患者・国民に「入院における食事療養費は30年近く据え置かれ、病院が困窮している」状況PRし、理解を得たい—四病協
2022.6.23.(木)
入院時食事療養費は25年も据え置かれたままで、病院は給食継続に困難を極めている。近く厚生労働省に「緊急対応」の申し入れを行うが、それにとどまらず「病院の窮状を患者・国民に広く知ってもらう」必要がある—。
6月22月に開催された四病院団体協議会の総合部会では、構成団体である日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会がこうした考えで一致。日精協の作成したポスターを会員病院に配付、院内掲示し、「患者・国民に病院の窮状を理解してもらう」ことを目指す方針も固めました。
入院時食事療養費、現下のコスト急騰等を賄えず「緊急の手当て」が必要
医療、とりわけ入院医療においては「食事による栄養補給」が治療の重要な1要素となります。このため、医療保険からも「入院時食事療養費」が給付されます(現在、一般的なケースでは「1食当たり640円の食費を、患者が460円、医療保険が180円と分担して負担」する)。
ところで、入院時食事療養費(I)については、1997年の消費税率引き上げ(3%→5%)に伴う臨時の診療報酬プラス改定において「1900円→1920円」(1日当たり)に引き上げられましたが、その後「1日当たり→1食当たりに見直す」「患者負担を引き上げる」などの見直しが行われているものの「金額自体は25年も据え置かれている」状況です。
この点、▼25年前に比べて人件費や材料費などの水準が高騰▼現下のウクライナ情勢などにより材料費や光熱費などの水準が急騰―しており、「1食あたり640円・1日当たり1920円では、食事提供に必要なコストを賄えない」との悲鳴が医療現場から上がっています。
一般企業であれば、こうしたコスト増を商品価格に転嫁(上乗せ)する選択肢もありますが公的医療保険制度下ではそれはできません(公定価格を医療機関が勝手に動かすことはできない)。
こうした状況の中で、四病協では「現行の入院時食事療養費では、コスト増を賄い切れず『病院における食事提供』が困難になっており、緊急の対応を行ってほしい」との要望・申し入れを行う方針を決定(関連記事はこちらとこちら)。現在、要望内容の精査を行っており、近く(6月27日予定)厚生労働省に正式申し入れを行うことを決めました(関連して四病協では「光熱水費への高騰対応」や「今夏の電力不足に協力する病院への支援」などについて近く(6月23日予定)萩生田光一経済産業大臣へ要望を行う予定)。
さらに四病協では、厚労省に要望を行うにとどまらず、「広く、患者・国民にこうした食事提供に関する病院の窮状を理解してもらう必要があるのではないか」と考えています。
例えば入院時食事療養費を引き上げた場合、患者負担が増加します(ダイレクトに患者負担分を引き上げる手法もあれば、保険給付分を引き上げる手法もあり、後者でも間接的に患者負担増になる)。厚労省は、従前より「入院時食事療養費の引き上げには患者負担増が伴い、そこへの理解を得ることが難しい」として二の足を踏んでいる部分もあります。
そこで四病協では、患者・国民に対し「物価が高騰しているにもかかわらず、入院の食事費用は30年近く据え置かれている」「現状のままでは食事を提供することが困難になる」ことをPRする必要があると判断。日精協が作成したポスターを四病協構成団体(日病・全日病・医法協・日精協)の会員病院に配付し、院内掲示を求める考えを固めました(内容は団体によって一部修正される可能性があり、また配布方法も各団体に委ねられている)。▼「患者・国民に、食事提供継続のためにわずかな負担増を容認してほしい」と訴え、理解を得る → ▼患者・国民の理解をベースに、国が「入院時食事療養費を引き上げる」―ことを期待するものです。今後の動きに注目が集まります。
ところで、この10月(2022年10月)から「紹介状なし患者が大病院(特定機能病院・一般病床200床以上の地域医療支援病院・一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関)を受診した場合の特別負担」が初診時には2000円・再診時には500円引き上げられます(関連記事はこちら)。
ただし、病院側は当該患者についての診療報酬(初診料や外来診療料)が減額されるため、「患者の特別負担は増えるが、病院の収益は向上しない」という関係にあります。
四病協では、厚生労働省に対し、「患者の特別負担は増えるが、病院の収益は向上しない」と旨を明確かつ丁寧に、患者・国民にPRするよう要望しています。きちんとしたPRがなければ、患者・国民から「患者負担増で病院が儲けている」と誤解されかねないと病院団体は強く懸念しています。
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