2024年度診療報酬改定より、4月施行を「後ろ倒し」!「いつ施行するのか」は中医協で議論—厚労省
2023.4.10.(月)
診療報酬改定の施行時期について、医療機関等やシステムベンダーなどの負担を考慮して「現在の4月施行」を「後ろ倒し」しする。具体的に「いつ施行」とするのかは、今後、中央社会保険医療協議会で議論していく—。
また改定対応の負担軽減に向けて「共通算定モジュールの開発・運用」「共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善」などを進めていく—。
厚生労働省が4月6日に公表した「第3回 『医療DX令和ビジョン2030』厚生労働省推進チーム」の資料から、こうした点が明らかにされました(厚労省サイトはこちら)。今後の動きに要注目です。
診療報酬改定に対応する医療現場やシステムベンダーなどの負担軽減を目指す
診療報酬改定は、通常▼2月上旬に中央社会保険医療協議会・総会が答申を行う(改定内容の大枠が固まる)→▼3月上旬に告示・通知が示される(改定内容の細部が明らかになる)→▼3月末に疑義解釈第1弾が示される(医療現場や自治体の疑問に一定の答えが示される)→▼4月1日に施行される→5月上旬に新点数・新施設基準に則った初回のレセプト請求が行われる—といったスケジュールで動きます。
極めてタイトなスケジュールであり、医療現場やシステムベンダーには「大きな負担」が生じています(レセコン・電子カルテなどの改修や、新たな施設基準の届け出など)。もちろん、4月1日の施行、5月上旬の初回請求までに完璧な対応を行うことは至難であり、▼多くの医療機関で新点数に対応可能となるまでに一定の時間がかかる▼システム(レセコン・電子カルテ等)改修は大学病院などの基幹病院からスタートし、中小医療機関での改修が完了するのは秋頃までかかってしまう—などの問題点もあります。
政府はこうした負担を軽減していく必要性を強く感じており、「診療報酬改定DX」として大きく次の4点の改善を行う方向で検討を進めています。
(1)共通算定モジュールの開発・運用
(2)共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善
(3)標準様式のアプリ化とデータ連携
(4)診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等
このうち(4)については、今般の資料から「今夏(2023年夏)までに施行時期(現在は4月1日施行)をいつにするのかを、中医協の議論を経て決定する」考えが明らかにされました。また、あわせて「診療報酬点数表のルールの明確化・簡素化」に向けた検討も進められます。
また(2)については、2024年度の次期診療報酬改定で「基本マスタを充足化し共通算定マスタ・コードを整備する」「地単公費マスタの作成と運用ルールを整備する」考えも明らかにされました。
2024年度の次期改定では、こうした▼施行時期の後ろ倒し▼共通算定マスタの提供▼電子点数表の改善—による医療現場・システムベンダーの負担軽減が図られる見込みです。
さらに、2025年度から(1)の「共通算定モジュールの開発・運用」を、まず中小病院を対象に段階的に進め、将来的に大病院も対象に加えて(診療報酬の算定と患者負担金の計算実施、次の感染症危機等に備えて情報収集できる仕組みの検討などを含めて)方針が示されました。将来的には、さまざまな診療情報を患者・全医療機関で共有する「全国医療情報プラットフォーム」と診療報酬との連携も視野に入れられています。
全国の医療機関で患者の診療情報を共有する際には、各種のデータが「比較可能なものか」「比較できないものか」を明らかにする必要があります(同じ●●疾病のデータであっても、検査手法や試薬が異なれば、複数データの比較が困難になる)。この点、「標準コード化」が必須となりますが、「医療機関が各自で採用しているコード」と、全国医療情報プラットフォームで用いる「標準コード」との紐づけが求められますが、インセティブなどがなければ医療機関は、「手間のかかる標準コードと自院コードとの紐づけ」を行わないでしょう。このため、例えば「診療報酬請求コードを、全国医療情報プラットフォームの標準コードにあわせる」「標準コードを用いる医療機関に診療報酬上の加算や補助によるインセンティブを付与する」などの点を検討していくことが重要であり、今後、その方向で検討していく考えが国から明らかにされたと言えそうです。もちろん、具体的に「どう標準コードの利用を促進していくか」の中身は今後の議論を待たなければなりません(関連記事はこちらとこちら)。
さらに、診療所向けに「標準型電子カルテと一体型のモジュールを組み入れた標準型レセコンをクラウド上に構築して利用可能とする」環境の整備も視野に入れた検討が進められます(病院に対しては、すでに院内システムが相当程度整備されている点を踏まえて、共通算定モジュールの提供で対応する見込み)。
このほか、(2)として「施設基準届け出の電子化」「各種申請様式などのアプリケーションによる提供」なども順次進められていきます。
こうした議論は、これまで政府内部で行われてきましたが、今後は関係者を交えた「オープンな場での議論」が進められます(診療報酬改定DXタスクフォース)。またタスクフォースの下に、技術的な検討を行う検討チームを設け、システム開発などを担当する社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体中央会(各都道府県の国民健康保険団体連合会の中央組織)などの支援も行われる見込みです。
【関連記事】
コロナ禍で「2020年度にDPC病棟等の在院日数が延伸してしまった」が、21年度には再び「短縮」—中医協総会(2)
2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)
要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは—中医協・介護給付費分科会の意見交換
2024年度の診療報酬に向け、まず第8次医療計画・医師働き方改革・医療DXに関する意見交換を今春より実施—中医協総会