新生児の頭蓋内出血等予防のためビタミンK投与は「3か月法」採用を、便色カード活用の重要性再確認を―産科婦人科学会・産婦人科医会
2021.3.16.(火)
新生児の頭蓋内出血等予防のためビタミンK投与が重要であるが、「3回法」では発症例があることから、「3か月法」の採用を検討することが望まれる―。
肝胆道の基礎疾患がある場合、ビタミンK欠乏症を発症しやすく、早期に肝胆道計疾患の発見する必要がある。このため母子手帳の「便色カード」活用の重要性を再確認し、母親にも指導を行ってほしい―。
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は3月15日に、「新生児の出血性疾患予防のためのビタミンK投与法について」を会員医師等に向けて発し、こうした点に注意を呼びかけました(日本産科婦人科学会のサイトはこちら)。
新生児へのビタミンK投与、生後3香月まで毎週投与する「3か月法」の採用検討を
新生児で「ビタミンK欠乏性の出血性疾患」を発症しやすいことから、ビタミンK2シロップの投与が行われています。
投与方法については、産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 では「▼哺乳確立時▼退院時▼1か月健診時―の3回内服させる方法」(3回法)が推奨されていますが、施設によっては「生後3か月まで1週間毎に13回内服させる方法」(3か月法)を採用しているところもあります。日本小児科学会の調査(2018年)では、55.6%の医療機関で「3回法」を採用、22.3%の医療機関で「3か月法」が採用されています。
今般、日本小児科学会の調査報告からは、次のように「3か月法」のほうが「肝胆道系の基礎疾患がある児のビタミンK欠乏性出血症の発症を抑制する効果が高い」可能性が示唆されました。
▽ビタミンK欠乏が原因と思われる頭蓋内出血を発症した13例のうち、11例で胆道閉鎖症などの肝胆道系の基礎疾患が認められ、この11例では「3回法」の予防投与が行われていた
▽予防法として「3か月法」を採用した症例では、頭蓋内出血を発症した症例はない
十分なエビデンスとは言えませんが、このデータを踏まえて両学会では、「ビタミンK欠乏性出血性疾患の発症予防のため、『3か月法』の利用を検討する必要性ある」と指摘。▼基礎疾患の有無にかかわらず「3か月法」で頭蓋内出血が予防できるのか▼基礎疾患のない児では「3回法」でも良いのか▼「3か月法」では ビタミンK過剰になる可能性はないのか―などの追加的な調査が必要です。
併せて、次のような考え方を会員医師等に提示しました。
▽ビタミンK欠乏症が原因と考えられる出血性疾患を予防するために新生児へのビタミン K 投与は必要であり、投与法としては「3回法」と「3か月法」がある。これまでに「3か月法」を用いて問題となる副作用は報告されていないこと、「3回法を用いたにも関わらず 11 例の頭蓋内出血の発症例がある」ことを踏まえ、「より確実な予防法として『3か月法』の採用を検討する」ことが望まれる
▽胆道閉鎖症などの肝胆道系の基礎疾患がある場合にはビタミンK吸収障害による「ビタミンK欠乏症」を発症しやすいため、母子手帳の「便色カード」を用いて肝胆道系疾患を早期に発見することの重要性を再確認し、退院前の母親にこのことを十分に指導することが重要である(便の色が薄い、あるいは薄くなった場合には、胆道閉鎖症などの可能性があり、速やかに小児科医等の受診を受ける必要がある。スマートフォンの画面や印刷状況によっては色彩が異なるため、必ず規定に沿った「便色カード」で便の色を確認することが必要です)
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