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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

人工乳房による悪性リンパ腫が国内でも散発、生涯にわたり「定期検診と自己検診」継続を―厚労省・関係学会

2022.2.22.(火)

乳がんによる乳房摘出後の「乳房再建」、「豊胸手術」などの際に用いるゲル充填人工乳房(人工乳房、乳房インプラント)に起因する未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL:乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)について、我が国で3例目・4例目が発生した―。

人工乳房による乳房再建希望者や、すでに乳房再建を受けた患者に対し「早期発見・早期治療が重要であり、生涯にわたり医療機関の定期検診を受診するとともに、自己検診を継続する」ことの重要性などを十分に情報提供してほしい―。

厚生労働省は2月18日に通知「ゲル充填人工乳房及び皮膚拡張器植込み患者等における乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発生及び植込み患者等に対する情報提供について(周知依頼)」を示し、自治体や医療機関等が乳がん患者等に幅広くこうした情報提供を行うことを求めています(PMDA(医薬品医療機器総合機構)のサイトはこちら)。

無症状者の「予防的インプラント除去」は現時点では不要、定期検診・自己検診が重要

例えば乳がんで乳房を全摘した患者に対する乳房再建術などでゲル充填人工乳房を用いることがあります。この点、人工乳房の使用には、次のような有害事象が発生する可能性のあることがかねてより知られています。

【急性期の有害事象】
▼血腫▼漿液腫/体液貯留▼乳房の疼痛▼その他の疼痛▼炎症(発赤、腫脹)▼感染▼組織/皮膚の壊死▼インプラント露出―

【遠隔期の有害事象】
▼血腫▼漿液腫/体液貯留▼乳房の疼痛▼その他の疼痛▼炎症(発赤、腫脹)▼感染▼組織/皮膚の壊死▼乳房皮膚知覚異常▼被膜拘縮▼肥厚性瘢痕▼しわ・凹み▼インプラント露出▼インプラント位置異常▼再手術▼インプラント交換▼インプラント摘出―

また人工乳房との因果関係は解明されていないものの、▼乳がん▼乳がん以外のがん▼未分化大細胞型リンパ腫(ALCL:Anaplastic large cell lymphoma)▼結合組織疾患/自己免疫疾患▼神経系疾患▼自殺―の各疾患等と「将来的には関連があると思われるリスクの可能性がある」ことが示されており、さらに海外では、▼乳がん▼脳腫瘍▼呼吸器がん▼肺がん▼子宮頸がん▼外陰がん▼胃がん▼白血病▼リンパ腫▼視覚、知覚、筋力、歩行、平衡感覚、思考力または記憶力困難などの神経系の症状▼多発性硬化症などの疾患―が報告されています。

今般、「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」「日本形成外科学会」「日本乳癌学会」「日本美容外科学会(JSAPS)」の4学会から、我が国において3例目・4例目となる「乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発生」について公表がなされました。いずれも「未承認のゲル充填人工乳房を植え込んだ患者」です(1例目は2019年11月に報告され、2例目は昨年(2021年)7月に「薬事承認を受けたゲル充填人工乳房を植え込んだ患者」で報告)。

▼3例⽬:術後8年
▼4例⽬:術後11年

2つの事例は、いずれも「当時、薬事承認を受けてない人工乳房を使用しており、定期検診を受け、自己検診において『しこりの自覚』から医療機関を受診し、精査の結果、確定診断となった」ものです。

両症例ともに、人工乳房(乳房インプラント)および被膜・腫瘤を摘出し、「⾎液内科的治療」を実施(1例は予定)しています。



4学会および厚労省は、事態を見守るとともに、▼BIA―ALCL については定期診察・⾃⼰検診が非常に重要である▼担当医は、ガイドラインに準拠する乳房インプラントの登録と経過観察、疑い症例があった場合の相談を徹底する―よう強調しています。とりわけ「ゲル充填人工乳房による乳房再建を希望されている方」「ゲル充填人工乳房による乳房再建を受けた方」へ、正確な情報提供が重要であるとし、自治体や医療機関等に「さまざまなツールを使った周知」を求めています。

4学会では、(1)乳房インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房手術を希望されている方向けの情報提供(2)出荷停止となった乳房インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房手術を受けた方向けの情報提供(3)乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA―ALCL)についてよくある質問―を作成し、最新知見を踏まえて随時改訂しています(PMDAのサイトはこちら)。

このうち(1)では、人工乳房(乳房インプラント)にはBIA-ALCLリスクが「高い製品」と「低いと思われる製品」とあり、前者ではBIA-ALCL発症数が相当数あり(世界各国で620例(2200-3300人に1人)、我が国で4例)、出荷停止になっていることを説明。あわせてBIA-ALCLが「稀な疾患」ではあるものの、「早期発見」が極めて重要であり「生涯の自己検診と医療機関での定期検診の継続が必要である」と強調しています。

また(2)は出荷停止となった製品が埋め込まれている患者に向けて、「BIA-ALCLを発症しても、多くの場合はインプラントと周囲組織を切除することで治癒する」が、「発見が遅れた場合や切除しきれない場合には化学療法や分子標的薬、放射線治療等の追加治療が必要となり、死亡例も報告されている」ことを説明。▼無症状者について「予防的なインプラント摘出」の必要はない▼腫ただしれやしこりを自身でチェックするとともに、医療機関での定期受診を行う(生涯にわたり行う)―旨をここでも強調しました。

さらに(3)では、▼BIA-ALCLが疑われる場合、「一般的には、乳房インプラント挿入から一定期間(平均7-9年)経過後に乳房が大きくなる」「乳房や脇にしこりを触知する」「乳房の変形や潰瘍形成がみられる」「痛みを自覚する」などの症状がみられる▼無症状者では「予防的なインプラント除去」は必要ない(推奨している国も現時点でない)▼医療機関の定期検診、自己触診等が重要である―ことなどを説明しています。



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