物価急騰によるコスト増等で「収支差額の減少」や「経常赤字」となっている医療機関や介護施設などに優遇融資を実施—福祉医療機構
2025.4.11.(金)
物価急騰によるコスト増等で「収支差額の減少」や「経常赤字」となっている医療機関等に優遇融資を実施しており、2025年度にも拡大継続する—。
福祉医療機構(WAM)がこのほど、こうした事業の内容を明らかにしました(WAMのサイトはこちら)。
病院経営、介護事業所等の窮状踏まえ、WAMが経営資金を優遇融資
Gem Medで報じているとおり、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会・全国自治体病院協議会の6病院団体による調査で「病院経営は危機に瀕している」(医業赤字病院は69.0%で、2024年度診療報酬改定前に比べて4.2ポイント増加、経常赤字病院は61.2%で、同じく10.4ポイント増加)状況が分かりました。

赤字病院・黒字病院の状況(6病院団体調査3 250310)
こうした病院経営逼迫の背景には「物価の急騰、人件費の急騰」があります(インフレ、為替変動など)。
保険医療機関等の収益の大部分を占める診療報酬は公定価格であるため、一般企業のように「物価や人件費が急騰し経営が厳しくなっているので、サービス価格(診療報酬)を引き上げて、コスト増を吸収しよう」と個々の医療機関等が行動することは難しく、ごく限られたものとなります(差額ベッド代や文書費などの引き上げなど)。
こうした状況下では、病院経営を維持するために診療報酬の引き上げや、補助金等によって「物価、人件費等の急騰」分を補填することが必要不可欠となります(この場合、ばらまきにならないように留意すべきとの指摘もある)。
この点、福祉医療機構(WAM)では、医療施設等を整備する際に必要となる建築資金、機械購入資金、長期運転資金を長期・固定で融資する事業を行っており、昨年(2024年)12月からは「物価高騰の急騰を受けて減益となった医療施設等への資金繰り支援」を目的として、長期運転資金について「通常の融資条件から貸付利率の引き下げ等の優遇措置を講じた融資」が行われています。
今般、引き続き収支が悪化している施設等に対して更なる支援を行うために、この優遇融資を大幅に拡充し「無利子かつ無担保等の優遇措置を講じた融資」を行うことになりました。
優遇融資(医療貸付)の内容を見ると、まず対象施設は次のように3区分に設定されています。
(1)前年同月等と比較して、物価高騰による費用の増加等のため収支差額の減少や経常赤字の状況にある
(2)(1)に加えて、職員の処遇改善に資する加算等を算定し、職員の処遇改善の取り組みを行っており、経営改善計画書をWAMに提出している
(3)(1)(2)に加えて、病床数適正化支援事業に係る事業計画(活用意向調査)の提出を行っている、または地域医療構想調整会議での合意を得て、地域のニーズを踏まえた再編・減床を行う—病院や診療所、訪問看護ステーションなど
この(1)(2)(3)の区分によって貸付限度額や貸付利率などが異なり、例えば(2)(3)の病院では次のようになります(審査がある点に留意)。
▽貸付限度額:7億2000万円
▽無担保貸付限度額:「500万円」と「直近の医業収益の2か月分」のいずれか高いほう
▽貸付利率:1.50%だが、「直近の医業収益の2か月分」を上限として(2)では当初2年間、(3)では当初5年間は「無利子」

2025年度WAM特別融資の概要2

2025年度WAM特別融資の概要2
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なお、2026年度の次期診療報酬改定に向けて、こうした医療機関の窮状などをまず確認することが中央社会保険医療協議会で決定しています。
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