【衝撃スライド】最大の課題は医療に対する国民の意識変容―今さら聞けない2025年問題(8)
2015.9.16.(水)
今さら聞けない2025年問題。最終回は、2025年問題に対する国の対策の詳細と、それによって日本の医療がどう変わるのか、そのためには何が必要なのかについて、解説します。
2018年に向けて整備される高度急性期、一般急性期、回復期などの病床(ベッド)機能には、どのような役割が期待されているのでしょうか。
現在、手厚い医療が提供されている7対1(入院患者7人に対して一人の看護師を配置)や10対1の病床は、一般的には急性期(重症度が高い患者の受け入れ区分)病床と言われています。しかし、現在の急性期医療の現場は、手術や治療にあたって病院に入院する期間「在院日数」が急速に短くなってきています。さらに、2018年、2025年に向けてさらに在院日数は短くなっていきます。
そのため、高度急性期、一般急性期というのは、現在の7対1の急性期具合とは少し異なると言われています。現段階で言われていることは、高度急性期というのは、今でいうところのICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)、救命センターなど患者2、3人に対して看護師一人が担当するような非常に手厚い機能にしようと議論されています。
では2018年のタイミングに何を決めるのかということを、もう一度おさらいしておきましょう。2018年は高度急性期、一般急性期などの機能別の病床数を、地域別に決めるタイミングでして、この「地域別に決める」というところが非常に重要なポイントです。
具体的に決めることを言うと、都道府県別、二次医療圏別での人の配置です。つまり、「この地域には高度急性期の病床がこれだけ必要だから、病院や在宅で働く医療従事者が何人必要か」を試算します。それをさらに5年後、10年後にどのようにして維持していくのかということを、「地域医療ビジョン」、「地域包括ケア計画」、「医療計画」などの計画を通じて、2018年までに打ち出されていくことになっています。
その計画を作成するベースとなるのが、病院ごとに報告する病棟機能や人口動態データとなります。これまで、病棟機能のような病院のデータは、ブラックボックス化していると言われてきました。それは、医療のデータがなかなか外に出なかったということに起因しているのですが、この地域ごとで行われる話しで用いるデータは、すべて都道府県のホームページなどで公開されて、「自分が住む地域にはどれだけ高度急性期病床があるのか」「どの病院に行けば高度急性期医療を受けられるのか」「どのような病気の人がどれくらい増えるのか」などのデータが見えるようになります。
ただし、ここで注意点です。将来的には、みなさんが「この病院で医療を受けたい」と思っても、簡単に医療を受けることはできなくなります。なぜ7対1病床が増えてしまったのか――。単に病院が収益を追い求めたという原因もありますが、経営的な側面とは別のもう一つの理由として、患者である国民の皆さんがそういう医療を望んだということもあります。
「大学病院に行けば手厚い医療を受けることができる」「最先端の医療を受けたい」――。そう国民が望んだからこそ、望まれた病院は手厚い人員配置を行うことができました。医療費がこれだけ増えてしまったのは、国民がそれだけ手厚い医療を望んできたからという理由もあり、責任もあります。ただ、それでは今後、財政は持ちません。
今後、国民は地域ごとに定められた医療の内容に対して、自分が望むところに行けるという時代ではなくなります。今後は、自分が罹ってしまった病気に対して、行くべき病床は制度的に決まっていくことになります。まず、地域のかかりつけ医を受診し、そこで次の段階へ行く必要があるかが判断され、必要であれば次のステップに行くことにあります。また、長く高度急性期や一般急性期に入院していることはできなくなり、回復期や長期療養などの次のステップに行かざるを得なくなります。
2025年問題への対策は、国や病院側だけに改善を求めるのではなく、国民の皆さんの医療に対する意識の変容も欠かせません。それが2025年問題の大きな課題であり、国民として向かっていかなければならない課題であると言えます。
【連載:今さら聞けない2025年問題】
Vol.1◆鎌倉時代まで遡ると分かる人口の大激変
Vol.2◆団塊世代の高齢化による人口ピラミッドの逆転現象
Vol.3◆日本を財政破綻に導く「ワニの口」
Vol.4◆どうする死に場所のない47万人
Vol.5◆未来を左右するワイングラスと低負担高福祉の終焉
Vol.6◆重症患者のベッド数、予想上回り12倍以上
Vol.7◆日本を変えるターニングポイントは2018年
Vol.8◆最大の課題は医療に対する国民の意識変容