2020年の救命救急センターの評価、S:104か所、A:189か所、B:2か所に充実―厚労省
2021.3.31.(水)
2020年における救命救急センターの充実段階評価結果を見ると、S評価:104か所(前年から28か所増)、A評価:189か所(同20か所減)、B評価:2か所(同5か所減)となり、前年よりも体制・実績が充実している―。
厚生労働省が3月30日に公表した2020年度の「救命救急センターの充実段階評価」結果から、こうした状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら(評価結果)とこちら(点数)とこちら(評価結果、実数))(関連記事はこちら)。
充実段階評価の基準を毎年度「厳格化」、ただしコロナ感染症に影響に配慮
2018年度から、全国の救命救急センターの評価基準について「毎年度厳しくしていく」という新たな仕組みが適用されています。
急性心筋梗塞や脳卒中、重傷の外傷などの重篤な患者の命を救うために、高度医療を提供する3次救急医療機関である「救命救急センター」は、まさに地域における高度急性期医療の「最後の砦」となっています。地域住民の命を守るためには、救命救急センターの安定経営・運営の確保が必要となるため、▼運営費の補助▼診療報酬での評価―が行われており、これらは「救命救急センターの充実段階評価」結果をベースに設定されます。
充実段階評価は、「救命救急医療を行うための体制(人員や設備など)は整っているのか」「受け入れ実績は十分なのか(重篤な患者を積極的に受け入れているのか)」などの基準に沿って毎年度行われます。ある年度の評価結果をもとにランク付けを行い、次年度の補助金や診療報酬に反映させます。
また、「ほとんどすべての救命救急センターが最も高い評価となっている」との課題を解消するために、2018年度からは次の2点の見直しが行われています。
(1)評価基準を改める(▼体制や実績を評価する点数▼「是正を要する」項目―の2つの評価軸を設ける)
(2)評価基準を毎年度(2018→19→20)厳しくしていく
まず(1)の評価基準に関しては、次の「評価点」と「是正を要する項目の該当数」の2つをもとに、各救命救急センターを、▼S▼A▼B▼C―の4段階に評価します。
【評価点】
▼体制や実績を評価する点数(救急科専門医数が何人いるか、など)▼休日・夜間帯における救急専従医師数▼救急外来のトリアージ機能▼疾患(内因性疾患、外因性疾患、精神科、小児、産科)への診療体制▼年間受入救急車搬送人員—など合計42項目について「点数と、獲得基準」が定められ、その積み上げ(合計点数)を各救命救急センターの「評価点」とする
【是正を要する項目】
例えば「救急科専門医数」に関して、救命救急センター(高度救命救急センターを含む)であれば「2人以下」、地域救命救急センターであれば「1人以下」の場合に「是正を要する」と判断される。「転院・転棟の調整を行う者の配置がない」「疾患(内因性疾患、外因性疾患、精神科、小児、産科)への診療体制が必要な基準を満たさない」など合計20の「是正を要する」項目が定められ、各救命救急センターがいくつ該当するかを見る
また、(2)のとおりS・A・B・Cの該当基準は、2018年度実績→19年度実績→20年度実績と毎年度「厳しく」なります。
例えば、A評価では、2018年度実績では「是正を要する項目が4つ以下」とされていましたが、2019年度実績では「同じく2つ以下」、2020年度実績では「同じく1つ以下」と厳格化されてきました。
また、S評価では、2018年度実績では「評価点90点以上、是正を要する項目ゼロ」が基準でしたが、2019年度実績では「評価点92点以上、是正を要する項目ゼロ」となり、さらに2020年度実績では「評価点94点以上、是正を要する項目ゼロ」と、徐々に厳しくなってきています。
ただし、2020年度初頭から新型コロナウイルス感染症が我が国でも猛威を振るっているため、これらの基準を厳格に適用した場合には、2020年度の評価結果は多くの病院にとって厳しいものとなります。そこで、2月3日に開催された「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」では、次のような「評価の特例」を行うことを決定しています。
▼「体制・実績の充実に向けた努力」を継続する施設を適切に評価するために、「充実段階評価の段階的な引き上げ」(2020年実施分)は予定通り実施する(これをしなければ、言わば「努力した病院が損をし(正当に評価されない)、努力を怠った病院が得をする(不当に高く評価される)」ことになってしまう)
▼ただし、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていると考えられる以下の項目については、充実段階評価の「評価点」及び「是正を要する項目」から例外的に除外する
【新型コロナウイルス感染症の影響を受けていると考えられる項目】
・救命救急センター専従医師数のうち救急科専門医数
・救命救急センター長の要件
・年間に受け入れた重篤患者数(来院時)
・内因性疾患への診療体制
・外因性疾患への診療体制
・小児(外)科医による診療体制
・産(婦人)科医による診療体制
・医師および医療関係職と事務職員等との役割分担
・救命救急センターを設置する病院の年間受入救急車搬送人員
