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2023年4月からの医師臨床研修、都市部6都府県「以外」での研修が59.6%、大学病院「以外」での研修が63.5%に増加―厚労省

2022.10.28.（金）

来年度（2023年度）からの医師臨床研修に向けた今年度（2022年度）のマッチング結果を見ると、東京など6都府県を除く道県での内定割合が59.6%、大学病院以外の臨床研修病院での内定割合は63.5％となった。「地方での研修・大学病院以外での研修」がますます浸透してきている―。

このような状況が、厚生労働省が10月27日に公表した、今年度（2022年度）の「医師臨床研修マッチング結果」から明らかになりました（厚労省のサイトはこちら（マッチング結果の概要）とこちら（マッチング協議会による結果発表資料）とこちら（マッチング協議会による大学別状況）とこちら（マッチング協議会によるプログラム別マッチング結果））。

1 2022年度（2023年4月からの研修開始分）の臨床研修内定者は8995名
2 地方での研修医採用は令和に入ってから徐々に増加傾向
3 大学病院での研修が36.5％、臨床研修病院での研修が63.5％で、大学病院離れ進む

2022年度（2023年4月からの研修開始分）の臨床研修内定者は8995名

2004年度から新たな臨床研修医制度がスタートし、「臨床に携わる医師は、2年間以上の臨床研修を受ける」ことが必修化されています【新臨床研修制度】。例えば、「私は◯◯科の医院を継ぐので、他の診療科のことは知らなくて良い。その道の専門医師がそれぞれ対応すればよい」と行動することは許されず、将来、どの分野を専門とするかに関わらず「多くの診療科について基本的な診療能力を身につける」ことが求められているのです。

新臨床研修制度は、▼研修医が研修先病院の希望を出し、公的なマッチング機構で研修先病院を決める▼基本的な診療能力を身につけるために、複数の診療科での研修を必須とする—ことなどが、旧来の仕組みと大きく異なる点です。もっとも、医療現場の実態とマッチさせるために制度の見直し（都道府県別の募集定員に上限を設ける、小児科、産婦人科、精神科に重点を置いたプログラムを認めるなど）が逐次、行われてきています。

今年度（2022年度）には、「来年（2023年）4月から臨床研修をスタートする医学生」等のマッチングが行われ、募集定員1万844人（前年度から60人減）に対し、採用内定者8995人（同37人増）。内定率（内定者÷登録者）は90.6％（同1.14ポイント低下）となりました。

地方での研修医採用は令和に入ってから徐々に増加傾向

内定状況を都道府県別に見ると、大都市を抱える東京都・神奈川県・愛知県・京都府・大阪府・福岡県の6都府県における内定者数が3638人で全体の40.4％（前年度に比べて19人減・0.4ポイント低下）、それ以外の41道県における内定者数が5357人・59.6％（同56人増・0.4ポイント上昇）となりました。

「6都府県以外で臨床研修を受ける医師」の割合は、令和に入ってから再び「徐々に減少」してきており、地方での研修を希望する学生が増加してきています。

都市部・地方部比率（2022年度臨床研修マッチング結果1　221027）

このように臨床研修においては、大都市よりも地方を選択する医学生が多くなっています。その背景には、「都道府県別の募集定員上限」設定があると考えられます。従前「臨床研修医が大都市に集中している」との批判があり、都道府県別の定員上限（シーリング）を設け「地方へ臨床研修医を分散させる」という流れが生まれました。この定員上限は、大都市においては徐々に厳しくなっていくため、臨床研修医は今後さらに地方へ移動していくことになると思われます。

なお臨床研修終了後の新専門医研修では、再び「東京都などの大都市に医師が集中した」ことから、2020年度から、「都道府県別・診療科別」の必要医師数を踏まえた新たなシーリングが設定されていま。

これらが「医師偏在の解消」にどれだけの効果・影響を与えるのか、中長期的に見ていく必要がありますが、2016年と2020年を比較すると「医師偏在が助長されてしまっている」状況も明らかにされています（関連記事はこちら）。今後の動向を注視していく必要があるでしょう。

なお、前年度に比べて内定者数が増えた上位5県は、▼香川県（2021年度：54人 → 2022年度：71人、31.5％増加）▼愛媛県（2021年度：70人 → 2022年度：86人、22.9％増加）▼鳥取県（2021年度：40人 → 2022年度：46人、15.0％増加）▼岩手県（2021年度：59人 → 2022年度：67人、13.6％増加）▼山梨県（2021年度：61人 → 2022年度：67人、9.8％増加）—などです。厚労省の分析によれば、「臨床研修を受けた都道府県で、研修修了後も勤務する医師が多い」ことが分かっており、こうした地方での研修医が地元に定着していくよう、魅力的なキャリアパス構築などが期待されます。

大学病院での研修が36.5％、臨床研修病院での研修が63.5％で、大学病院離れ進む

新臨床研修制度の実施前（旧臨床研修制度）には、卒業した医学部の附属病院で研修を受ける医師が圧倒的多数（大学病院での研修が7割超）を占めていました。

しかし、新制度では、大学病院以外の病院が「魅力ある研修プログラム」「研修医の処遇充実」などを打ち出し、「大学病院以外での研修」を希望する医学生が増加しています。「大学病院で研修を受ける医師」と「臨床研修病院（大学病院以外の病院）で研修を受ける医師」の比率は、新制度がスタートした2004年度には55.8対44.2になり、翌05年度には49.2対50.8と、臨床研修病院で研修を受ける医師のほうが多くなりました。

その後、2011年度からは臨床研修病院で研修を受ける医師の割合がさらに増加傾向を強まり、今年度（2023年度）は大学病院：36.5％（前年度に比べて0.2ポイント低下）、臨床研修病院63.5％（同0.2ポイント上昇）となりました。「臨床研修病院での研修を受ける医師」の割合がますます高まっています。