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医療費適正化計画の後押しに向け、データ分析に基づく行動目標の設定などをすべき―財政審

2016.5.23.(月)

 財政の健全化に向けて、「経済・財政再生計画」に盛り込まれた社会保障分野の44改革項目を工程表に沿って実行することが不可欠である。具体的には、「データ分析に基づく、きめ細かい行動目標を今夏(2016年夏)までに設定して、都道府県の医療費適正化の取り組みを後押ししていく」「データ分析を通じた医療費・介護費などの地域差を『見える化』する」「高額療養費などについて負担の公平性・負担能力に応じた負担といった観点から見直しを行う」ことなどが必要―。

 財政制度等審議会は、18日にまとめた「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」の中で、このような点を強調しています(関連記事はこちら)。

医療費・介護費の「見える化」や、外来受診時定額負担の検討も要望

 社会保障制度は、我々国民の納める保険料や税が財源となっています。このため社会保障費が膨張をつづけ、我が国の財政をあまりに逼迫させることになれば、制度そのものの基盤を失ってしまいます。

 そこで財政審は、「受益と負担のバランスがとれた持続可能な社会保障制度」を構築するためには、効率化や制度改革が不可欠であると強調。また「経済・財政再生計画」に盛り込まれた社会保障分野の44改革項目を工程表に沿って実行することが不可欠であるとも指摘し、具体的に次のような改革を実行することを強く求めています。

 まず、医療・介護提供体制について、(1)地域医療構想・医療費適正化計画の早期策定(2)介護療養病床から「効率的なサービス提供体制」への転換(2016年内に結論)(3)都道府県による病床再編や地域差是正に向けた努力の支援(4)外来時の定額負担導入(2016年末までに結論)―などについて、工程表に則って実行するよう提言しています。

 このうち(1)の医療費適正化計画に関しては、国が「入院について地域医療構想との整合性を確保する」「外来について、データ分析に基づく重複投薬の是正等に向けたきめ細かい行動目標を今年(2016年)夏までに設定する」ことで、都道府県による取り組みを後押しすべきとしています。

 また(4)の外来受診時定額負担では、「かかりつけ医以外の外来を受診した場合に、受診者に定額の別途負担を課す」ことで、かかりつけ医受診を推進する狙いがあります(関連記事はこちらこちら)。

かかりつけ医の普及を図るために、かかりつけ医以外の外来を受診した場合の「特別の定額負担」を検討することに

かかりつけ医の普及を図るために、かかりつけ医以外の外来を受診した場合の「特別の定額負担」を検討することに

医療提供体制改革を進めるために、高齢者医療確保法に規定された「診療報酬の特例」(都道府県別の診療報酬設定)や、都道府県の権限強化などを検討することに

医療提供体制改革を進めるために、高齢者医療確保法に規定された「診療報酬の特例」(都道府県別の診療報酬設定)や、都道府県の権限強化などを検討することに

 こうした改革を進めるためには「医療費、介護費などに関する地域差などの『見える化』」を一層進めることが必要です(関連記事はこちら)。これに関連して財政審は、「ヘルスケアポイントの付与や保険者努力を支援する仕組みの前倒し」(インセンティブ改革)や「民間事業者も活用した保険者によるデータヘルス(データ分析に基づく保健事業)」について優良事例の全国展開や規制改革などに取り組んでいくことも提案しています。

 

 また、負担の公平化を継続する観点から「世代間・世代内での負担の公平性の確保や負担能力に応じた負担などの観点に立った高額療養費・高額介護サービス費制度の見直し」、「介護納付金の総報酬割」、「介護保険における給付の適正化・負担の在り方」、「スイッチOTC(一般用医薬品)の保険償還率のあり方」(これらは2016年末までに結論)、「75歳以上の後期高齢者の窓口負担のあり方」(2018年末までに結論)について検討を行い、必要な改正法案などを来年(2017年)の通常国会に提出することを求めました。

医療費の効率化を図るために、市販品類似薬について保険償還率(現在は一律3割)のあり方を検討することに

医療費の効率化を図るために、市販品類似薬について保険償還率(現在は一律3割)のあり方を検討することに

 一方、高度な医療の保険収載を続けながら、保険制度の持続可能性を確保するために「公的保険給付の範囲の適正化」を図る必要があるとも指摘しています。具体的には、前述の項目と重複するものもありますが、▽医薬品や医療機器などに係る「費用対効果評価」の本格導入▽生活習慣病治療薬の処方のあり方▽市販品類似薬に係る保険給付の見直し―などです。

 さらに調剤報酬にターゲットを絞り、「当審議会が主張してきた改革はなお途上であり、更なる取組が必要である」とも指摘。具体的には、▽院内処方と院外処方との格差是正に向けた調剤料の見直し▽後発品の使用促進が不十分な薬局への減算措置―などを念頭に置いていると考えられます。

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