・脳死判定及び臓器・組織提供のための整備等
・救命救急センターを設置する病院に対する消防機関からの搬送受入要請への対応状況の記録および改善への取組
・地域の関係機関との連携
・救急救命士の挿管実習および薬剤投与実習の受入状況
・救急救命士の病院実習受入状況
・医療従事者への教育
・災害に関する教育
今般、昨年(2020年)1月から12月における各センターの実績をもとに、厳しさを増しながら、新型コロナウイルス感染症に配慮した基準に照らして「充実段階評価」が行われました。
●評価結果はこちら(厚労省サイト)
S評価は、▼手稲渓仁会病院(北海道)▼八戸市立市民病院(青森県)▼東北大学病院(宮城県)▼福島県立医科大学附属病院(福島県)▼日立総合病院(茨城県)▼獨協医科大学病院(栃木県)▼前橋赤十字病院(群馬県)▼さいたま赤十字病院(埼玉県)▼国保旭中央病院(千葉県)▼日本医科大学付属病院(東京都)▼聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県)▼新潟市民病院(新潟県)▼長野赤十字病院(長野県)▼岐阜大学医学部附属病院(岐阜県)▼総合病院聖隷浜松病院(静岡県)▼名古屋掖済会病院(愛知県)▼三重大学医学部附属病院(三重県)▼済生会滋賀県病院(滋賀県)▼京都第二赤十字病院(京都府)▼大阪急性期・総合医療センター(大阪府)▼神戸市立医療センター中央市民病院(兵庫県)▼奈良県総合医療センター(奈良県)▼和歌山県立医科大学附属病院(和歌山県)▼島根県立中央病院(島根県)▼川崎医科大学附属病院(岡山県)▼広島大学病院(広島県)▼徳島赤十字病院(徳島県)▼愛媛県立中央病院(愛媛県)▼久留米大学病院高度救命救急センター(福岡県)▼佐賀大学医学部附属病院(佐賀県)▼長崎大学病院(長崎県)▼熊本赤十字病院(熊本県)▼大分大学医学部附属病院(大分県)▼宮崎大学医学部附属病院(宮崎県)▼沖縄県立南部医療センター・こども医療センター(沖縄県)―など104か所となりました。前年に比べて28か所増加しています。
またA評価は▼旭川赤十字病院(北海道)▼弘前大学医学部附属病院(青森県)▼岩手医科大学附属病院(岩手県)▼仙台医療センター(宮城県)▼秋田赤十字病院(秋田県)▼山形県立中央病院(山形県)▼太田綜合病院附属太田西ノ内病院(福島県)▼水戸医療センター(茨城県)▼足利赤十字病院(栃木県)▼構高崎総合医療センター(群馬県)▼深谷赤十字病院(埼玉県)▼千葉県救急医療センター(千葉県)▼東京都立広尾病院(東京都)▼聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院(神奈川県)▼長岡赤十字病院(新潟県)▼富山県立中央病院(富山県)▼石川県立中央病院(石川県)▼福井県立病院(福井県)▼山梨県立中央病院(山梨県)▼佐久総合病院佐久医療センター(長野県)▼岐阜県総合医療センター(岐阜県)▼静岡済生会総合病院(静岡県)▼名古屋医療センター(愛知県)▼伊勢赤十字病院(三重県)▼大津赤十字病院(滋賀県)▼市立福知山市民病院(京都府)▼大阪府三島救命救急センター(大阪府)▼兵庫県立姫路循環器病センター(兵庫県)▼奈良県立医科大学附属病院(奈良県)▼日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山県)▼鳥取県立中央病院(鳥取県)▼松江赤十字病院(島根県)▼岡山赤十字病院(岡山県)▼広島市立広島市民病院(広島県)▼岩国医療センター(山口県)▼徳島県立中央病院(徳島県)▼香川県立中央病院(香川県)▼愛媛県立新居浜病院(愛媛県)▼高知赤十字病院(高知県)▼北九州市立八幡病院(福岡県)▼佐賀県医療センター好生館(佐賀県)▼長崎医療センター(長崎県)▼大分市医師会立アルメイダ病院(大分県)▼宮崎県立宮崎病院(宮城県)▼鹿児島市立病院(鹿児島県)▼沖縄県立中部病院(沖縄県)―など189か所となりました。前年に比べて20か所減少しています。
またB評価は、▼いわき市医療センター(福島県)▼徳島県立三好病院(徳島県)―の2か所です。前年に比べて5か所の減少となっています。
なお、C評価は前年に続き「ゼロか所」となっています。
「上位区分」にシフト(例えばB→A、A→S)している状況が伺えます。
なお、「2020年の実績が、2019年と全く同じであった」と仮定した場合には、▼S評価:92施設▼A評価:195施設▼B評価:5施設―と試算されており、上記の「実際の2020年実績」のほうが良い評価結果となっていることが分かります。ここから、各救命救急センターが「より体制・実績を充実させている」状況も伺うことが可能です。
S・A・Bの各区分について、診療報酬上では次のような評価が行われます。
A300【救命救急入院料】の「救急体制充実加算」(1日につき)
▽イ 救急体制充実加算1:1500点(S評価の場合)
▽ロ 救急体制充実加算2:1000点(A評価の場合)
▽ハ 救急体制充実加算3:500点(B評価の場合)
充実段階が1つ下がると「1患者1日につき500点」の減収となります。例えば救命救急入院料の算定病床について、年間の稼働率が70%とした場合、ベッド1床あたり「年間130万円弱」の減収となってしまい。
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