2022年度診療報酬改定、入院基本料の大幅増、食事療養費の引き上げ、地域医療体制確保加算の要件緩和など求める―日病協
2021.4.19.(月)
日本病院団体協議会(日病協)が4月16日に、厚生労働省保険局の濵谷浩樹局長に宛てて2022年度の次期診療報酬改定に向けた要望書(第1弾)を提出しました(同局医療課の井内努課長が代理受領)(日本病院会のサイトはこちら)。
2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論が中央社会保険医療協議会で始まっています。日本病院会、全日本病院協会、日本リハビリテーション病院・施設協会、日本私立医科大学協会など15の病院団体で構成される日病協では、中医協論議に合わせて要望項目を提示しています。
今回の要望は「総論的な第1弾」で、中医協論議が本格化する秋に「個別具体的な第2弾」が示される見込みです。第1弾の要望項目は、次の6つです。
(1)適切な入院基本料の設定
(2)働き方改革、多職種協働、タスクシェア・タスクシフトを進めるための診療報酬上の評価、基準緩和
(3)地域における医療機能の分化・連携を推進するための診療報酬上の評価
(4)医療におけるICTを推進するための診療報酬上の評価
(5)救急医療の充実と評価
(6)食事療養費の見直し
このうち(1)は、▼現下の新型コロナウイルス感染症への対応▼2024年度施行の医師働き方改革▼2025年度をゴールに据えた地域医療構想の実現—を見据えて、病院経営のベースとなる「入院基本料」の大幅増点を求めるものです。
また、働き方改革に関しては、あわせて(2)で▼多職種チームによる入院医療提供の重要性に鑑みた各種点数・配置基準の設定▼救急救命士や特定行為研修を修了した看護師へのタスクシフトを進める診療報酬▼常勤・専従要件の緩和—などを求めています。
また(3)では「入院患者が他医療機関を受診する場合の点数減額」措置について、医療機関の機能分化が進む中で「他医療機関受診の必要性が増している」点に鑑みた「根本的な見直し」を強く求めるとともに、「特定入院料算定病棟・医療療養病棟において、高額薬剤の出来高請求を可能にすべき」と要望しています。
一方、(4)の医療ICTについては、現下の新型コロナウイルス感染症対応の中で「遅れている」状況が浮き彫りとなっています。▼電子カルテ、地域医療ネットワークの導入▼オンライン資格確認等システムの導入―などの「ICT化コスト」について、診療報酬で賄えるようにすべきと訴えました。
あわせて「互換性のある電子カルテシステムの基準」提示も求めています。電子カルテをはじめとする保健医療情報システムは、相当数の医療機関に導入され、例えば「医師が診療する過程で、検査などのオーダーを出す」「過去の診療・検査データを閲覧・分析して最適な治療方針を決定する」「医事会計システムと連動し、迅速な会計処理を可能とする」など、非常に重要な役割を果たしています。
ただし保健医療情報システムは、ベンダー(いわば電子カルテの開発メーカー)がそれぞれ独自に開発し、独自の進化を遂げてしまっており、異なるベンダーのシステム間ではデータのやり取りが非常に困難な状況です。このため、「個々の施設内で利活用する際には、極めて有用である」ものの、「施設間連携、地域連携をする際、異なるベンダーのシステムが混在すると、データ連携が極めて難しい」という問題が生じています。
また、A社の電子カルテを導入した病院が、数年経過後に「使い勝手が良くない。良い評判を聞くB社の電子カルテに買い替えよう」と考えたとしても、これまでの患者情報(A社の電子カルテデータ)をB社の電子カルテと連結することができず、これが「買い替えを阻害している」「ベンダーによる顧客(医療機関)の囲い込みにつながっている」との指摘もあります。
このため、医療現場からは「電子カルテの標準化」を求める声が多数出されており、厚生労働省の「健康・医療・介護情報利活用検討会」や、その下部組織で「標準化に向けた議論」が鋭意進められています。今後の動きを注視する必要があります。
また(5)は、2020年度の前回改定で創設された【地域医療体制確保加算】(年間の救急搬送件数が2000件以上で、スタッフの働き方改革・負担軽減に積極的に取り組み医療機関を評価する加算、全入院患者について入院初日に520点を算定可能)に関して、算定要件を緩和するよう求めています。日病協では「地域の救急医療体制を従事するため」と指摘しています。
なお、2020年度改定でも病院団体が強く要望していた「食事療養費の見直し」について、改めての要望が行われています。食材費・人件費の高騰により「業務委託が困難になってきている」「自前での食事提供も困難である」という状況が続いており、「療養の1要素である食事について、療養費の適切な見直し(引き上げ)が必要である」と日病協は訴えています。
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