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上肢・下肢痙縮治療に用いる「ボトックス注用」、ウイルス感染症治療に用いる「アビガン錠」など、DPC高額医薬品として出来高算定に―厚労省

2024.8.15.(木)

上肢および下肢痙縮治療に用いる「A型ボツリヌス毒素」(製品名:ボトックス注用50単位、同注用100単位)が新たに保険適用されたが、高額ゆえに既存のDPC点数では評価しきれないことから、当面、薬剤以外のすべての診療行為について出来高算定とする―。

厚生労働省は8月14日に通知「『厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法の一部改正等に伴う実施上の留意事項について』の一部改正について」、および「『厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法第一項第五号の規定に基づき厚生労働大臣が別に定める者について』の一部改正について」を発出し、こうした点を明確にしました(改正告示はこちら)。

分岐のある医薬品の類似薬が保険適用された場合、類似薬を当該分岐に含める

DPC制度では、医療資源投入量を踏まえた「包括点数」が設定されます。もう少し具体的に見ると、傷病ごとに、▼手術を行ったか▼処置を行ったか▼特別の医薬品を使用したか―などで分類し(分岐を設ける)、それぞれにDPCコードと点数を設定(診断群分類)。分岐が、あたかも木の枝のように見えることから「tree図」と呼ばれます。

ところで、すでに分岐が設けられている医薬品(X)の類似薬(Y)が保険収載された場合、「Y類似薬の薬価は原則してXと同額(1日薬価で合わせる)に設定される」、つまり医療資源投入量が同じになることから、当該類似薬(Y)についてもXと同じ分岐とすることが妥当と考えられます。

8月7日の中央社会保険医療協議会・総会では、こうした「分岐が設けられている医薬品」の類似薬等について保険収載を認め、併せて、類似薬等を同じ分岐に位置付けることが了承されました。前者の通知は、その旨を次のように明確化しています(厚労省のサイトはこちら、8月7日の中医協総会における新薬の資料はこちら)。

▽「040040 肺の悪性腫瘍」の手術・処置等2の6に「グマロンチニブ」(製品名:ハイイータン錠50mg、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん治療に用いる)を追加する

▽「130030 非ホジキンリンパ腫」のうち手術・処置等2の7に「ピルトブルチニブ」(製品名:ジャイパーカ錠50mg、同錠100mg、他のBTK阻害剤に抵抗性、または不耐容の再発、または難治性のマントル細胞リンパ腫治療に用いる)を追加する

▽「130050 骨髄増殖性腫瘍」のうち手術・処置等2の4に「モメロチニブ塩酸塩」(製品名:オムジャラ錠100mg、同錠150mg、同錠200mg、骨髄線維症治療に用いる)を追加する

▽「130090 貧血(その他)」のうち手術・処置等2の2に「イプタコパン塩酸塩」(製品名:ファビハルタカプセル200mg、発作性夜間ヘモグロビン尿症治療に用いる)を追加する

▽「130130 凝固異常 (その他)」のうち手術・処置等2の3に「乾燥濃縮人プロテインC」(製品名:セプーロチン静注用1000単位、先天性プロテインC欠乏症に起因する静脈血栓塞栓症および電撃性紫斑病の治療および血栓形成傾向の抑制に用いる)を追加する

一定の基準満たす高額な新薬、当面、出来高算定とする

DPC制度では、急性期病棟に入院する患者について▼入院料▼検査▼画像診断▼注射▼投薬▼1000点未満の処置▼薬剤料―などを包括評価し、その点数(DPC点数)は「同じ診断群分類に関する過去の治療実績(医療資源投入量)」に基づいて設定されます。

新薬が登場した場合、ある疾病の治療内容について「従前用いられていたA薬剤からB新薬への置き換え」という変化が生じえます。その際、A薬剤とB新薬の価格に大きな乖離がなければ、設定されているDPC点数のままで医療資源投入量(=投下コスト)を賄うことができますが、A薬剤に比べてB新薬が高額な場合にDPC点数を維持すれば、「DPC点数<医療資源投入量」となり、病院の「持ち出し」が生じてしまいます。

