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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

血液検体を用いた遺伝子検査(リキッドバイオプシー)、大腸がんの「再発リスク」「抗がん剤治療の要否」評価に有用―国がん・九大

2023.1.26.(木)

大腸がん患者の「術後4週時点における血液」について遺伝子解析を行い、「血中循環腫瘍 DNA」(血液中に残るがん由来のDNA)が陽性である場合には、陰性である場合に比べて再発するリスクが高い—。

もっとも、陽性患者であっても術後補助化学療法(抗がん剤治療)を行うことで再発リスクを低下させられる—。

国立がん研究センターと九州大学が1月24日に、こうした研究結果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。患者への身体的負担の小さい「血液を検体とする遺伝子異常検出検査」(リキッドバイオプシー)によって、「個々の患者ごとの再発リスクに応じた抗がん剤治療」」(個別化医療)の実現につながると期待できます。

血液検査でがんの再発リスクを評価し、抗がん剤治療の要否判断の補助に

述べるまでもありませんが、多くの固形がん治療は「切って終わり」ではありません。血液・リンパ液を介して全身にがん細胞が回っている、微細な病変が残存しているなどにより、再発等する可能性もあります。

日本人において2番目に多い大腸がんにおいても、こうした「再発リスク」を考慮して術後補助化学療法を行うケースも少なくありません。しかし、患者により抗がん剤の効果や副作用に違いがあり、特に「末梢神経障害(手足のしびれ)が長期間にわたり後遺症として残る」ことが問題視され、「抗がん剤が必要な患者を抽出する」などの個別化医療の実現に期待が集まっています。

そうした中で国立がん研究センター東病院の吉野孝之副院長、九州大学病院消化管外科の沖英次准教授らの研究グループは、「外科治療が行われる大腸がん患者」を対象とした「血中循環腫瘍DNAを検査する技術(リキッドバイオプシー)を用いた、術前・術後の再発リスクをモニタリングするレジストリ研究」(GALAXY試験)を実施し、その有用性を確認しました。

具体的には、2020年6月から2021年4月に登録された1039名の大腸がん患者について、▼生検・手術で採取された腫瘍組織を用いて遺伝子解析を行い「患者ごとのオリジナルの遺伝子パネル」を作成する→▼術前、および術後4週時点から定期的に血液を採取し、患者ごとのオリジナル遺伝子パネル検査を用いて「血液中のがん遺伝子異常の有無」を調査する—研究を実施。そこから、例えば次のような結果が得られています。

▽術後4週時点で血中循環腫瘍DNA陽性である場合、陰性と比較して再発リスクが高い
→術後18か月時点での無病生存割合を見ると、血中循環腫瘍DNA陰性では90.5%であるのに対し、陽性患者では38.4%にとどまる

血中循環腫瘍「陽性」の場合、「陰性」に比べて生存割合が低くなる(リキッドバイオプシーによる大腸がん再発リスク評価1 230124)



▽ステージ2・3で術後4週時点で血中循環腫瘍DNA陽性について、術後補助化学療法を行うことで再発リスクが低下する
→術後18か月時点での無病生存割合を見ると、術後補助化学療法を受けたケースでは 61.6%であるのに対し、術後補助化学療法を受けないケースでは22.0%にとどまる

血中循環腫瘍「陽性」の場合、術後補助化学療法により生存割合が高まる(リキッドバイオプシーによる大腸がん再発リスク評価2 230124)



▽術後4週時点で血中循環腫瘍DNA陰性である場合、術後補助化学療法の効果は明らかでない
→術後18か月時点での無病生存割合を見ると、術後補助化学療法を受けたケースでは 94.9%、術後補助化学療法を受けないケースでは91.5%で、両者に統計的有意差は見られない

血中循環腫瘍「陰性」の場合、術後補助化学療法の効果は本研究からは判定できなかった(リキッドバイオプシーによる大腸がん再発リスク評価3 230124)



こうした結果を踏まえて研究チームでは、次の2つの可能性があると指摘しています。

▼「術後4週時点における血中循環腫瘍 DNAの陽性/陰性」と「再発リスク」とが大きく関連している

▼術後4週時点で血中循環腫瘍DNA陽性の患者では、術後補助化学療法を行うことで再発 リスクを低下させられる



大腸がん症例の治療にあたり「術前・術後に血中循環腫瘍DNAを測定する」ことで、再発リスクに応じたより適切な治療法の選択が行えることが期待されます(術後補助化学療法の個別化)。

もっとも、「術後4週時点で血中循環腫瘍DNA陰性である」場合には、術後補助化学療法が必要なのか不要なのかは、本研究結果のみからは明らかになっていません。術後後補助化学療法を受けた患者と受けなかった患者(実施するか否かは担当医が判断している)とで、「血中循環腫瘍DNA以外の臨床病理学的な背景」ためです。

現在、術後後補助化学療法を受けた患者・受けなかった患者で本研究結果を検証するために、「血中循環腫瘍DNA陽性患者を対象としたランダム化第3相試験」「血中循環腫瘍DNA陰性患者を対象としたランダム化第3相試験」が進んでおり、研究チームはこの結果にも注目しており、今後のさらなる研究進展を期待したいところです。



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