高血圧症や糖尿病等の治療薬服用割合、脳卒中・心臓病等の罹患割合など、年齢とともに増加することを再確認―健保連
2024.9.3.(火)
血圧降下薬の服用割合は年齢が上がるにつれて高くなる。糖尿病治療薬の服用等割合もその傾向があるが、上昇・増加の度合いは小さい―。
高脂血症治療薬については、60歳を過ぎると、女性のほうが男性よりも服用割合が高くなっている—。
また脳卒中・心臓病などの罹患割合も、年齢とともに増加するが、疾患により状況は若干異なっている—。
健康保険組合連合会(健保連)が8月28日に公表した2022年度の「特定健診の『問診回答』に関する調査」から、こういった状況が浮かび上がってきました(健保連のサイトはこちら)。
傷病や症状などの特性を踏まえた保健指導などが極めて重要となる
主に大企業で働くサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合(健保組合)の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)は、従前よりデータヘルスに積極的に取り組んでおり、例えば、健保組合加入者のレセプト情報をさまざまな角度から分析し、加入者に対して「自分自身で生活習慣や医療機関受診行動を変容させる」ような情報提供を行うなどの取り組みを行っています。
今般、2022年度に特定健康診査(特定健診)を受診した健保組合加入者400万6893名(男性:238万874名、女性:162万6019名)のデータをもとに、受診者の状況を分析しています。
特定健診は、40歳以上74歳以下の人を対象に行われる、いわゆる「メタボ健診」です。そこで「生活習慣病リスクあり」と判断された人は特定保健指導につなげられ、生活習慣改善を目指すことになります。こうした取り組みが進むことで「生活習慣病患者」や「その予備群」が減り、結果として「医療費の適正化」はもちろん、健康寿命の延伸といった効果が期待されます(ただし「効果に乏しい」との研究がある点にも留意)。
分析結果は膨大であり、本稿では主に(1)血圧を下げる薬(2)インスリン注射・血糖を下げる薬(3)コレステロールや中性脂肪を下げる薬―の使用状況に焦点を絞ります。
まず(1)の「血圧を下げる薬」を服用している人は、特定健診受診者全体のうち男性20.9%、女性11.4%ですが、年齢が上がるにつれてその割合は高くなり、70-74歳では、男性で49.6%、女性で37.3%が服用しています。
また(2)の「インスリン注射・血糖を下げる薬」については、特定健診受診者全体のうち男性6.8%、女性2.5%が服用しています。年齢が上がるにつれて服用割合が高くなることそのものは(1)の血圧降下薬と同じですが、増加割合などは小さく、70-74歳でも、男性で15.1%、女性で7.6%にとどまっています。
他方、(3)の「コレステロールや中性脂肪を下げる薬」については、特定健診受診者全体のうち男性13.7%、女性10.4%が服用しています。年齢が上がるにつれて服用割合が高くなる傾向は同じで、70-74歳において、男性では28.9%、女性で35.4%となっています。
「コレステロールや中性脂肪を下げる薬」については、60歳を過ぎると、女性のほうが男性よりも「服用割合が高くなる」点が注目されます。
さらに、次のような状況も明らかとなりました。
▼医師から「脳卒中(脳出血、脳梗塞等)」にかかっていると言われたことがある・治療を受けたことがある者の割合は、特定健診受診者全体のうち男性1.5%、女性0.8%。年齢が上がるにつれて割合も増加し、70-74歳においては、男性で4.0%、女性で2.3%となる
▼医師から「心臓病(狭心症、心筋梗塞等)」にかかっていると言われたことがある・治療を受けたことがある者の割合は、特定健診受診者全体のうち男性3.3%、女性1.4%。年齢が上がるにつれて割合も増加し、70-74歳においては、男性で10.5%、女性で4.4%となる
▼医師から「慢性腎臓病や腎不全」にかかっていると言われたことがある・治療を受けたことがある者の割合は、特定健診受診者全体のうち男性0.6%、女性0.4%。年齢との関係は、それほど明確ではなく、70-74歳においても、男性で1.2%、女性で0.5%にとどまる
▼医師から「貧血」と言われたことがある者の割合は、特定健診受診者全体のうち男性2.8%、女性23.3%。男性では、年齢との関係はそれほど明確でないが、女性では50歳代前半がピークで26.5%となる
このように、傷病・症状により「医薬品等の服用割合」などが大きく異なることが確認できます。傷病等や受診者の特性を踏まえた保健指導、医療機関の受診勧奨を検討していくことが重要でしょう。
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