これを放置すれば、新薬の使用が進まず、患者に対し質の高い医療サービスが提供されなくなってしまいます。

そこで中央社会保険医療協議会では、一定の基準を満たした場合(新薬の標準的な使用における薬剤費(併用する医薬品を含む)の見込み額が、新薬を使用しない症例の薬剤費の84パーセンタイルを超える)には、「高額な新薬はDPCの包括報酬の対象外とし、その新薬を用いた治療は出来高算定とする」(薬剤以外の入院料や検査料などもすべて出来高算定とする)というルールを設けています。症例の蓄積を待ち、後の診療報酬改定時に、▼従前の包括評価(点数)に含める▼新たな分岐を設ける▼さらなる症例数確保のため出来高算定を続ける―のいずれとするか、個別に検討していくことになります。

8月7日の中医協総会で「高額な薬剤」(一定の基準を満たした)が保険収載されたことや、すでに保険収載されている「高額な薬剤」(一定の基準を満たした)の効能効果追加が認められたことなどから、中医協は、次の医薬品を「次期診療報酬改定まで、出来高算定とする」ことを決定。後者の通知は、その旨を明確にしています(厚労省のサイトはこちら)。

▽「エンコラフェニブ」(製品名:ビラフトビカプセル50mg、同カプセル75mg、がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がん、およびBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺未分化がん治療に用いる)
→「100020 甲状腺の悪性腫瘍」(100020xx99x1xx、100020xx99x2xx、100020xx99x3xx、100020xx99x5xx)において出来高算定とする

▽「ビニメチニブ」(製品名:メクトビ錠15mg、がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺がん、およびBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な甲状腺未分化がん治療に用いる)
→「100020 甲状腺の悪性腫瘍」(100020xx99x1xx、100020xx99x2xx、100020xx99x3xx、100020xx99x5xx)において出来高算定とする

▽「ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)」(製品名:ジーラスタ皮下注3.6mg、造血幹細胞の末梢血中への動員に用いる)
→「130020 ホジキン病」(130020xx97x0xx)、「130030 非ホジキンリンパ腫」(130030xx97x00x)、「130040 多発性骨髄腫、免疫系悪性新生物」(130040xx97x0xx)において出来高算定とする

▽「ファビピラビル」(製品名:アビガン錠200mg、重症熱性血小板減少症候群ウイルス感染症治療に用いる)
→「180030 その他の感染症(真菌を除く。)」(180030xxxxxx0x、180030xxxxxx1x)において出来高算定とする

▽「ベキサロテン」(製品名:タルグレチンカプセル75mg、皮膚病変を有する成人T細胞白血病リンパ腫治療に用いる)
→「130030 非ホジキンリンパ腫」(130030xx99x2xx、130030xx99x3xx、130030xx97x2xx、130030xx97x3xx)において出来高算定とする

▽「セルペルカチニブ」(製品名:レットヴィモカプセル40mg、同カプセル80mg、RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形腫瘍治療に用いる)
→「010010 脳腫瘍」、「02001x 角膜・眼及び付属器の悪性腫瘍」、「03001x 頭頸部悪性腫瘍」、「040010 縦隔悪性腫瘍、縦隔・胸膜の悪性腫瘍」、「040040 肺の悪性腫瘍」、「040050 胸壁腫瘍、胸膜腫瘍」、「050010 心臓の悪性腫瘍」、「060010 食道の悪性腫瘍(頸部を含む。)」、「060020 胃の悪性腫瘍」、「060030 小腸の悪性腫瘍、腹膜の悪性腫瘍」、「060035 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍」、「060040 直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍」、「060050 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。)」、「060060 胆嚢、肝外胆管の悪性腫瘍」、「06007x 膵臓、脾臓の腫瘍」、「070030 脊椎・脊髄腫瘍」、「070040 骨の悪性腫瘍(脊椎を除く。)」、「070041 軟部の悪性腫瘍(脊髄を除く。)」、「080005 黒色腫」、「080006 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外)」、「090010 乳房の悪性腫瘍」、「100030 内分泌腺及び関連組織の腫瘍」、「100180 副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍」、「100190 褐色細胞腫、パラガングリオーマ」、「11001x 腎腫瘍」、「11002x 性器の悪性腫瘍」、「110050 後腹膜疾患」、「110060 腎盂・尿管の悪性腫瘍」、「110070 膀胱腫瘍」、「110080 前立腺の悪性腫瘍」、「110100 精巣腫瘍」、「120010 卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍」、「12002x 子宮頸・体部の悪性腫瘍」、「120030 外陰の悪性腫瘍」、「120040 腟の悪性腫瘍」、「120050 絨毛性疾患」、「180050 その他の悪性腫瘍」において出来高算定とする(DPCコードは膨大なため省略)

