けられることはできますが、一方で医療費もそれ相応にかかります。しかも、医療費で最もお金がかかる人件費がかかわってくるので、このままでは日本の財政が破綻してしまいます。

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 当初、7対1という手厚い配置を考えた時、厚生労働省は日本においてどれくらい7対1の病床が必要と考えていたのでしょうか。現在、このワイングラス型の図で見ると7対1病床は36万床あります。しかし、これはまだ公になっていないデータかもしれませんが、当初、厚労省が必要と考えていた7対1病床は3万床を下回る程度だったと言われています。それが今では、予想を大きく上回り、12倍以上となっているのです。

 それによって人件費、人の配置が多くなっているので、お金が予想を大きく上回ってかかることになってしまいました。確かに、病院では手厚い看護を受けることはできますが、当初の想定以上に入院医療、急性期医療にお金がかかっているのが現状です。このままでは将来の医療費が確保できなくなってしまいますので、高齢者が急増する2025年に向けて、現在のどの病期でも手厚い看護師配置を見直していかなければなりません。

機能別で再編目指す「砲弾型」

 それでは今後、どのように見直していくのでしょうか。まず、7対1、10対1が見直されていくのですが、特に7対1がどうなるかが焦点です。そして左の図のくびれている13対1、15対1ですが、ここは急性期(重症度が高い患者の受け入れ区分)を脱して、急性期的な治療が終わった段階のことを言う「回復期」の区分になるのですが、これを増やし、回復期を扱う病床を手厚くすることで、その先にある介護保険施設での療養や在宅復帰につなげていく、という流れが国の大きな政策の方向性です。

 この方向性について、それぞれの病床区分をどのような割合で見直そうとしているのでしょうか。右の図はそれを表しているものですが、現在のワイングラス型に対して、砲弾型と言われています。ワイングラス型と大きく異なるのは、ワイングラス型では7:1など看護師の人数で区分けされて人員配置されてきたのに対して、砲弾型では「高度急性期」「一般急性期」「回復期」「長期療養」の病床の「機能」の区分けで人員配置されていきます。形としては、高度急性期を少なめにし、回復期を多めにし、長期療養もそれなりに増やしていくという姿に再編しようとしています。

 では、ワイングラス型から砲弾型へはどのように再編していくのでしょうか。現在、当初の厚生労働省の予想に反して、7対1がなぜ増えてしまったのか。それは、7対1の入院基本料を取ることによって、病院経営上、大幅に収入が増えるというメリットがあったためです。それを今回は、国が機能別にコントロールしていきます。しかも、病院別ではなく、病棟(病院の1フロア)別にコントロールして目指す姿が、この砲弾型となります。

【連載:今さら聞けない2025年問題】
Vol.1◆鎌倉時代まで遡ると分かる人口の大激変
Vol.2◆団塊世代の高齢化による人口ピラミッドの逆転現象
Vol.3◆日本を財政破綻に導く「ワニの口」
Vol.4◆どうする死に場所のない47万人
Vol.5◆未来を左右するワイングラスと低負担高福祉の終焉
Vol.6◆重症患者のベッド数、予想上回り12倍以上
Vol.7◆日本を変えるターニングポイントは2018年
Vol.8◆最大の課題は医療に対する国民の意識変容

解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門アソシエイトマネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。
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