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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

未曽有の少子高齢化に備え「かかりつけ医と医療保険者の共同による良質なサービス提供」や「効率的な医療体制」実現を—健保連

2023.5.23.(火)

2040年にかけて、医療・介護ニーズが極めて高い「85歳以上高齢者」が急増する一方で、「支え手」とされる現役世代人口が急速に減少していくため、医療保険制度・医療提供体制が極めて脆弱になっていく—。

こうした中では「医療費の抑制」「ICT技術を駆使した効率的・効果的な医療提供体制の確保」「成果に応じた報酬体系への変革」「かかりつけ医と医療保険者の共同による良質なサービス提供」「健保組合の加入者サービスの充実と、体制の強化」などを強力に推し進めていく必要がある—。

健康保険組合連合会(健保連)が5月17日に「医療保険制度の将来構想の検討のための調査研究I(制度の変遷と将来構想の検討)」を公表し、こうした提言を行いました(健保連のサイトはこちらこちら(概要))。

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健康保険組合(健保組合)は、主に大企業の会社員とその家族が加入する公的医療保険です。健保組合の連合組織である健保連は、医療政策の関する研究・提言を積極的に行っており、今般、今後の社会情勢の変化を見据え「医療保険制度、健康保険組合の在り方」について有識者による検討結果を公表しました。

ついに昨年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長くなります。とりわけ「より医療・介護ニーズの高い85歳以上人口」が急増していく(2040年度には約4割となる)ため、今後、医療費が急速に膨張していきます。

その一方で、支え手となる現役世代人口は、2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。

「減少する一方の支え手」で、「増加する一方の高齢者・医療費」を支えなければならず、医療保険の制度基盤が極めて脆弱になり、今後も厳しさを増してくと考えられるのです。

また、「高齢者(支えられる側)の増加、若年者(支える側)の減少」は「医療提供体制を脆くしていく」ことにも直結します。

こうした中で健保連の有識者検討委員会は(1) 医療ニーズの変化、医療費の増加にどのように対応するか(2)多様な働き方の包摂と制度の持続性をどう確保するか(3)その時、健保組合に求められる役割はなにか—を検討。

まず(1)の「医療ニーズの変化、医療費の増加への対応」については、▼医療費の伸びを抑制する対策が不可欠である▼必要な時に必要な医療・介護が受けられるよう、医療・介護DXやAI等の技術を活用した一層の効率化と質の向上を図りつつ、適切な受診を推進する必要がある—とし、次のような制度改革を提唱しています。

【高齢化を踏まえた、医療・介護提供体制、高齢者医療・介護保険制度の一体的運営】
▽ プライマリ・ケア(かかりつけ医)機能を起点として、医療・介護のシームレスな連携とサービス提供(地域包括ケアシステムの充実・発展、質の向上)を実現する
▽介護保険給付について「75歳以上の要介護者」へ重点化する(例えば第2号被保険者の範囲(現在40-64歳)を段階的に74歳へ引き上げ、各種サービスの地域支援事業への移行等を図る)

【かかりつけ医機能の充実】
▽かかりつけ医を「緩やかなゲートキーパー」にした病院、専門医、在宅医療、介護などの地域連携グループ(例えば地域医療連携推進法人)を構築し、多職種連携と求められる役割に対応した新たな評価を行う
▽患者の診療データ等をかかりつけ医から保険者等へフィードバックするなどし、アウトカムデータの蓄積による医療の質向上を目指す
▽高齢者だけでなく現役世代についても予防・健康管理を実施する
▽病院・専門医、多職種と連携したACP(Advanced Care Planning)を策定する
▽受診機会の地域差解消を目指した「オンライン診療のさらなる活用」を図る

【ほか】
▽急性期医療の集約化・重点化など、地域の実情に応じた病床機能のさらなる分化・連携を促す(各種データを踏まえた地域医療構想など、各種計画のバージョンアップをはかる、都道府県の役割、保険者の役割など医療提供体制に関する責任体制を見直し・強化する)

【医療の高度化への対応と持続性確保のための保険給付の効率化】
▽診療内容や薬剤の種類に応じた給付・負担の調整を行う(医療の質と経済効率性を踏まえた医薬品フォーミュラリの制度化、費用対効果を踏まえたバランスのとれた薬価制度への転換など)
▽医療・介護データの分析による可視化と質の向上をはかる(P4P:Pay for Performanceに基づく報酬体系による評価を進める)
▽保険外併用療養費制度の活用を推進する(選定療養のあり方見直しなど)
▽医療費の調整を行える仕組みを導入・強化する(都道府県別の医療費適正化努力を反映した調整、都道府県の取り組みと連携した国の目標設定など)



また(2)の「多様な働き方の包摂と制度の持続性確保」については、次のような提言を行いました。「高齢者=支えられる側、現役世代=支える側」という固定概念を見直し、「能力のある人が支え、必要に応じて給付を受ける」という全世代型社会保障制度の考え方をさらに進めるものと言えるでしょう。

【適用拡大の推進、雇用類似(フリーランス、ギグワーカー等)等が加入する新たな制度の構築(支え合いの強化)】
▽多くの被扶養者を被保険者に移行し、世帯単位から「実質的な個人単位」の保険制度を構築する
▽一定範囲の被扶養者にも保険料を賦課(家族被保険者)する(応益的負担と権利・義務の確立、保険給付や保健サービス等の受益の確保)

【就労する高齢者は、年齢にかかわらず、現役世代と同じ被用者保険に加入する】
▽保険料負担、自己負担割合、保険給付等については「原則、現役世代と同じ」くする

【ほか】
▽健康保険組合、協会けんぽは、加入者の多様化に対応した保険者機能を発揮する
▽加入者数が減少する国民健康保険について、「セーフティーネット」としての役割を強化する
▽公費負担のあり方を見直し、税の役割を強化する(社会連帯の強化を目指す)
▽マイナンバーを活用した所得・資産の把握(負担と給付の公平性の確保を目指す)
▽保険料賦課ベースの拡大(標準報酬制度の見直し、年金所得課税の見直しなど)
▽金融資産を加味した自己負担割合・所得区分を設定する(負担軽減者の判定のため)



さらに(3)の「健保組合に求められる役割」としては、次のような項目が例示されました。

まず、健保組合加入者へのサービスを充実するために、次のような取り組みが提案されました。
【医療・健康データ分析と働き方の多様化を踏まえた、個々人に最適化したサービスの提供】
▽高齢就労者、女性就労者の健康保持・増進を目指した取り組みを強化sる
▽情報プラットフォームの構築・活用、ビッグデータの活用を実現する
▽マイナポータルを利用した健保組合と加入者の双方向の迅速なコミュニケーションを実現する(各種申請受付、情報提供、ヘルスリテラシー向上の取り組み)
▽データ連携による事業主とのコラボヘルス、健康経営の支援を強化する

【健保組合とかかりつけ医のコラボレーションによる加入者へのサービス提供】
▽上述の「地域連携グループ」など含めた「かかりつけ医」と健保組合とが特別な契約を締結し、質を担保した保険診療・保健サービスの提供、情報提供などを図る



また、健保組合に対し、次のような「新たな役割」を担うことを求め、そのために次のような体制強化を図るよう提案しています。
▽現行の適用・給付業務の標準化・効率化を進め、事務の共同化をはかる
▽保健事業へのタスクシフトを進め、保険者機能のさらなる強化を目指す
▽組合業務へのDX導入に精通した人材の確保・育成をはかる
▽健保組合の規模のあり方等について検討する(新たな合併の選択肢、設立認可基準の見直しと存続基準の設定など)



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