気管切開チューブの取扱い時の注意事項を再整理、製品ごとのサイズ確認やチューブ先端位置の定期的確認など徹底を—PMDA
2023.11.1.(水)
気管切開チューブについては、製品ごとにサイズ表記などが異なるケースがままある。製品ごとにサイズ(外径・内径・長さなど)を確認するほか、チューブ先端位置の定期的な確認などを徹底することが重要である—。
また複管式カニューレでは「外筒のみ」での長時間は避ける必要がある—。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は10月30日に、「PMDA医療安全情報No.66(気管切開チューブの取扱い時の注意について(その2))」を公表し、医療現場にこうした事故防止に向けた留意を呼びかけました(PMDAのサイトはこちら)。
「チューブの先端の評価」にあたっては、複数の手法を組み合わせることが重要
PMDAでは、医療現場からヒヤリ・ハット事例や副作用・不具合報告を収集し、「繰り返し同様の事象が報告されている事例」「添付文書改訂等を通知した事例」などについて、医師・薬剤師・看護師・臨床工学技士等の医療従事者や人間工学分野などの専門家、医薬品・医療機器製造販売業者の業界団体の意見も参考に、「医療従事者に対して安全に使用するために注意すべき点」などをPMDA医療安全情報として公表しています。医療安全確保のために重要かつ有益な情報の1つです。
今般、「気管切開チューブ関連」医療事故が散発していることを受け、PMDAが実施上の留意点を整理し、医療現場に注意を呼びかけました。
PMDAでは、人工呼吸器使用前点検に関して(1)複管式(内筒と外筒の二重構造を有する)カニューレ使用時の注意点(2)気管切開チューブのサイズ選択・位置確認の注意点(3)気管切開チューブのサイズ表示の注意点―の3点を整理しています。
まず(1)の「複管式(内筒と外筒の二重構造を有する)カニューレ」に関しては、「患者が呼吸困難を訴えたため内筒を抜去。その後、呼吸状態が安定したため内筒を再装着せずに長時間使用したところ、分泌物により外筒内が閉塞し気管切開チューブを交換しなければならなかった」といった事故が生じています。
PMDAでは、▼スピーチカニューレなどの複管式カニューレを「外筒のみ」で長時間使用しない(内筒を外した状態での使用継続で、外筒が閉塞等した場合に気管切開チューブの交換対応が必要となる恐れあり)▼分泌物が多い場合には、患者の状態を確認し定期的な吸引や気管切開チューブの交換・洗浄を行う—よう注意喚起しています。
また(2)では、「新しい気管切開チューブに交換した数日後に狭窄音が認められ、気管支鏡検査を実施したところ気管切開チューブの先端に肉芽が形成されていた(チューブの先端が気管壁に接触していたため)。交換した気管切開チューブは従前のチューブに比べて長いことが確認された」といった事故が発生していることを紹介。
PMDAは、▼気管切開チューブごとに長さや角度が異なる場合があり、チューブ交換時は、必ず患者の状態を確認しチームで共有する▼気管支鏡等による定期的な「チューブの先端の評価」を行う▼肉芽形成や出血が見られたら、気管切開チューブの長さを調整できる可動式ウィングを有する気管切開チューブへの交換も考慮する—よう求めています。
なお、「チューブの先端の評価」にあたっては、▼胸郭の挙上や気道抵抗を確認する▼人工呼吸器の気道内圧や換気量の確認を行う▼胸部X線画像で先端位置を確認する▼吸引カテーテルの挿入抵抗を確認する▼気管支鏡で気管分岐部を確認する▼カプノメータで呼出曲線が正常であるか確認する—などの「複数の手法を組み合わせる」ことが重要であるとも付言しています。
さらに(3)では、「これまで使用していた気管切開チューブ(製品A)を他社の同一サイズのチューブ(製品B)に交換しようとした際、内径(ID)と外径(OD)のサイズを十分に確認せず、予定していた内径(ID)サイズよりも小さい気管切開チューブを使用したことで呼吸困難が生じてしまった」という事故を紹介。
PMDAは、「サイズ表示の数字のみで使用する製品を判断しない」よう強く呼びかけ、製品によってサイズ表示等の表記が異なるために「ID(内径)とOD(外径)の表示をよく確認する」よう求めています。
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