「昨今の医療政策は、肝心な部分を置き去りにし、ただ『先へ先へ進めよう』としている」と強い危惧—日病・相澤会長
2023.3.28.(火)
昨今の国の医療政策では「肝心なこと」を置き去りにしたまま、先に進めよう先に進めようとばかり動いており、さまざまなリスクが高まるのではないかと心配している—。
例えば電子処方箋1つをとってもそうである。禁忌薬の投与防止、重複投薬の防止という目的を達成するためには「個々の患者に投与されている薬剤をすべて把握する」という部分が肝心であるが、そこは置き去りにされたまま進んでいる—。
日本病院会の相澤孝夫会長が3月28日の定例記者会見でこうした考えを述べました。
5類移行後も、コロナ担当スタッフと一般患者担当スタッフがクロスしないように留意
Gem Medで既に報じているとおり、日本病院会は3月25日に2022年度の社員総会を開催。その席で相澤会長は「医療政策がものすごい勢いで、矢継ぎ早に変化しており、頭の整理すら難しい。しかし『厚労省内でもまとまっていないのではないか』と感じる」旨をコメントしています。
この点について3月28日の定例記者会見では、「肝心な部分を置きざりにし、ただ『先に進めよう、先に進めよう』としているように、非常にちぐはぐな状況である」と付言しました。
例えば、医療DXの一環である電子処方箋について、その目的は「禁忌薬の投与回避や、重複投薬の会費」などにあると説明されます。
相澤会長は「目的を達成するためには、退院時処方を含めて『個々の患者に投与されている薬剤をすべて把握する』ことが必須であるが、その肝心な部分を置き去りにして、ただ『電子処方箋の導入を全国の医療機関・薬局で進めよ』と動いている。すべての投与薬を把握しないままに進めれば、かえって禁忌薬の投与・重複投薬のリスクが高まる可能性すらある」と警鐘を鳴らしました。
もちろん電子処方箋や医療DXに限らず、医療計画をはじめとする医療提供体制、診療報酬も含めた医療保険制度全般について、問題点を1つ1つ洗い出し、関係者でどうすればよい解決策を導けるのかを丁寧に議論していく必要があると相澤会長は訴えました。
また3月25日の社員総会で相澤会長は「地域の病院が『病院群』を形成し、協力しあっていくことが極めて重要である」旨も強調しています。
これに関連して、新型コロナウイルス感染症でしばし中断していた「中小病院委員会」(日病の会内組織)の動きを活性化し、「地域から中小病院を考える会」を設置。地域ごとに「他地域の優れた取り組みも参考に、自治地域における地域密着型病院(主に200床未満の中小病院が中心となる)を強化していく」議論を行うものです。高齢化が進行する中では、地域密着型病院の「地域医療を支えるは柱」としての機能・役割がますます重要になっていく考えを相澤会長は強調しています。
さらに社員総会では「病院会の会費」規定についての見直しが行われています。これまで「基本会費+ベッド数×単価」で計算されていた会費を、▼99床まで▼199床まで▼299床まで▼399床まで▼499床まで▼599床まで▼600床以上—というくくりに整理しなおすものです。「分かりやすい」会費ルールを定めるものですが、日病の会費収益は17.9%・約5700万円減少してしまう見込みです。この点について相澤会長は「コロナ禍で、研修会や会議をオンライン実施するノウハウが蓄積され、支出を一定程度抑えることが可能になった。収益が2割弱減少しても、運営に支障はでない。『分かりやすく、低廉な会費』を実現できる」旨を説明しています。
なお、コロナ感染症が5類に移行した後の医療提供体制について、「厚労省や専門家会議は病棟単位のゾーニングは不要で、病室単位の対応で良しとしている。しかし、医療現場では『コロナ患者担当スタッフ』と『一般患者担当スタッフ』がクロスすれば、それだけ院内クラスター発生のリスクが高まるため、今後も『従前と同程度のゾーニングが必要』と考えている。こうした点について国は『医療現場の対応に委ねる』との姿勢をとっており、心配である」ともコメントしています。5類移行で「コロナウイルスの感染力が弱まる」わけでない点などに留意が必要です。
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