妊婦へNSAIDs使用する場合「適宜、羊水量の確認」を―産科婦人科学会・産婦人科医会
2021.3.9.(火)
NSAIDsの使用によって、「胎児の腎機能障害および尿量減少、それに伴う羊水過少症が起きた」という報告がある。妊婦へのNSAIDs使用は、従前どおり「治療上の有益性が危険性を上回る場合」に限定し、使用する場合には「適宜、羊水量を確認する」ことが求められる―。
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は3月8日に、「NSAIDs添付文書改訂に関する周知」を会員医師等に向けて発し、こうした点に注意を呼びかけました(日本産科婦人科学会のサイトはこちら)。
妊婦へのNSAIDs使用で「胎児の腎機能障害および尿量減少、羊水過少症」の可能性
厚生労働省は2月25に通知「『使用上の注意』の改訂について」を発出し、 シクロオキシゲナーゼ阻害剤(経口剤、坐剤)を妊婦に使用した際▼胎児の腎機能障害・尿量減少▼羊水過少症―が起きたとの報告があることから、次のNSAIDsについて「妊婦への投与は有益性が危険性を上回る場合のみに投与する」ことなどを再確認しました。
▽解熱鎮痛を目的とした全身性の作用が期待される薬剤
▽諸疾患における血栓・塞栓形成の抑制を効能・効果に有する低用量アスピリン製剤
▽局所製剤(テープ、パップ、ゲル、軟膏等)
両学会では、今回「NSAIDsの添付文書改訂のポイント」を整理、妊婦に投与する際に最大限の留意を行うよう会員医師等に要請しています。
まず、NSAIDsは「治療上の有益性が危険性を上回る場合に投与できる」点は従前から変わりありません。そのうえで、「NSAIDsの使用によって、胎児の腎機能障害および尿量減少、それに伴う羊水過少症が起きた」という報告を踏まえて、▼解熱鎮痛薬として投与する場合には必要最小限にとどめる▼適宜、羊水量を確認する―ことが新たに添付文書に記載されたものです。
この点、米国FDAでは「48時間を超えて投与した場合を目安に超音波検査の実施を考慮する」旨を求めています。しかし、我が国では「妊婦に対して、医療従事者の管理下で定期的に健診が行われている」ことを踏まえ、「継続投与48時間」等の具体的な期間は明記されていません(超音波検査の実施が義務とならない範囲での記載となっている)。ただし、上述の点を踏まえて、両学会は「今後、NSAIDsを使用する場合には適宜羊水量を確認する」ことを求めています。
また、「低用量アスピリンや局所製剤のNSAIDsに分類される薬剤」についても、その使用によって「胎児の腎機能障害および尿量減少、それに伴う羊水過少症」が生じる可能性が添付文書に記載されました。
両学会では「これら薬剤においても、治療上の有益性が危険性を上回る場合に投与できる」点に変わりはない旨を再確認しました。
上記の点について、産婦人科医などから妊産婦や家族への丁寧な情報提供にも期待が集まります。また、昨今「定期的な妊婦健診を受けない」妊婦が少なくないことが問題視されており、自治体によるフォロー(情報提供や妊婦健診の受診勧奨)も重要です。
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