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がん拠点病院の指定要件に「相談支援センターの機能強化」「苦痛を持つ患者スクリーニング体制」など盛り込め―がんとの共生検討会

2022.5.19.(木)

がん医療の高度化などに伴い、患者の予後が良好になってきており、そうした中では「がんとの共生」(がんと診断された時からの緩和ケア、相談支援・情報提供、就労支援など)の重要性が増している―

がん診療連携拠点病院等では、こうした「がんとの共生」を支援する機能を充実していくことが求められ、拠点病院等の指定要件の中に「がん相談支援センターの機能強化」「苦痛を持つ患者のスクリーニング体制」「アピアランスケア体制の強化」などを盛り込むことを求めてはどうか―。

5月18日に開催された「がんとの共生のあり方に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった提案内容が大筋で固められました。下部組織の「がんの緩和ケアに係る部会」(以下、部会)による提案内容とあわせて「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」に報告され、指定要件(整備指針)見直し論議に供されます。

共生支援は極めて重要であるが「拠点病院の負担が過重になってしまう」点にも配慮を

我が国の死因第1位を独走する「がん」を克服するため、予防・治療・共生・研究・基盤整備といった諸施策は、概ね5年を1期とする「がん対策推進基本計画」に沿って進めることとなっています。現在、2018-22年度を対象とする第3期計画が稼働しており、今後、2023年度からの新たな第4期がん対策推進基本計画策定に向けた議論が本格化します(関連記事はこちら)。

また、「日本全国のどの地域に住んでいても、優れたがん医療を受けられる体制を整える」(均てん化)という方針の下、我が国では、▼高度ながん医療を提供する「がん診療連携拠点病院」等▼小児特性に踏まえた高度がん医療を提供する「小児がん拠点病院」等▼ゲノム解析結果を踏まえて適切ながん医療提供を目指す「がんゲノム医療中核拠点病院」等―の整備が進められてきています。

がん医療の高度化(例えば新たな医療技術の開発・普及など)し、患者ニーズの多様化など、がん医療を取り巻く環境は絶えず変化します。このため「がん診療連携拠点病院」等の指定要件についても定期的に見直すことが求められます。▼成人拠点・小児拠点では4年に一度▼ゲノム拠点では2年に一度―見直すこととされ、現在、厚生労働省の検討会・ワーキンググループで要件見直し論議が進められ、今年(2022年)7月に新要件が設定される見込みです(関連記事はこちら(がん診療提供体制検討会)こちら(がん診療連携拠点病院等について)こちら(がんゲノム医療中核拠点病院等について)こちら(小児がん拠点病院))。

成人拠点・小児拠点・ゲノム拠点等の指定要件を整合性を確保して見直すため、がんゲノム医療中核拠点病院等の指定期間を延長する(がん診療提供体制検討会2 211027)



ところで、冒頭に述べたとおり、がん医療が高度化する中で「がんとの共生」(「がん治療等」と「就労などの社会経済生活」との両立、緩和ケア、アピアランスケアなど)が非常に重要になってきました。がん対策推進基本計画の中にも「がんとの共生」が重要項目の1つに据えられています。

このため、上述した「がん診療連携拠点病院などの指定要件」を考えるうえでは、「がんとの共生」支援機能の充実が必須となり、検討会で具体的な提案内容が議論され、今般その内容が固められました。提案内容は次のとおりです。

【がん相談支援センター】
▽全がん患者に対してセンターが周知されるよう、▼診断時や告知の場面に組み込む▼診療の経過の中で患者の状況に応じて複数回案内を行う—などの「システム構築」を要件化する
▽センターに配置される「専従・専任の相談支援に携わる者」が、定期的に知識更新し、対応の質の向上に努めていることを要件化する
▽センターの業務として「がん治療に伴う外見(アピアランス)の変化に関する相談」を追加する

【ピアサポート】
▽都道府県や地域の患者会等と連携を図り、地域の実情に応じたピアサポー ト体制の構築に努めていることを要件化する

【スクリーニング】
▽▼がん患者の身体的苦痛や精神心理苦痛、社会的な問題等のスクリーニングを診断時から一貫した手法を活用している▼簡易的なスクリーニングを経時的に実施し、診断や治療方針の変更の時には、ライフステージ、就労・就学、経済状況、家族との関係性等、患者とその家族にとって重要な問題について詳細に把握する▼把握した内容については主治医と情報共有し、必要に応じ関係職種と共に適切な治療や支援を行う—ことを要件化する
▽高齢がん患者等の場合、意思決定能力について確認し、各種ガイドラインに沿って対応することを要件化する

【アピアランスケア】
▽がん治療に伴う外見(アピアランス)の変化について、▼がん患者・家族への説明▼ケアに関する情報提供▼相談応需—体制の整備を要件化する

【自殺対策】
▽▼自殺リスクが高い患者に対し、院内で共通したフローを使用し、対応方法や関係機関との連携について明確にしておく▼関係職種に情報共有を行う体制を構築する▼自施設に精神科、心療内科等がない場合は、地域の医療機関と連携体制を確保する―ことを要件化する

