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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

看護業務の役割分担進めるため、診療報酬での手当ても必要―日病調査

2016.3.14.(月)

 「片付け・清掃・廃棄物の処理」などの医療スタッフ以外ができる業務は、看護職から看護補助者・委託業者に委譲し、また「採血」「注射薬の準備・混注」「持参薬チェック」などは検査技師や薬剤師などの専門職の役割拡大を期待している―。

 全国の病院がこのように考えていることが、日本病院会がこのほど公表した2015年度の「看護業務の役割分担に関する実態調査」結果報告書から明らかになりました。

 ただし、検査技師など専門職の配置にはコストも伴うため、日病では診療報酬での対応が必要とも指摘しています。

医療スタッフ以外ができる業務は委託業者などに任せてはどうか

 医師・歯科医師の包括的指示の下で、一定の研修を終えた看護師が38の特定行為を行うことが可能になるなど、看護業務の広範囲化が進んでいます(関連記事はこちらこちら)。その一方で、慢性的な看護師不足(特に地方部)が指摘されており、看護業務の負担軽減が重要なテーマとなっています。

 そうした中で日本病院会では、「どの業務を他職種に委譲できると考えるか」「どの職種に業務を担当してほしいか」などを調べるアンケート調査を実施しました。調査対象は2418の日病会員施設で、947件から回答が寄せられました(回収率39.2%)。

 調査では▽外来▽病棟▽手術室▽透析室▽内視鏡室―の代表的な業務について、「5年前にどの職種が担っていたか」「現在(2015年6月)どの職種が担っているか」「今後どの職種が担ってほしいか」を集計、分析しています(いずれも複数回答)。

 まず外来の業務について見てみましょう。

 「病状・手術・検査説明」について、5年前は医師34.1%、看護師・助産師(以下、看護師等)92.5%となっており、現在でも医師34.1%、看護師等94.6%で状況は大きく変化していませんが、今後は医師24.3%、看護師等66.2%と減少しています。その一方で、医師事務作業補助者が同席する割合が増加しています(5年前は2.1%、現在は13.6%、今後は19.7%)。また、薬剤師・検査技師の同席を希望する声も高まってきています。

外来の説明同席について、医師事務作業補助者や検査技師・薬剤師への期待が高まっていることが伺える

外来の説明同席について、医師事務作業補助者や検査技師・薬剤師への期待が高まっていることが伺える

 「採血」については、5年前と現在は医師・看護師等が実施している割合が高いですが、今後については検査技師の実施を希望する声が大きくなります。この点について日病では「通常の採血は検査技師、重症者・困難事例は医師・看護師等」とすることを提案しています。

採血業務(外来)については、検査技師の役割拡大に期待が高まっている

採血業務(外来)については、検査技師の役割拡大に期待が高まっている

 また「片付け・清掃・廃棄物の処置」については、5年前と現在は看護師等と看護補助者が分担していますが、今後は看護補助者あるいは委託業者が担ってほしいとする声が多くなります。日病も「医療スタッフ以外ができる業務は委託業者に任せる」ことを提案しています。

外来業務に限らず、片付けや清掃など医療スタッフでなくても実施可能な業務については委託業者の活用なども重要である

外来業務に限らず、片付けや清掃など医療スタッフでなくても実施可能な業務については委託業者の活用なども重要である

薬剤関連業務など、専門知識がなければ安全性の確保が難しい

 次に病棟の業務について見てみましょう。

 「環境整備(病室)」や「ベッドメーキング」は、5年前と現在は看護師等と看護補助者が分担していますが、今後は看護補助者や委託業者への委譲を求める声が強くなります。

 また高齢化が進行するわが国では、介護サービスの必要性が高い入院患者が増加すると見込まれます。その中で「排泄ケア(トイレ誘導、おむつ交換を含む)」については、5年前と現在では看護師等・看護補助者がそのほとんどを担っていますが、今後は看護補助者・介護福祉士・理学療法士・作業療法士への委譲を求める声が多いようです。ただし、「看護師等にしかできない排泄ケアがあることを認識しなければいけない」という現場の声があることを日病は特記しています。

高齢患者の増加により排泄ケアなど介護業務の増加も予想されるが、やはり介護福祉士への期待が大きい

高齢患者の増加により排泄ケアなど介護業務の増加も予想されるが、やはり介護福祉士への期待が大きい

 「診療機器・器具の点検、管理」については、5年前と現在は看護師等と臨床工学技士が多くを担っていますが、今後は臨床工学技士への分担を進めたいという声がかなり多くあることが分かりました。

 「注射薬の準備・混注」については、5年前と現在は看護師等の役割がもっとも多い状況ですが、薬剤師への委譲が徐々に進んでいることが分かります。今後は、薬剤師への委譲をさらに進めたいとの声が多くなっています。この背景には、「ジェネリック医薬品の導入など、専門的知識を持って臨まなければ安全性が確保できない」という点があります。

薬剤業務については、高度な専門知識が不可欠なため、薬剤師の活躍を期待する声が大きい

薬剤業務については、高度な専門知識が不可欠なため、薬剤師の活躍を期待する声が大きい

 「持参薬のチェック」についても同様で、今後は薬剤師に業務分担としてほしいとの声が圧倒的です。

持参薬のチェックについても、禁忌情報など薬剤の専門的知識が不可欠であり、薬剤師への期待が大きい

持参薬のチェックについても、禁忌情報など薬剤の専門的知識が不可欠であり、薬剤師への期待が大きい

 ただし、例えば急性期病棟では介護福祉士、理学療法士、歯科衛生士などが配置されているケースはまだ少なく、また臨床工学技士や検査技師、薬剤師などは病院内にそもそも少人数しか配置されていません。こうした状況も踏まえて日病は「新たな人材活用の診療報酬への反映」の必要性を強調しています。

手術室では臨床工学技士の活躍に期待

 手術室の業務について見てみると、「手術部屋の準備」や「術後の清掃」については、現在、多くを看護師等が担っていますが、将来的には看護補助者や委託業者への委託を望む声が多くなっています。

 また「手術器械展開」や「器械出し(直接介助)」については、5年前・現在・今後ともに看護師等が担うことが期待されますが、臨床工学技士との役割分担を望む声も多くなってきています。

 

 報告書では、このほかに「看護業務の中で書類記入業務が非常に多くなっている。医師事務作業補助体制加算のような『看護事務作業補助体制』の評価をしてほしい」「入院患者の中に認知症高齢者が増加している点を踏まえ、介護福祉士配置を診療報酬で評価してほしい」などの声があることを紹介しています。

 ちなみに、2016年度診療報酬改定では入院基本料等加算として「認知症ケア加算」が新設されました。認知症患者に対するケアチームを編成したり、認知症ケアの手順書作成することなどが施設基準となっています。

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