希少がんの1つ「AR陽性唾液腺がん」、ダロルタミド+ゴセレリン併用のCAB療法が有効—国がん・神戸大
2026.3.24.(火)
これまで有効な治療法がなかった「アンドロゲン受容体(AR)陽性唾液腺がん」に対し、AR阻害薬「ダロルタミド」(ニュベクオ錠)の効能追加が薬事承認された(ゴセレリンとの併用によりAR陽性唾液腺がんに対する効能追加)—。
医師主導治験で「ダロルタミド(AR阻害薬)+ゴセレリン(LH-RHアナログ)を併用するCAB療法」の有効性・安全性が示されたことを受けたものである―。
国立がん研究センターと神戸大学が3月23日に、こういった研究成果を発表しました(国がんのサイトはこちら)。
「希少がん領域においては、アカデミア主導で科学的根拠を創出し、承認取得へとつなげる取り組みが極めて重要である」と研究チームは強調しています
希少がんの治療法開発に向けて、医師主導治験が非常に重要
希少がんは患者数が少ないため「標準治療が十分に確立されていない(確立が困難)」「新しい薬剤治療を受けられる機会が限られる」といった問題があります。
希少がんの1つに「唾液腺がん」があり、頭頸部がんにおけるシェアは約2-3%にとどまっています。
唾液腺がんには数多くの組織型がありますが、その中でも「唾液腺導管がん」(SDC)は進行が速く、かつ予後不良であり、切除不能局所進行または再発・転移した場合には有効な治療法が十分に確立されていません。
これまでSDCに対する薬事承認された標準的な全身治療は存在せず、「細胞障害性抗がん薬による化学療法」が実質的な標準治療とされています。しかし、本療法の奏効率は限定的で、毒性も強いことから、より有効で安全性の高い「分子標的治療」の開発が強く求められていました。
SDCでは、約70-90%でアンドロゲン受容体(AR)の発現が認められることから、「AR経路の阻害」が合理的な治療標的と考えられています。
この点、「AR阻害薬」と「LH-RHアナログ」(性ホルモンの分泌を抑える薬剤)とを併用する「CAB療法」(複合アンドロゲン遮断(Combined Androgen Blockade:CAB)療法)が、唾液腺がん治療で有望な結果が報告されてきていますが、薬事承認には至っていませんでした。
今般、国がんと神戸大の研究チームは、AR阻害薬である「ダロルタミド」(販売名:ニュベクオ錠、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん、遠隔転移を有する前立腺がんの治療薬)に着目しました。
本剤は、前立腺がんに対し、第III相試験で▼LH-RHアナログとの併用▼LH-RHアナログおよびドセタキセル(タキソテール点滴静注用ほか)との併用—で、高い有効性と良好な忍容性が示されている薬剤です。
ダロルタミドを用いたCAB療法は「AR経路をより包括的に抑制できる」可能性がありますが、唾液腺がんにおいてダロルタミドの有効性等に関する研究は進んでおらず、▼ダロルタミドの単剤投与▼ダロルタミドとLH-RHアナログとを併用するCAB療法—のいずれが最適な治療法であるのか、明らかになっていませんでした。
今般、研究チームの医師が主体となって医師主導治験を企画・実施し、そこから次のような状況が明らかにされました。
▽ダロルタミド単剤投与をした患者グループでは、有効性が、事前に設定した有効性閾値には達しなかった
▽ダロルタミドと、LH-RHアナログである「ゴセレリン」(販売名:ゾラデックス、前立腺がん、閉経前乳がん治療薬)とを併用するCAB療法を行った患者グループでは、臨床的意義のある奏効率が示された(腫瘍が一定以上縮小した患者割合:45.2%)
→無増悪生存期間を改善することが示唆された(がんが悪化せずに過ごせた期間の中央値:13.1か月)
→長期間にわたり腫瘍縮小が持続する症例も認められた
→治療の忍容性は良好であり、治療期間中の生活の質(QOL)も概ね維持されていた

「AR陽性唾液腺がん」に対するダロルタミド+ゴセレリン併用のCAB療法の有効性・安全性研究1

「AR陽性唾液腺がん」に対するダロルタミド+ゴセレリン併用のCAB療法の有効性・安全性研究2

「AR陽性唾液腺がん」に対するダロルタミド+ゴセレリン併用のCAB療法の有効性・安全性研究3
研究チームでは、これらの結果から「AR経路をより包括的に抑制するCAB療法の有効性が示された。AR陽性唾液腺がんに対する新たな標準治療の確立につながる重要なエビデンスである」と指摘しています。
この研究成果をもとに、本治療法(ダロルタミド(AR阻害薬)+ゴセレリン(LH-RHアナログ)を併用するCAB療法)は同日に薬事承認されました(効能効果追加)。今後、再発・転移を有する予後不良な唾液腺がん患者にとって、生活の質(QOL)を維持しながら治療を継続できる期間が延長すると期待されます。
さらに研究チームは「AR活性シグネチャーをはじめとする新規バイオマーカーの探索を通じ、より精緻な治療選択を可能とする個別化医療が発展する」ことにも期待を寄せています。
希少がんは「患者数が限られる=市場規模が小さい」ため、製薬メーカーによる治験が進みにくいケースがあります(開発コストが収益に見合わない)。このため、有望な治療戦略を開発させるためには、「医師自らが主導して治験を企画・実施する医師主導治験」が非常に重要となります。
研究チームでは「希少がん領域においては、アカデミア主導で科学的根拠を創出し、承認取得へとつなげる取り組みが極めて重要である」とも強調しています。こうした研究が進み「有効な治療法が限られている希少がん」に対する治療法」の開発、臨床実装につながることが強く期待されます。
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