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病院で看護師・薬剤師等確保に難渋し、病棟を一部閉鎖する病院もある、単なる賃上げにとどまらず総合的な対策が必要—日病・相澤会長

2023.12.19.(火)

病院の看護師や薬剤師確保が非常に難しくなってきており、中には看護師不足で病棟を一部閉鎖する病院も出てきている—。

単に給与をあげれば良いという問題ではなく、医療職全体の働き方改革を含めた多面的な対策をとらなければ地域医療が崩壊してしまう—。

日本病院会の相澤孝夫会長が12月19日に定例記者会見を開き、こうした考えを強調しました。

12月19日の定例記者会見に臨んだ日本病院会の相澤孝夫会長

夜勤や事務作業の在り方などの抜本的見直し、地域医療提供体制の在り方改革が必要

医療人材の確保は「医療提供体制の根幹」です。しかし、地域医療の砦となる病院において「看護師や薬剤師を募集しても応募がない」「看護師不足から病棟の一部を閉鎖せざるを得ない」という悲鳴が、日本病院会の各県支部から寄せられています。

この背景については、巷間「岸田文雄内閣の方針に沿って多くの分野・企業で賃上げ(2023年の春闘では平均3.58%のアップ)が進むが、医療分野ではそこまでの賃上げが行えず、給与の高い他産業へ人が流れている」と指摘されます(関連記事はこちら)。このため、2024年度の診療報酬改定においても「医療従事者の処遇改善」に向けた検討が今後、急ピッチで進められます(関連記事はこちら)。

賃上げは非常に重要な対策ですが、相澤会長は「単なる賃上げだけでは解決できないのではないか」と見通します。

看護師や薬剤師の業務を見ると、例えば▼現在、ほとんどの病院で交代制勤務が導入され、月に何度かの夜勤を行う必要がある▼もともと多忙な中で、さらに業務の複雑化・高度化が進み、業務負担が極めて重くなってきている▼事務作業(例えば看護記録の作成、交代時の申し送りなど)の負担もさらに重くなってきている—という具合に厳しさを増しています。さらに、医師だけでなく、医療従者全体に「地域偏在」が生じていることも大きな問題となっています。

こうした中で、「業務が厳しく看護師等の離職が続く」→「業務が厳しいために新たな看護師の確保が難しい」→「残った看護師等の負担がさらに増す」→「離職、新規採用困難な状態がさらに悪化する」→「ますます業務負担が増す」という負のスパイラルに陥っていると相澤会長は分析。負のスパイラルを断ち切るためには、賃上げにとどまらず、これまで当たり前であった「夜勤対応」や「事務作業」を大きく見直すなど「多様な対策」をとらなければならないと強調しました。

この問題は、2024年度から本格化する「勤務医の労働時間規制」(いわゆる働き方改革)にも大きく関係します。医師についてもクラークやICTを活用した「事務作業の抜本的な軽減」が必須であると相澤会長は指摘。

あわせて、医師働き改革でとりわけ問題になる「地域の救急医療提供体制」については、「小手先の対策ではなく、地域において夜間・休日などの救急外来対応体制をどう構築していくかという根本的な部分の検討が必要である。1医療機関だけでの対応は困難で、地域の医療機関が、それぞれどの機能・役割を果たし、どう連携していくのかをしっかり考えなければならない。さらに国民の医療のかかり方についても改善が必要である」とも訴えました。

2024年度診療報酬改定の議論が進む、その中でも「医師働き改革の支援」や「医療従事者の処遇改善」「救急医療体制の確保」などが議題に上がっていますが、各地域で「この地域ではどういった医療提供体制を構築するのか」をさらに真剣に議論していくことが重要です。



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