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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

医療・福祉31資格の届け出や認証など、マイナンバー制度を活用—社会保障資格マイナンバー活用検討会

2020.10.27.(火)

医師、歯科医師、薬剤師、看護師、リハビリ専門職種、介護福祉士、介護支援専門員などの31職種について、資格に関連する届け出(得喪など)、就職に当たっての資格証明、離職中の就業支援に関して、マイナンバー制度(マイナンバー・マイナンバーカード)の利活用を進めていく―。

こういった議論が、厚生労働省の「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」(以下、検討会)で始まりました。

10月20日の初回会合では、今後、専門職種の団体に対しアンケートやヒアリングを行い、マイナンバー制度の利活用に当たっての課題や留意点などを整理していく方針が固められました。

マイナンバー制度の利活用、「本人確認の徹底」が大前提

菅義偉内閣総理大臣は安倍晋三前首相に引き続き「行政のデジタル化」を強力に推進する方針を明確に打ち出しており、その一環として「各種免許・国家資格、教育等におけるマイナンバー制度の利活用」があります。マイナンバー制度・マイナンバーカードを活用して、各種の国家資格の管理を一元的に行う構想です。

国家資格等管理システム(仮称)のイメージ(社会保障資格マイナンバー活用検討会5 201020)



厚労省も、この方針に沿って社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度の利活用を進めるために検討会を設置。10月20日の初会合では、まず31職種(▼医師▼歯科医師▼薬剤師▼保健師▼助産師▼看護師▼准看護師▼理学療法士▼作業療法士▼視能訓練士▼義肢装具士▼言語聴覚士▼臨床検査技師▼臨床工学技士▼診療放射線技師▼歯科衛生士▼歯科技工士▼あん摩マッサージ指圧師▼はり師▼きゅう師▼柔道整復師▼救急救命士▼介護福祉士▼社会福祉士▼精神保健福祉士▼公認心理師▼管理栄養士▼栄養士▼保育士▼介護支援専門員▼社会保険労務士―)について得喪や変更などに係る届出等について「マイナンバー制度の活用」を検討していく方針を明確にしました。今後の議論によっては、さらに対象職種が拡大していくことも考えられます。

社会保障に係る資格の現状(社会保障資格マイナンバー活用検討会1 201020)



例えば現在、医療系の国家試験に合格し、免許証の交付を受けるためには▼申請書▼住民票や戸籍謄本▼医師の診断書(欠格事由に該当しない旨)▼合格証明書▼収入印紙—などを厚労省に持参し、手渡しで交付してもらうことになり、非常に煩雑かつ非効率です。

この点、マインナンバー制度を利活用することで、▼住民票や戸籍謄本▼合格証明書—の提示が不要になると考えられます。

さらにマイナンバーカードを利活用すれば、申請手続きそのものをオンライン(マイナポータルの活用)で完結することができ、効率化が図られます(以下【論点1】)。

論点1の一例(資格取得の届け出に関して)(社会保障資格マイナンバー活用検討会2 201020)



また医療系の有資格者が医療機関等に勤める際には、現在、免許証の原本あるいはコピーを提示することが必要です(持参または郵送)。

この点、マイナンバーカードを利活用して、オンライン(マイナポータルの活用)で電子資格情報の提示が可能となれば、労働者(有資格者)・雇用主の双方にとって効率的に「資格の有無」を確認することが可能となります。また本人確認(資格情報に記載された人物と、申請者とが同一人物であることの確認)が十分にできれば、資格確認の実効性も高まります(現在では他人の資格証を利用した捏造の資格証を提示するケースもある)(以下【論点2】)。

論点2の例(社会保障資格マイナンバー活用検討会3 201020)



さらに、例えば離職中の看護師に対しては、登録情報(氏名、住所、連絡先など)をもとに再就職支援(就業情報の提供など)が行われていますが、マイナンバー制度を利活用することで、より効果的・効率的な就業支援が可能になると期待されます(以下【論点3】)。

論点3の例(社会保障資格マイナンバー活用検討会4 201020)



検討会では、この3つの論点について、医療関係職種の団体にアンケート調査やヒアリングを行い「課題や留意点などの抽出」を行うこととしています。

10月20日の会合でも、長島公之構成員(日本医師会常任理事)らから「制度を上手に利活用するためには、『なりすまし』防止の観点から、本人確認をどのように徹底・担保するかが最大の課題である」との指摘が出ています。小野太一構成員(政策研究大学院大学教授)もこの指摘に強く賛同しています。例えば、オンライン診療では医師が「自身が有資格者である」旨を画面上の明示することが求められますが、「なりすまし」医師によるオンライン診療が行われているケースもあります。医療安全上、極めて問題であり、こうした問題を解消できる仕組みがきちんと作ることが、マイナンバー制度の利活用とともにオンライン診療をさらに推進する下地になると考えられます。

また樋口範雄構成員(武蔵野大学法学部特任教授)らからは「マイナンバー制度を利活用した場合のメリットについて、より明確にし、それをPRすべき」と指摘。松本純夫構成員(国立病院機構東京医療センター名誉院長)も「行政サイドのメリットは比較的明確だが、有資格者サイドのメリットが十分に見えない。例えば私自身は研究者としての倫理研修を定期的に受講することとなっているが、そこでは『最新の状況はこうなっているのか』などと学ぶことができ、その過程でまさに『受講のメリット』を感じている。資格によってメリットが異なると思うので、そこを整理し、明確化すべき」と提案しました。

例えば【論点3】では、離職した看護師等が「再就職に当たり、最新の医学・看護学の知識を得られ、技術的な支援も受けられる」などのメリットが明確になれば、有資格者サイドから「利用させてほしい」との申請・依頼が増加し、自動的に制度の利活用が進むと考えられます。【論点1】でも「効率化」は大きなメリットですが、「有資格者ならではのメリットのPRが必要である」と樋口構成員や松本構成員は指摘しています。



検討会では、上述したアンケート調査・ヒアリング調査を進めて、論点1-3の実現に向けた課題と解決策などを探っていきます。

なお、医師等の資格を電子的に証明するための仕組みとして厚労省はHPKI(保健医療福祉分野の公開鍵基盤、Healthcare Public Key Infrastructure)を認めています。例えば、地域医療連携システムなどには、患者の個人情報が格納されているために「誰にアクセスを認めるか」が極めて重要となります。その際、医師がHPKIを活用して自分自身の身分・資格を証明することで、適切なアクセス権の付与などが可能となります。

将来的には、この「HPKIシステム」と「マイナンバー制度を利活用した資格認証」との関係(役割分担をするのか、マイナンバー制度の活用がHPKIをも包含していくのか、など)も別途、整理していくことになりそうです。

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