▽「バレメトスタッ トトシル酸塩」(製品名:エザルミア錠50mg、同錠100mg、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫治療に用いる)
→「130030 非ホジキンリンパ腫」(130030xx99x8xx、130030xx97x8xx)において出来高算定とする

▽「A型ボツリヌス毒素」(製品名:ボトックス注用50単位、同注用100単位、上肢および下肢痙縮治療に用いる)
→すべての診断群分類番号において出来高算定とする

▽「リサンキズマブ(遺伝子組換え)」(製品名:スキリージ点滴静注600mg、中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)に用いる)
→「060185 潰瘍性大腸炎」(060185xx99x0xx、060185xx99x1xx、060185xx99x2xx、060185xx99x3xx、060185xx99x5xx、060185xx97x0xx、060185xx97x1xx、060185xx97x3xx、060185xx97x5xx、060185xx0100xx、060185xx0101xx、060185xx0110xx、060185xx0111xx)において出来高算定とする

▽「エルトロンボパグ オラミン」(製品名:レボレード錠12.5mg、同錠25mg、慢性特発性血小板減少性紫斑病の治療に用いる)(1歳以上の小児への適用追加)
→「130110 出血性疾患(その他)」(130110x1xxx0xx)において出来高算定とする

▽「モメロチニブ塩酸塩水和物」(製品名:オムジャラ錠100mg、同錠150mg、同錠200mg、骨髄線維症治療に用いる)
→「130050 骨髄増殖性腫瘍」(130050xx99x4xx、130050xx97x4xx)において出来高算定とする

▽「ピルトブルチニブ」(製品名:ジャイパーカ錠50mg、同錠100mg、他のBTK阻害剤に抵抗性また不耐容の再発または難治性のマントル細胞リンパ腫治療に用いる)
→「130030 非ホジキンリンパ腫」(130030xx99x7xx、130030xx97x70x、130030xx97x71x)において出来高算定とする

▽「グマロンチニブ水和物」(製品名:ハイイータン錠50mg 、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な 進行・再発の非小細胞肺がん治療に用いる)
→「040040 肺の悪性腫瘍」(040040xx99060x、040040xx99061x、040040xx9916xx、040040xx97x6xx)において出来高算定とする

▽「アビバクタムナトリウム/セフタジジム水和物」(製品名:ザビセフタ配合点滴静注用、本剤に感性の各種細菌による敗血症、肺炎、膀胱炎、腎盂 腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍の治療に用いる)
→「040080 肺炎等」、「040081 誤嚥性肺炎」、「060150 虫垂炎」、「060310 肝膿瘍(細菌性・寄生虫性疾患を含む。)」、「060335 胆嚢炎等」、「060340 胆管(肝内外)結石、胆管炎」、「060370 腹膜炎、腹腔内膿瘍(女性器臓器を除く。)」、「060570 その他の消化器等の障害」、「11013x 下部尿路疾患」、「110310 腎臓又は尿路の感染症」、「120110 子宮・子宮附属器の炎症性疾患」、「120270 産褥期を中心とするその他の疾患」、「180010 敗血症」、「180040 手術・処置等の合併症」において出来高算定とする(DPCコードは膨大なため省略)

▽「乾燥濃縮人プロテインC」(製品名:セプーロチン静注用1000単位、先天性プロテインC欠乏症に起因する静脈血栓塞栓症および電撃性紫斑病の治療および血栓形成傾向の抑制に用いる)
→「050180 静脈・リンパ管疾患」(050180xx99xxxx、050180xx02xxxx、050180xx01xxxx)、「050190 肺塞栓症」(050190xx99x0xx、050190xx99x1xx、050190xx99x2xx、050190xx99x3xx、050190xx9700xx、050190xx9701xx、050190xx9702xxm、050190xx9703xx、050190xx975xxx)、「130110 出血性疾患(その他)」(130110x0xxx0xx、130110x0xxx2xx、130110x0xxx5xx、130110x1xxx0xx、130110x1xxx5xx)において出来高算定とする



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