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薬剤師が「薬剤の用法用量や特性に関する知見」を活用し、医療事故を防止した好事例―医療機能評価機構

2019.10.30.(水)

薬剤師が、患者に処方された薬剤に関する情報を的確に把握していたため、「処方誤り」であることを見抜け、医薬品による事故等を未然に防いだ―。

日本医療機能評価機構は10月25日に、保険薬局(調剤薬局)からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました(機構のサイトはこちら)。

薬局における薬剤保管ルールを守らず、交付し忘れた事例も発生

日本医療機能評価機構は、医療安全確保に向けた取り組みの一環として、患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例(「ヒヤリとした、ハッとした」事例)を薬局から収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施しています。また、収集事例の中から医療安全確保に向けてとりわけ有益な情報を「共有すべき事例」として公表もしています(最近の事例に関する記事はこちらこちらこちら)。10月25日には新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。


1つ目は、薬剤の一部を患者に交付し忘れてしまった事例です。

患者に、2型糖尿病治療薬の「トルリシティ皮下注0.75mgアテオス」を含む薬剤が処方されました。薬剤を調製して交付する際、患者が席を外していたため、薬剤師は薬剤の一時保管のため、▼「トルリシティ皮下注0.75mgアテオス」を冷蔵庫に(摂氏2-8度の冷暗所で保管する必要があるため)▼他の薬剤は保管かごに―入れておきました。患者が戻って来たため交付した際、保管かごの薬剤のみを渡し、冷所に保管していた「トルリシティ皮下注0.75mgアテオス」を渡し忘れてしまいました。

この薬局では、通常、こうしたケースでは▼薬剤の保管かごに「冷所品あり」と書かれた札を入れる▼患者に薬剤を交付する際は、薬袋に記載した通し番号を確認する―というルールがありましたが、今回はこれが遵守されていなかった可能性があります。機構では、「冷所で保管する薬剤は、調製後の一時保管の場合でも適正に管理するため、薬剤の調製から交付完了までの手順を作成し、その手順を薬局スタッフ全員で遵守することが重要」と指摘しています。



2つ目は、薬剤師が「薬剤処方が定められた用法用量に沿っていない」ことを疑問に思い、患者に聞き取りを行った結果、「処方医が誤って抗がん剤を投与していた」ことに気付き、処方変更が行われた事例です。

患者に、前立腺がん治療薬の「ザイティガ錠250mg」1錠と、前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬の「ユリーフOD錠4mg」2錠が処方されました。ザイティガ錠については、前立腺がん治療において、通常「プレドニゾロンと併用し、成人には1日1回1000mgを経口投与する」との用法用量が定められているものの、本患者に対しては▼1日量が少ない(4分の1)▼プレドニゾロンが併用されていない―ことを疑問に思い、患者に聞き取りを行ったところ「抗がん剤の治療は行っていない」ことがわかりました。処方医に疑義照会した結果、「ザイティガ錠250mg」が前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬の「ザルティア錠2.5mg」に処方変更となりました。

「ザイティガ錠250mg」と「ザルティア錠2.5mg」は同じ泌尿器科の薬剤で名称も似ているため、「取り違えに注意せよ」との文書が製薬メーカーから出されています。機構では「薬剤の用法・用量を十分に把握しておく」こと、「患者の病歴や薬剤服用歴、聞き取った情報をもとに処方の妥当性を確認する」ことの重要性を強調しています。今回は、薬剤師が「ザイティガ錠250mg」の用法用量・併用薬剤などの知識を持ち合わせていたために、交付前に処方間違いに気づくことができました。薬剤師においても日々の「最新情報収集」に向けた、いわゆる生涯学習が極めて重要であることを再認識できる好事例と言えるでしょう。



3つ目も、薬剤師が「処方薬剤の適正性」に疑問を持って疑義照会を行い、処方変更となった事例です。

定期薬として▼高脂血症治療薬の「シンバスタチン錠10mg」1錠分1夕食後▼高血圧症治療薬の「イルアミクス配合錠HD」1錠分1朝食後▼コレステロール系胆石溶解等の作用を持つ「ウルソデオキシコール酸錠100mg」3錠分3毎食後―を服用している患者に対し、今回処方から、慢性腎不全用剤の「クレメジン細粒分包2g」6g分3毎食後28日分が追加されました。しかし、「クレメジン細粒分包2g」は吸着剤であり「本剤と他剤との同時服用は避ける」(他薬剤の効果が減弱する可能性がある)との使用上の注意があることから、薬剤師が処方医に疑義照会。結果、「クレメジン細粒分包2g」が「毎食間」に変更となりました。

本事例においても、薬剤師の知識により医療事故を防止できた好事例で、生涯学習の重要性をここでも確認できます。

なお、機構では「食間は『食事と食事の間』のことだが『食事の最中』と誤解する患者もおり、薬袋への記載や患者への説明においては『食後2時間』とするなど、患者にわかりやすく伝えることが望ましい」とアドバイスしています。



2015年10月にまとめられた「患者のための薬局ビジョン」は、かかりつけ薬局に対し、(1)服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導(2)24時間対応・在宅対応(3)かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—を持つべきと提言。
 
さらに2018年度の前回調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤も整備されてきています(関連記事はこちらこちらこちら)。

「疑義照会=点数算定」という単純な構図ではありません(要件・基準をクリアする必要がある)が、事例のような薬剤師の取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)がさらに高まり、それが報酬の引き上げ論議などに結びついていきます。「薬剤の専門家」という立場とともに、「患者に身近である」という立場を活用した、積極的な疑義照会に期待が集まります。

 
 
 

 

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