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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

市町村による子宮頸がん・乳がん検診の受診率向上に向け、SNS活用・学校や民間事業者との連携等進めよ—がん検診あり方検討会(3)

2023.2.2.(木)

市町村による子宮頸がん・乳がん検診の受診状況が芳しくないが、例えばSNS等を活用したPR、大学や民間事業者と連携したPRなどを行うことで、受診率が向上することが分かっており、市町村にさらなる取り組みを促していくことが重要である—。

国際的に見れば「子宮頸がん・乳がん検診の充実」はいの一番に取り組まれている事項であり、我が国は遅れていると言わざるを得ない—。

1月30日に開催された「がん検診のあり方に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった議論も行われています。同日には「新型コロナウイルス感染症によるがん検診等への影響」職域で行われるがん検診の実施状況に関する議論が行われたほか、「がん検診事業が適切に行われているのかを評価する指標の設定」論議も行われており、別稿で報じます。

子宮頸がん検診を受けない女性の声に耳を傾けて対策を検討すべき

我が国の死因第1位を独走する「がん」ですが、早期に発見し、早期に治療を行うことが「死亡率の低下、生存率の向上」にとって極めて重要です。がん検診には、大きく「市町村の実施する住民検診」と「事業所等で行われる職域検診」があります。

このうち前者の住民検診については、「精度管理、ガイドラインに沿った実施が相当程度進んでいる」と評価される一方で、「受診率が芳しくない」という課題があります(関連記事はこちら)。

この点、▼受診率向上に効果の大きな「個別の受診勧奨・再勧奨」を実施する▼子宮頸がん検診・乳がん検診の初年度対象者に無料クーポン券を配布する▼精密検査未受診者に対する受診再勧奨に取り組む—ことが重視され、さらに充実していくことが期待されています。

このうち「子宮頸がん・乳がんの初年度対象者に無料クーポン券」の利用率(2020年報告)を見ると、乳がんでは全国平均26.4%(中央値25.2%)、子宮頸がんでは同じく8.7%(同7.8%)と低調で、これまでに「自治体と大学との連携を強化していく」(18歳で大学に進学したが、住民票の移動をせず、20歳に到達しても市町村からのクーポン券が届かないケースがある)などの対策を検討してきています(関連記事はこちら)。

子宮頸がん検診においては、クーポン券の利用は低調である(がん検診の在り方に関する検討会(2)3 210805)

がん検診の受診率向上に向けて、国はクーポン券配布財源の確保などを行っている(がん検診の在り方に関する検討会(2)2 210805)



さらに今般、厚生労働省は「がん検診受診率向上に向けた工夫」を行っている市町村の取り組みを整理。例えば次のような取り組みを行っている市町村があることが紹介されました。

【SNS等の活用】
▽市町村のFacebook、Instagram、Twitter、LINEなどへ、がん検診の実施内容や予約の空き状況、コロナ感染対策、クーポン券利用、乳がん・子宮頸がんコラムなどを掲載する
▽無料動画配信サイトであるYouTubeで、がん検診受診勧奨動画を公開する

【イベント等での啓発】
▽10月にピンクリボン月間・週間などを設け、「動物園内での周知啓発」「市施設のライトアップ」「公共機関への展示コーナー設置」「啓発グッズ配布」「ピンクリボン祭りなどのイベント開催」などを通じて、乳がん普及啓発や検診の受診勧奨を実施する
▽成人式の式典に「ピンクリボンツリー」を設置する
▽集団健診などの保健事業実施の際、献血や乳幼児健診(保護者向け)などの際にチラシを配布する
▽ショッピングモールで検診実施・パネル展示・啓発物品の配布を行う
▽新型コロナワクチン集団接種会場で、がん検診啓発チラシを配布する
▽企業と連携した受診勧奨などを行う

