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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

2023年度DPC機能評価係数II内訳を公表、自院の係数と他院の状況を比較し、自院の取り組みの検証が重要―入院・外来医療分科会(1)

2023.4.24.(月)

4月24日に診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)が開催され、2023年度のDPC機能評価係数IIの内訳が報告されました。

DPC病院におかれては、「自院の係数」と「分布状況」を比較し、「自院の取り組み状況は他院と比べてどうなのか?」「今後、どのような戦略を立てて取り組んでいくべきか」を検討することが重要です。

なお、入院・外来医療分科会では「DPC特別調査の結果概要」も示され、機能評価係数IIの各係数について「上位50病院と下位50病院とで取り組みがどう異なるのか」、いわゆるアウトライヤー病院について「どのような取り組みが行われているのか」などが明らかになっています。こちらは別稿で詳しく報じます。

DPCには様々な病院があり、機能評価係数IIで様々な角度から評価

DPC制度では、全病院に共通する「DPC点数表に基づく点数」(日当点)に、「医療機関ごとの係数」(医療機関別係数)と「入院日数」を乗じて、包括範囲の収益を計算します(DPC点数×医療機関別係数×在院日数、ここに手術などの出来高点数が上乗せされる)。

医療機関別係数は、(1)基礎係数(2)機能評価係数I(3)機能評価係数II(4)激変緩和係数(診療報酬改定年度のみ、2023年度は全病院で0.0)—の和(足し算)で計算されます。

このうち(3)の機能評価係数IIは、いわば「各DPC病院の取り組み、努力を、さまざまな角度から評価する」もので、前々年の10月から前年の9月までの診療実績などをもとに、毎年度見直されます(2023年度の係数は、2021年10月から22年9月までの診療実績等がベースになる)。

2023年度の医療機関別係数はすでに告示されており(関連記事はこちら)、今般「機能評価係数IIの内訳、分布」が明らかにされました。

DPCの機能評価係数IIは、2018年度から(A)保険診療係数(B)効率性係数(C)複雑性係数(D)カバー率係数(E)救急医療係数(F)地域医療係数―の6項目となっています(これらの和が機能評価係数IIとなる)。

機能評価係数IIの概要1(2022年度診療報酬改定)

機能評価係数IIの概要2(2022年度診療報酬改定)

機能評価係数IIの概要3(2022年度診療報酬改定)

機能評価係数IIの概要4(2022年度診療報酬改定)



(A)の保険診療係数は、提出データの質や医療の透明化、保険診療の質的向上など「医療の質的な向上を目指す取り組み」を評価するものです。「部位不明・詳細不明コード」の使用割合が多かったり(10%以上)、未コード化傷病名の割合が多かったり(2%以上)する場合などには減算が行われ、逆に自院のホームページで自院の診療実績等を公表した場合には加算が行われます。



ほとんどの病院は、「減算なし」(つまりデータの精度が十分である)+「加算あり」(つまり診療実績等を公表している)となっていますが、DPC標準群(旧III群)病院の中には▼加算がない、つまり「診療実績などを公表していない」病院▼減算、つまり「データの精度が不十分」な病院—もあります。

保険診療係数の分布(入院・外来医療分科会(1)5 230424)



DPC制度では、点数や係数を各病院から提出されるデータをもとに設定することから、精度の不十分なデータがあれば、全DPC病院に悪影響があります。すべての病院が、データの精度向上にさらに努める必要があります。

また、診療実績などの公表は、地域住民や近隣クリニック・中小病院が「病院を選択する」際に極めて重要な情報となり、データを公表していない病院は「患者や地域医療機関などから選ばれなくなる」恐れがあります。積極的に診療実績などを公表することが求められます。



また(B)の効率性係数は、在院日数短縮の努力を評価するもので、最低は0.00000、最高は0.03935で、「0.014以上0.016未満」に多くの病院が位置しています。

効率性係数の分布(入院・外来医療分科会(1)6 230424)



効率性係数は、「大規模で診療科の多い総合病院では低く、小規模な専門病院では高く」なる傾向があります。多くの診療科を抱えれば、入院期間が長くなりがちな傷病(例えば白血病など)に罹患する患者の受け入れも多くなるためです。この点、「総合病院が不利ではないか」とも思われますが、(D)のカバー率指数などは「多くの診療を保有する病院」で有利になっており、「機能評価係数II全体で、病院ごとの特性を踏まえた評価」を行う仕組みとなっています。

なお、病院によって疾患構成に大きな違いがあることから、効率性係数・指数を計算する際には「患者構成が全DPC/PDPS対象病院と同じ」と仮定する「補正」が行われます。このため闇雲に「在院日数の短縮に取り組め」と動くことは「労多くして功少なし」という状況になりかねず、係数・指数のロジックを踏まえた対策をとることが重要となります。

もっとも「高齢化に伴って、要介護高齢者の急性期入院(DPC病棟への入院)が増加する中で、効率性係数・指数の計算方法が時代に合わなくなってきている可能性がある」との議論が下部組織(DPC/PDPS等作業グループ)で行われたことが牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長、日本病院会常任理事)から明らかにされました。「DPC特別調査の結果概要」と合わせて別稿で詳しく報じます。



(C)の複雑性係数は、1入院当たり医療資源投入の観点から見た患者構成を評価するもので、誤解を恐れずに言えば「DPC点数の高い傷病」患者を積極的に受け入れる病院が高く評価されます。「DPC点数の高い傷病」には、複雑な検査の実施や高額な医薬品投与が必要となる「重篤な疾患」(一般的に医療資源投入量が多くなる)が該当し、「難しい傷病の患者を多く受け入れている病院」が高く評価されていると言えるでしょう。

