後発品使用体制加算・調剤体制加算などの「後発品割合」、2024年3月まで供給不安薬を計算から除外することを認める―厚労省
2023.9.29.(金)
【後発医薬品使用体制加算】【後発医薬品調剤体制加算】などにおける「後発品割合」の計算にあたっては、来年(2024年)3月まで「供給不安となっている後発品を計算から除外する」ことを認める(カットオフ値の計算では除外不可)―。
厚生労働省は9月21日に事務連絡「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を示し、こうした点を明確にしました(厚労省サイトはこちら)。
計算から除外可能な後発品は膨大なため、厚労省サイトからリストをダウンロードしてください。
●厚労省サイト
▽本年(2023年)10月-来年(2023年)3月に計算から除外できる後発品リストはこちら(従前と対象医薬品が変更されている点に留意を)
本年(2023年)3月の事務連絡時点とは「対象品目が変わっている」点等に留意を
医療技術の高度化(例えば脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)、白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似した、やはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場)が進み、医療費は大きく膨張を続けています。
また、少子高齢化の進展(今年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となる。その後2040年度にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するが、現役世代人口が急速に減少する)により、やはり医療費は膨張し、その一方で支え手となる現役世代が減少していきます。
このように、我が国の医療保険財政は厳しさを増しており、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ための取り組みが欠かせない状況となっています。具体的には、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組むことが求められています。
このうち後発医薬品の使用促進に関しては政府が目標(現在は、すべての都道府県で後発品使用割合を2023年度までに80%以上とする)を定めるとともに、後発品の使用促進に向けた診療報酬上の加算(▼病院における入院医療での使用促進を狙う【後発医薬品使用体制加算】▼診療所での使用促進を狙う【外来後発医薬品使用体制加算】▼調剤薬局での使用促進を狙う【後発医薬品調剤体制加算】―など)が設けられています(現在、2024年度からの目標について検討中)。
これらの加算は「処方・調剤における後発品の数量割合」が施設基準に設けられており、2022年度診療報酬改定の告示・通知内容を見ると次のようなっています。
●薬局(調剤基本料)の【後発医薬品調剤体制加算】
▽加算1:21点(後発品割合80%以上)
▽加算2:28点(同85%以上)
▽加算3:30点(同90%以上)
▽敷地内薬局などでは、加算点数を80%に減算する
●薬局において後発品割合が低い場合の減算
▽後発品割合が50%以下の薬局:調剤基本料を5点減算する
●医療機関・入院(入院基本料等加算)の【後発医薬品使用体制加算】
▽加算1:47点(後発品割合90%以上)
▽加算2:42点(同85%以上)
▽加算3:37点(同75%以上)
●診療所・外来(処方料)の【外来後発医薬品使用体制加算】
▽加算1:5点(後発品割合90%以上)
▽加算2:4点(同85%以上)
▽加算3:2点(同75%以上)
高い点数の加算を取得するためには「後発品割合を90%以上に高める」ことが求められ、多くの医療機関・薬局でさらに後発品の使用が進むことに期待が集まっています。
しかし、Gem Medでも繰り返し報じているとおり、後発医薬品をめぐっては「一部メーカーによる不祥事」(関連記事はこちらとこちら)などに端を発し、供給停止・出荷調整が頻発(A医薬品が出荷停止になると、代替薬であるA1医薬品のニーズが高まり品薄になる、そして次なる代替品A2医薬品のニーズが高まり・・・と連鎖していく)。このため医療機関・薬局の責に帰せない事情により「後発品割合を維持・向上することが困難」な状況が生じています(関連記事はこちら)。
こうした状況を受け厚労省は、「出荷停止品目等を後発品割合の計算対象から除外する」などの臨時特例措置を行ってきています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
今般の事務連絡では、後発品の供給不安が依然として継続していること受け、次のような新たな臨時特例措置を設けることとしたものです。基本的にはこれまでの臨時特例の考え方を継続するものです。
(1)本年(2023年)10月から来年(2024年)3月31日まで、小林化工社・日医工社への行政処分等を契機として本年(2023年)6月1日時点で供給が停止されていると厚労省に報告があった医薬品(以下「供給停止品目」)のうち厚労省リスト(こちら)に示す供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品については【後発医薬品使用体制加算】、【外来後発医薬品使用体制加算】、【後発医薬品調剤体制加算】、「調剤基本料」注8に規定する減算(後発医薬品減算)(以下「加算等」)における実績要件である後発医薬品の使用(調剤)割合(以下「新指標の割合」)を算出する際に、算出対象から除外しても差し支えない
(2)(1)の取り扱いを行う場合は、厚労省リスト(こちら)に示す「全ての品目について新指標の割合の算出対象から除外」することとし、「一部の成分の品目のみ算出対象から除外する」ことは認められない
▽(1)の取り扱いは、「1か月ごとに適用できる」こととする
▽加算等の施設基準について直近3か月の新指標の割合の平均を用いる場合においては、当該3か月に「(1)の取り扱いを行う月」と「行わない月」が混在しても差し支えない
▽カットオフ値の算出については、今回の臨時的な取り扱いの対象とはしない
▽新指標の割合について(1)の取り扱いを行った場合でも、カットオフ値については従前通り算出し、加算等の施設基準の実績要件を満たすかどうか確認する
(3)新指標の割合を算出するに当たり、(1)の取り扱いを採用することで【後発医薬品使用体制加算】、【外来後発医薬品使用体制加算】、【後発医薬品調剤体制加算】の実績要件を満たす、または【後発医薬品減算】に該当しない保険医療機関等は、各月の新指標の割合等を記録し、所定の様式を用いて各地方厚生(支)局に、次の期限どおり報告を行う
▼今年(2023年)10-12月分について(1)の取り扱いをする場合:今年(2023年)12月27日までに今年(2023年)6月から今年(2023年)11月の実績を報告する
▼来年(2024年)1-3月分について(1)の取り扱いをする場合:来年(2023年)3月29日までに今年(2023年)12月-来年(2024年)2月の実績を報告する
▽この場合、前月と加算等の区分に変更が生じなくとも報告の対象となる
▽(1)の取扱いを行った上で加算等の区分に変更が生じる場合、基準を満たさなくなる場合には、「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」・「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」に従い、しかるべく変更等の届出を行う必要がある
→その際、後発医薬品の使用割合等については、(1)の取り扱いにより算出した割合を記載しても差し支えない
なお、次の点に留意が必要です。
▽これまでの対象品目一覧と、今般の(1)の取り扱いの対象品目一覧は異なっている
▽今般の(1)の取り扱いの対象医薬品について一般名処方を行った場合、【一般名処方加算1・2】の算定が可能である(後発品割合の計算上の臨時特例に過ぎない)
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