【学校との連携】
▽乳がん・子宮頸がん予防キャラバンにおける講座の開設、がん予防教室での講話、がん予防教育におけるクーポン利用の啓発、看護学生へのがん検診リーフレット配布などを行う
▽小中学生に対するがん教育において「20歳に子宮頸がん検診の無料クーポンが届く」ことを伝達する
▽小中学校児童の保護者向けにチラシを配布する、市内の公立学校にリーフレットを配布する
▽高校生を対象とした保健講話等の中で「20歳、21歳にクーポン券が届く」ことを周知する、高校生のライフプラン講座において啓発する
▽大学、短大、高等看護学校、専門学校等へ「子宮頸がん検診の普及啓発ポスター」を掲示する
▽学生・生徒はもちろん、教職員に対してがん検診の受診勧奨を行う
▽大学のSNSに「がん検診」情報を掲載してもらう

【その他】
▽防災無線と広報を使い、検診実施当日にはピーカー付き公用車で周知啓発する
▽町の電光掲示板で周知啓発する
▽クーポン券に関する専用相談ダイヤルを設置し、クーポン未利用者に対して再勧奨の通知を発送する
▽大学の夏季休暇を含んだ8-11月を子宮頸がん検診受診期間に設定し、夏休みの帰省時に合わせてクーポン券を送付する
▽市町村間の「相互乗入れ制度」を実施する
▽民間事業者と連携し「子宮頸がん検診(無料クーポン券)に関する啓発カード」を配布する

こうした取り組みを行っている市町村では「クーポン券利用率が高い」(=受診割合が高い)というデータも出ています。

SNS活用などのがん検診受診勧奨PRを行う市町村では、そうでない市町村に比べて検診受診率(無料クーポン利用率)が高い(がん検診あり方検討会(3)1 230130)



このため、検討会では▼市町村の取り組み状況を追跡し、好事例を周知する▼より効果的な普及・啓発方法を検討する▼SNS活用なについて民間事業者と市町村との連携を強化する—方向を確認しています。

また、構成員からは▼民間事業者との更なる連携を強化すべき(若尾直子構成員:NPO法人がんフォーラム山梨理事長)▼なぜクーポン券を利用しないのか、検診を受診しないのかを、対象者である20歳あるいは、近く対象になる10代の女性を対象にヒアリングすべき(松田一夫構成員:福井県健康管理協会副理事長・がん検診事業部長、中山富雄構成員:国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部部長)▼職域検診を受診できなかった者には、特別休暇(年次有給休暇とは別に)を付与し、市町村の住民検診を受診できる機会の確保を企業に義務付けるべき(松田構成員)▼医療費適正化に向けた保険者努力支援制度の中に「検診受診勧奨」などの項目を付与し、積極的に取り組む市町村へ経済的インセンティブを付与してはどうか(高橋宏和参考人:国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室長・がん医療支援部検診実施管理支援室長)▼有名芸能人・スポーツ選手などを起用したPR、親子での検診受診勧奨(20歳の娘は初回の子宮頸がん検診、母親は一般のがん検診を、母子で話し合って受診することを推奨するなど)などを検討すべき(中野惠構成員:健康保険組合連合会参与)▼厚労省の若手女性職員を対象にアイデアを募ってはどうか(中野構成員)—などの、前向きかつ具体的な提案が出ています。こうした意見も参考に、市町村でがん検診受診勧奨に向けた取り組みがより一層推進することに期待が集まります。

なお、若尾構成員は「職域検診で子宮頸がん・乳がん検診がオプション(希望者のみ、追加料金を支払って受ける)扱いとなっているケースが多いが、男性では胃がん・肺がん・大腸がんの3項目、女性ではこれに加えて子宮頸がん・乳がんの5項目が必須・基本であるとの認識を深めていくべき」と強調(関連記事はこちら)。中山富雄座長(国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部部長)も「国際的に見て、子宮頸がん・乳がん検診の充実はいの一番に取り組むべき事項であり、我が国は遅れていると言わざるを得ない」と述べ、早急な改善の必要性を訴えています。

少子化対策と同様に「当事者でなければ分からない」事情が多々あると予想されます。いわゆる「偉い有識者、学者」が「こうであろう」と考えるよりも、有識者対象者である10代・20代の女性の声に真剣に耳を傾けることが極めて重要で有用でしょう(関連記事はこちら)。



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