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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

かかりつけ医は時間外でも自身の患者にファースト対応を、全医療機関の院長に「医師少数区域での勤務」義務を—全自病・小熊会長

2022.6.7.(火)

医師偏在対策、医師働き方改革、地域医療構想など、医療提供体制改革を進めるうえで「医療人材の確保」が大きなテーマになる。この点、大規模病院が救急等患者にすべて対応しなければならないのでは改革は進まない。かかりつけ医は時間外であっても、自身の患者の急変にファースト対応し、手に負えない場合に「大病院への搬送を行う」という仕組みを地域ごとに構築しなければならない—。

また地域の医師不足を改善・解消するために、すべての病院・クリニックの管理者(院長)要件として「医師少数区域で一定期間勤務した経験」を義務付けてはどうか―。

公立病院には経営強化プラン作成が求められている(2022・23年度)が、プラン期間中(2027年度まで)の黒字化実現が強く迫られているとも考えられ、早急かつ強力に経営強化を図る必要がある—。

全国自治体病院協議会(全自病)の小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)はじめとする幹部が5月25日に定例記者会見を開き、こうした考えを強調しました。

5月25日に開催された全国自治体病院協議会の定例記者会見。前列中央が小熊豊会長(砂川市立病院名誉院長)、同じく向かって左が望月泉副会長(岩手県・八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長)、同じく向かって右が竹中賢治副会長(熊本県・天草市病院事業管理者)、後列向かって左が中島豊爾副会長(岡山県精神科医療センター理事長兼名誉院長)、同じく右が末永裕之参与(愛知県・小牧市病院事業管理者)

かかりつけ医は、夜間・休日でも自身の患者にファースト対応すべき

全国自治体病院開設者協議会(以下、開設者協)と全国自治体病院協議会(以下、全自病)、さらに全国自治体病院経営都市議会協議会は、毎年2回(春・秋)、▼自治体病院議員連盟(会長:森英介・衆議院議員、自民党労政局長)▼総務省▼厚生労働省—などに宛てて、「地域医療を守る自治体病院の経営安定」などに向けた要望を行っています。

5月24日には、次のような事項について要望が行われました。目立つ項目のみGem Med編集部でピックアップしており、要望内容は非常に多岐にわたっています。

(1)新型コロナウイルス感染症への対応:▼重症度に応じた対応体制や病院の機能分担(平時及び感染拡大時)▼介護施設での対応力強化▼リアルタイムでの情報把握▼人材確保—など

(2)医師確保・医師偏在対策、医師働き方改革の推進、地域医療構想の実現・推進:▼「かかりつけ医」機能の適切な発揮▼いわゆる「ビル診」規制▼病院の再編・機能分担—

(3)精神科医療:▼厚労省の所掌部局の「医政局」への移管▼発達障害対策(小児のうちに適切な療育を行えば、大人になって困ることが減り、むしろ「優秀な人材」となりえる)—など

(4)医療人材確保(医師、看護師はもとより「病院薬剤師」の確保が極めて厳しい状況にある)

(5)デジタル化の推進・活用(電子カルテ等の費用軽減など)

(6)公立病院経営強化プランの策定と実行



会見では、小熊会長をはじめとする全自病幹部から、要望項目の背景などについて詳細な説明が行われています。

このうち(2)の医師確保や(3)の医師働き方改革などに共通する事項として、小熊会長は「かかりつけ医機能の強化」の重要性を強く訴えました。具体的には「クリニックや中小病院の医師は、自身が診ている患者について受診時だけでなく、夜間や休日などに具合が悪くなった際にもファースト対応を行ってほしい」というものです。ファースト対応の結果、軽症であれば「経過観察」や「かかりつけ医自身による診断・治療」を行い、手に負えないと判断した際に初めて「高度医療を行える基幹病院等に搬送する」という仕組みを地域ごとに構築することが必要不可欠であると小熊会長は強調し、さらに「こうした仕組みを構築せずに医師の働き方改革を行うことはできない」とも訴えました。

医師の働き方改革では「患者・国民の協力」が必要不可欠です。例えば、患者が軽症にもかかわらず「空いている夜間救急外来を受診しよう」などと考えたのでは、病院勤務医の負担はまったく軽くなりません。

小熊会長は、こうした「国民・患者の協力」に加えて、「クリニックや中小病院の協力(自院のかかりつけ患者には、まず自院で対応する)も不可欠である」と強調しているのです。

あわせて小熊会長は「個人的な思いである」と断りを入れたうえで、「いわゆるビル診の中には、平日の9時から17時までしか対応せず、夜間や休日には自院の受診患者であっても『知らない』という対応をとるところもあり、非常に腹立たしく思っている。自院の患者であれば、まず電話対応して適切な指示等を行うなどのファースト対応を行うべきであろう。大病院の救急が軽症患者でいっぱいになっており、真に高度医療が必要な救急患者に大病院が対応できるような体制を構築しなければならない」と強くコメントしています。

すべての病院・クリニックの院長には「医師少数区域での勤務」義務付けるべき

また、上記にはもちろん(4)の人材確保や(6)の公立病院改革にも関連する事項として、小熊会長と望月泉副会長(八幡平市病院事業管理者、八幡平市立病院統括院長)は「医師少数区域等での勤務経験を認定する仕組み」の拡充を強く要望しています。

医師偏在対策の一環として、次のような仕組みが稼働しています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

▽「医師少数区域等に一定期間(6か月以上)勤務し、地域医療への知見を持った医師」を厚生労働大臣が認定する(認定医師)

▽地域医療支援病院では、「認定医師である」ことを管理者(院長など)の要件とする(2020年以降に臨床研修を開始した医師が対象)

医師少数区域等での一定期間勤務を認定する制度の概要



医師少数区域での勤務を促すことにより、医師偏在の改善・解消を目指すものです。この点、小熊会長・望月副会長は「地域医療支援病院に限定せず、すべての病院・クリニックの管理者(院長)要件として認定医師であることを盛り込むべきではないか」と提案。医師少数区域の多くでは「中小規模の自治体病院」が医療提供体制の要となっていますが、医師不足が極めて深刻であり「医師少数区域での勤務経験を評価する仕組み」の拡充が必要不可欠であると訴えています。

公立病院の経営強化、プラン期間中の「黒字化」達成を強く求められる可能性

なお、(6)の公立病院経営強化プランについて竹中賢治副会長(天草市病院事業管理者)は「計画期間中に黒字化を達成できない場合、厳しい対応が迫られるのではないかと危惧している。杞憂に終わることを期待しているが、すべての自治体病院が早期に、かつ強力に経営強化を図る必要がある」との考えを示しています。

Gem Medでも報じているとおり、総務省は3月29日に「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」(本稿では「新ガイドライン」とする)を公表(総務省のサイトはこちら(ガイドライン本文)こちら(概要版))。公立病院において「経営力の強化」「機能強化」を目指す積極的なものとなっており、各公立病院では新ガイドラインを踏まえて2022年度・23年度中に「経営強化プラン」(=改革プラン、「策定年度またはその次年度~2027年度」が対象期間)を策定することが求められます(関連記事はこちら)。

新たな公立病院経営強化ガイドラインの概要



このガイドラインの中には「持続可能」という文言が17回出てきます。竹中副会長は「これは総務省が『プラン期間中に黒字化をせよ』と強く求めているものと感じている。期間中に黒字化を達成できない場合には、厳しい措置が待っているのではないか」と危惧。会員病院に向けて「黒字化に向けて、早急に、協力に経営強化を図るべきである」と訴えました。

Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、こうした経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

●GHCのサービス詳細はこちら

従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCアソシエイトマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



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