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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

目指すは診療報酬に振り回されない経営―HITO病院、飛躍の原動力(1)

2017.11.17.(金)

 愛媛県四国中央市にある社会医療法人石川記念会HITO病院(257床)。二代目院長の就任とともに病院名を変更(旧石川病院)し、経営が右肩上がりを続けています。「人」を軸にした新しいブランディング、ホテルのような建物とスタッフ対応、完全機能分化で高度急性期から介護までをグループに擁する独自の地域包括ケアシステム構築など、数々の先進的な経営スタイルで注目を集めています。

 二代目院長である石川賀代氏は、どのようにして変革を推進していったのか。次々と採用する先進的な経営スタイルを支える原動力は何なのか――。石川院長への連載インタビュー。初回は、「診療報酬に振り回されない」との思いを実現するため、経営者としてぶれない心と、激変の時代へ柔軟に対応するためのしなやかさの必要性をお聞きします(聞き手は、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表取締役社長の渡辺幸子)。

渡辺:石川病院からHITO病院に変わっていった背景、変わることを決断したきっかけなどを教えてください。

石川氏:愛媛県から県立病院の民間移譲の話があったことが、直接のきっかけになりました。ただ、当時の石川病院のトップである父はすでに高齢で、事業承継を考えなければならない時期でもありました。また、今の時代に合わせた今後の病床機能の在り方についても、改めて問い直す必要性を感じていました。

石川賀代(いしかわ・かよ)氏:1992年東京女子医科大学卒、同大学病院入局。99年から大阪大学でウイルス研究に従事。2000年医学博士取得。02年医療法人綮愛会石川病院(現社会医療法人石川記念会HITO病院)入職。2005年副院長、2010年から現職。2013年HITO病院開設。2013年愛媛大学臨床教授。日本肝臓学会専門医。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本人間ドック学会指導医。日本消化器病学会指導医。地域包括ケア病棟協会幹事。全日本病院協会広報委員会委員。日本医療マネジメント学会評議員。

石川賀代(いしかわ・かよ)氏:1992年東京女子医科大学卒、同大学病院入局。99年から大阪大学でウイルス研究に従事。2000年医学博士取得。02年医療法人綮愛会石川病院(現社会医療法人石川記念会HITO病院)入職。2005年副院長、2010年から現職。2013年HITO病院開設。2013年愛媛大学臨床教授。日本肝臓学会専門医。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本人間ドック学会指導医。日本消化器病学会指導医。地域包括ケア病棟協会幹事。全日本病院協会広報委員会委員。日本医療マネジメント学会評議員。

 そこで当時の理事会でそれらについて検討した結果、やはりこれからも「急性期」としてやっていきたいと決断。であれば、手挙げを選択するしかないということになったわけです。旧病院は増築を重ねてきた結果、非常に手狭だったこともあり、これを機に民間移譲分を含めて建て直すことにもなりました。

渡辺:新しく誕生したHITO病院のミッションやビジョン、さらにそのブランディングは素晴らしく、旧病院とイメージが大きく変わったかと思います。新病院の構想は昔からあたためてきたものなのですか。

石川氏:いえ、昔からの構想ではありません。新築するにあたり、「新しい病院をどんな病院にしていこうか」と考えたのがスタートです。

 まず、次の世代に繋ぐ「継続」こそが、2代目である私の責務だと思ったことがあります。

 先代の父は、完全にトップダウン型の経営者。有床診療所から始まり、新しいものを取り込みながら急激に155床まで施設を拡大していきました。私は父のような経営者にはなれないと思っていましたし、何より急拡大してスタッフ数が急激に増えていたので、病院の理念であったり、どういう病院にしたいかだったり、そういうものが伝わらないと、そもそも組織を動かせないと思ったのです。

 トップダウンからボトムアップとまでは言えませんけれども、その両方をうまく取り入れたやり方で、「石川さんの病院」「父の病院」から脱却することが、「継続」のためにまず必要なことだと考えたわけです。もちろん、すべての「人」を大事にすること、最後まで責任を持って患者を診ることなど、本当に大事なところは変わらずに、まずは地域の中核病院になることや、患者にもスタッフにも選ばれる病院になるためにはどうすればいいのか、などを突き詰めていきました。

渡辺:経営者がよく陥る過ちの一つに、目の前の問題にフォーカスしがちになり、理念や「継続」などの大局を見落としたり、見失ってしまったりすることもあると思います。経営経験ほぼゼロでそのことに気付けたのはなぜなのでしょうか。

石川氏:一番大きいのは、「診療報酬に振り回されるのは嫌だ」ということですね。やはり、自分たちの病院の立ち位置は自分たちで決めたいですから。自分たちの立ち位置がしっかりしていたら、少しくらいの点数の変化で右往左往することなく、ぶれない姿勢を貫くことができます。「診療報酬に振り回されるのは嫌だ」は私の口ぐせになっていて、常に経営者としてぶれないことを強く心がけています。

 その一方で、しなやかさも同じように重要な経営感覚だと思っています。

 私は、民間の強みは変化を恐れないことと、スピード感だと思っています。2025年、今は2035年をターニングポイントと指摘されることもありますが、さらに激しい変化が待ち受けています。そういう中で、特にこれからの人口構造の変化に対する経営対策は、今までの私たちの経験値だけでは太刀打ちできないのではないでしょうか。そういう時代背景の中で最も重要なことは、しなやかな柔軟性を持つということではないでしょうか。

 例えば、異業種が取り入れている経営やマーケティングなどの手法を、病院経営に活用することはできないかと、まずは検討できるようなしなやかさです。そういう情報をアンテナ高く、いち早くキャッチし、実際に取り入れていく力と、それを形にしていくことが大事なのかなと思っています。

HITO病院の概観

HITO病院の概観

連載◆HITO病院、飛躍の原動力
(1)目指すは診療報酬に振り回されない経営
(2)異業種に負けない顧客視点、経営感覚を
(3)絶対になくならない病院のシンプルな条件

取材を担当したインタビュアー 渡辺 幸子(わたなべ・さちこ)

watanabe 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの代表取締役社長。
慶應義塾大学経済学部卒業。米国ミシガン大学で医療経営学、応用経済学の修士号を取得。帰国後、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社コンサルティング事業部などを経て、2003年より米国グローバルヘルスコンサルティングのパートナーに就任。2004年3月、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン設立。これまで、全国800病院以上の経営指標となるデータの分析を行っている。著書に『患者思いの病院が、なぜつぶれるのか?』『日本医療クライシス「2025年問題」へのカウントダウンが始まった』(幻冬舎MC)など。
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