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GemMed塾 看護モニタリング

高カロリー輸液を末梢静脈から投与してしまう医療事故散発、誤薬防止6Rのルール化、オーダリングシステムの工夫など行え—PMDA

2024.1.19.(金)

中心静脈から投与しなければならない高カロリー輸液を、誤って末梢静脈から投与してしまう事故が散発している—。

「高カロリー輸液は「末梢静脈」からは投与できない」ことや、「末梢静脈投与と中心静脈投与とで用量などが異なる輸液がある」ことなどを再確認したうえで、各医療機関で「職種ごとの6R確認のタイミングや方法をルール化し、遵守する。オーダリングシステムにおいて医薬品名の前に『投与経路を表示』する」などの工夫を行い、事故防止に努めてほしい—。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)が1月17日に、「PMDA医療安全情報No.67(高カロリー輸液の投与経路に関する注意について)」を公表し、医療現場にこうした事故防止に向けた留意を呼びかけました(PMDAのサイトはこちら)。

高カロリー輸液は「末梢静脈」からは投与できない点の再確認を

PMDAでは、医療現場からヒヤリ・ハット事例や副作用・不具合報告を収集し、「繰り返し同様の事象が報告されている事例」「添付文書改訂等を通知した事例」などについて、医師・薬剤師・看護師・臨床工学技士等の医療従事者や人間工学分野などの専門家、医薬品・医療機器製造販売業者の業界団体の意見も参考に、「医療従事者に対して安全に使用するために注意すべき点」などをPMDA医療安全情報として公表しています。医療安全確保のために重要かつ有益な情報の1つです。

今般、「高カロリー輸液の投与経路」に関連する医療事故が散発していることを受け、PMDAが実施上の留意点を大きく次の4項目に整理し、医療現場に注意を呼びかけました。
(1)複高カロリー輸液の誤った投与経路からの投与
(2)末梢・中心静脈の両経路で用いうるが「注意」が必要な輸液
(3)高カロリー輸液の投与経路誤りの防止対策



まず(1)では、「末梢静脈から栄養輸液を投与していた患者について、主治医が『中心静脈ルートを確保できている』と思い込み、高カロリー輸液への変更を指示。看護師が『正しい投与経路の確認』をせずに末梢静脈から投与を開始してしまった」という事故事例を紹介しています。

中心静脈は太く血流も豊富なため、輸液がすぐに血液で希釈されることから高カロリー輸液の投与が可能ですが、末梢静脈は逆に細く血流も限られるために、「浸透圧比約3の輸液」が投与限界とされています。高カロリー輸液を末梢静脈から投与した場合、「血管痛」「静脈炎」などの有害事象が発現するおそれがあります。

PMDAは安全使用のための注意ポイントとして、(i)輸液容器にある「中心静脈点滴専用」などの施用部位表示を確認する(ii)処方時、調剤・監査時、投与・輸液交換時等、各職種において以下の「6R」のを妥当性を含めて確認する—ことを指摘しています。
【6R】
▽Right Patient?:正しい患者ですか?
▽Right Drug?:正しい輸液製剤ですか?
▽Right Purpose?:正しい使用目的ですか?
▽Right Route?:正しい投与ルートですか?
▽Right Dose:正しい用量か?
▽Right Time:正しい実施時間・投与時間ですか?

あわせて(i)について「中心静脈投与すべき輸液の一覧」を掲示しています。各医療機関で採用輸液と照らして確認してみてください。

中心静脈投与すべき輸液の一覧 ((PMDA医療安全情報67の1 240117)

末梢静脈投与と中心静脈投与とで「用量」などが異なる輸液がある点の再確認を

また(2)では、「患者に中心静脈ルートから70%糖液とアミノ酸輸液が投与されていたが、感染兆候のために抜去。医師は『70%糖液は末梢静脈からの投与が可能』と思い込み、末梢静脈から投与するよう指示。その際、『投与経路の変更』のみであったことから『薬剤師による確認』は行われなかった。末梢静脈からの投与開始後、静脈炎が認められ『70%糖液は末梢静脈から投与すべきではなかった』ことが発覚した」という医療事故を紹介。

PMDAは、安全使用のためのポイントとして(i)末梢静脈投与と中心静脈投与の場合で用量などが異なる輸液があり(以下に例示)、最新の添付文書を確認する(ii)50%以上の高濃度(高浸透圧)ブドウ糖液のバッグ製剤(200mL以上)は高カロリー輸液として使用され、中心静脈から投与する必要がある—ことをアドバイスしています。

濃度や用量等により投与経路を変える必要がある輸液の例(PMDA医療安全情報67の2 240117)

職種ごとの6R確認タイミング等のルール作成、オーダリングシステム工夫で事故防止を

これらを踏まえた(3)の「高カロリー輸液の投与経路誤りの防止対策」として、次の2点を例示しました。各医療機関で自院にマッチする手法を検討・実行することが重要です。

▽誤薬防止のための6Rについて、▼医師によう処方時▼薬剤師による調剤・監査時▼看護師による投与準備・投与直前—の各タイミングで、各職種が妥当性を含めて確認する
→施設内で「職種ごとの6R確認のタイミングや方法」のルールを作成し、明示・遵守する
【6R】
▽Right Patient?:正しい患者ですか?
▽Right Drug?:正しい輸液製剤ですか?
▽Right Purpose?:正しい使用目的ですか?
▽Right Route?:正しい投与ルートですか?
▽Right Dose:正しい用量か?
▽Right Time:正しい実施時間・投与時間ですか?



▽オーダリングシステムにおいて「医薬品名の前に『投与経路を表示』する」などの工夫を行う

事故防止策2例(PMDA医療安全情報67の3 240117)



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