【その他 <情報提供・普及啓発>】
▽地域を対象として患者向け、一般向けのガイドラインの活用や緩和ケア、人生会議等のがんに関する普及啓発に努めていることを要件化する
<研修の実施体制>
▽自施設の医療従事者等が、▼がん患者や家族が利用できる制度や関係機関との連携体制▼自施設で提供している診療・患者支援の体制—を学ぶ機会を年1回以上確保することを要件化する



いずれも「患者・家族の視点」に立った内容で、患者代表等として参画する岸田徹構成員(がんノート代表理事)や鈴木美穂構成員(マギーズ東京共同代表理事)は提案内容を高く評価し、「積極的に要件化し、拠点病院等の機能強化につなげてほしい」との考えを示しました。

ただし、医療機関サイドからは「提案内容は素晴らしく、いずれも進めるべきである」との点では患者代表等委員と一致するものの、「拠点病院等の負担が極めて大きくなる。提案すること、要件にもりこむことは容易だが、現場での実現には大きな困難が伴う。画餅に帰すことのないような工夫が必要である」との考えが示されています。

とりわけ「患者の苦痛」に関するスクリーニングについて「現実的な提案内容となっているか?」との意見が出ました。

例えば、我が国における緩和ケア医療の第一人者である木澤義之構成員(筑波大学付属病院病院教授、日本緩和医療学会理事長)は「前職の神戸大学では3年かけて『全患者の苦痛スクリーニング』体制を整備し、定期的なモニタリング→苦痛を感じる患者の抽出→支援などの運用を行うが、たいへんな人手と時間がかかる。現職の筑波大学では人手が足らず、同じ仕組みの構築はなかなか難しい」と、大学病院ですら「人手不足」「負担が過剰」な状況を紹介。例えば、▼人手をどう確保するのか(緩和ケアチームから?外来から?)▼スクリーニングを行うとして、担当者は「外来看護職員」になると思われる(「医師には期待できない」と木澤構成員が苦笑)が、その負担をどう考えるのか―など、提案にあたって考慮すべき事項が多々ある旨を強調しています。

また、参考人として出席した「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」の藤也寸志座長(国立病院機構九州がんセンター院長、拠点病院等全体の指定要件を検討する「がん診療提供体制の在り方検討会」の座長でもある)は、「拠点病院の管理者の立場からすると『要件充足のための財源確保が非常に厳しい』という思いもある。とりわけ大学病院など、がん以外の診療も行う拠点病院では、スタッフ体制もそれほど手厚くない。一方で、体制の充実、医療の質充実に取り組んでいくことは必要不可欠であり、両者の折り合いをどうとっていけばよいか、日々、頭を悩ませている」との苦悩を吐露しています。

上述の「苦痛を持つ患者のスクリーニング」について、診療部が行うのか?相談支援センターが行うのか?という問題もあります。どちらの部門も多忙であり、また相談支援センターについては「経時的に業務内容が増加する一方で人員は増えない」という状況もあります。



このように「共生支援」を進めることは重要であるが、病院サイドの実情に配慮する必要があり、検討会では様々な角度から提案内容の濃密な精査が行われました。

その結果、「拠点病院間でも意識の格差がある。全体の意識を高めていくため、『なぜアピアランスケアが重要なのか、スクリーニングが必要なのか。それが何につながるのか』が分かるような書きぶりとしてはどうか」(藤参考人)、「相談支援に力をいれる、苦痛のスクリーニングを全患者に行う、アピアランスケアに力を入れる拠点病院等はブランド力も上がる(患者が集まり、経営力も向上する)。『指定要件(整備指針)に盛り込まれたので仕方なくやる』のではなく、『医療の質向上のために積極的に実施する』ことが重要であろう。こうした視点に立って、検討会から明確な提案を行っていくことが非常に重要である」(西田俊朗座長:地域医療機能推進機構大阪病院 院長、国立がん研究センター理事長特任補佐)という考えを重視し、上記提案内容を採択しました。ただし「表現ぶりを、西田座長を中心に検討、調整する」こととなっています。

さらに、▼時間はかかるが、拠点病院の全職員が「患者からの相談対応能力」を向上させ、身近な相談は全スタッフが対応し、専門的(医療制度や経済支援、法務対応など)な相談は相談支援センターが対応する体制を構築することで、相談支援センターに余力ができ、スクリーニングなどにも対応可能になってくるのではないか。患者会などの外部資源の助力を得た対応も検討すべき(高山智子構成員:国立がん研究センターがん対策研究所がん情報提供部部長)▼オンライン通話・会議などを活用して、スクリーニング等にかかる現場負担を軽減できないか(鈴木構成員)▼1施設あたりの専門スタッフを充実するために「拠点病院等の集約化」も検討していくべき(羽鳥裕構成員:日本医師会常任理事)—などといった具体的な対応案も出されています。今後の運用を考えていくうえで、非常に重要となります。



今後、検討会構成員の考えを踏まえて、表現ぶりなどを西田座長と厚生労働省当局と調整。部会による「がん緩和ケア」に関する提案とあわせて、拠点病院等の指定要件見直し論議の場(「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」など)に提出され、そこでの議論を待つことになります。



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