次のような分布となっており、大学病院本院群では「0.014以上0.016未満」に、特定病院群・標準病院群では「0.016以上0.018未満」に多くの病院が位置しています。

▽大学病院本院群(旧I群):最低0.00000-最高0.06462
▽DPC特定病院群(旧II群):最低0.00000-最高0.03787
▽DPC標準病院群(旧III群):最低0.00000-最高0.04244

複雑性係数の分布(入院・外来医療分科会(1)7 230424)



(D)のカバー率係数は「様々な疾患に対応できる総合的な体制」を評価するもので、診療科の多い大規模総合病院で高くなる傾向があり、次のような分布となっています。

▽大学病院本院群(旧I群):最低0.01081-最高0.02982
▽DPC特定病院群(旧II群):最低0.00493-最高0.03612
▽DPC標準病院群(旧III群):最低0.00093-最高0.05705

カバー率係数の分布(入院・外来医療分科会(1)8 230424)



総合病院の多い大学病院本院群・特定病院群では「0.016以上0.018未満」に多くの病院が位置していますが、単科病院や小規模病院も含まれる標準病院群では「0.004以上0.006未満」に多くの病院が分布しています。上述のとおり、単科病院などは「カバー率は低くなる」ものの、「効率性を高めやすい」面があり、「機能評価係数II全体で、さまざまな角度からDPC病院を評価している」ことをここでも確認できます。



また(E)の救急医療係数は、救急医療(緊急入院)患者の治療に要する資源投入量の乖離を評価するものです。

DPCの点数は、診断群分類ごとに「医療資源投入量の平均値」として設定され、そこには多くの検査や薬剤などが包括評価されます。

しかし、救急患者では、▼「どのような傷病を抱えているのか」が明らかでないことから、入院初期に数多くの検査をしなければならない▼救命処置などのために、入院初期に通常よりも多くの薬剤投与・処置実施などがなされる—必要があります。

このため、「平均値であるDPC点数」と、「救急患者に実際に投入した医療資源投入量」との間には、極めて大きな「乖離」(実際の医療資源投入量>DPC点数)が生じます。これを放置すれば、病院が「救急患者の受け入れ」を躊躇することにつながってしまうため、救急患者の受け入れを機能評価係数IIとして評価しているのです。

最低は0.00000、最高は0.06437で、「0.016以上0.020未満」に多くの病院が位置しています。

救急医療係数の分布(入院・外来医療分科会(1)9 230424)



また(F)の地域医療係数は、▼医療計画の「5疾病5事業等」における急性期入院医療の評価【体制評価指数】▼地域の患者をどれだけ診ているかの評価【定量評価指数】―を組み合わせるものです。

5疾病5事業等を積極的に担い、地域住民・患者に支持されている病院とは、つまり「地域医療への貢献度合いが高い」と考えることができ、これを係数として評価していると言えます。

体制評価指数については、大学病院本院群・特定病院群で「0.009以上0.010未満」に多くが、標準病院群では「0.005以上0.006未満」に多くが分布しています。5疾病5事業とは、がん・脳卒中・心筋梗塞などの心血管疾患・糖尿病・精神疾患の5疾病、救急医療・災害時における医療・へき地の医療・周産期医療・小児医療(小児救急医療を含む)の5事業を意味し、地域の基幹病院がその役割を担うケースが多くなります。したがって、大学病院本院群・特定病院群で係数・指数が高くなりやすいと言えるでしょう。

体制評価係数の分布(入院・外来医療分科会(1)10 230424)



また、定量評価指数は、「小児(15歳未満)」「15歳以上」の双方とも、いずれの病院群でも「0.000以上0.004未満」に多くの病院が位置しています。しかし、標準病院群においては、「0.000以上0.004未満」への集中度が「小児(15歳未満)」のほうでより高くなっています。DPC標準病院群においても「小児患者の受け入れ」をより積極的に行い、係数向上に努めていくことが期待されます。

定量評価係数の分布(入院・外来医療分科会(1)11 230424)



なお、体制評価・定量評価の双方を合わせた地域医療係数は次のように分布しています。

▽大学病院本院群(旧I群):最低0.00737-最高0.03561
▽DPC特定病院群(旧II群):最低0.00377-最高0.07538
▽DPC標準病院群(旧III群):最低0.00060-最高0.06744

地域医療係数の分布(入院・外来医療分科会(1)12 230424)



冒頭に述べたように、機能評価係数IIはDPC点数に乗じられるため、機能評価係数IIを向上させることが、包括部分の収益を上げるために極めて重要となります。機能評価係数IIは「すべて相対評価」されます。つまり自院(A病院)が「ものすごく努力した」と考えても、他院が、それを上回る努力をすれば「A病院はそれほど努力していない」と判断されてしまいます。このため「他院の状況を確認し、それをもとに自院の取り組みを検証し、戦略的な取り組みを行う」ことがDPC制度において必要不可欠となります。Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは、この「他院の状況を確認する」ツール(有償の病院ダッシュボードχと、無償の病院ダッシュボードχ【ZERO】)を準備しています。是非、ご活用ください(GHCサイトはこちら)。



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2023年度のDPC機能評価係数IIトップ、大学病院群で富山大病院、特定群で帯広厚生病院、標準群で北見赤十字病院