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「看護師等確保基本指針」見直し論議続く、看護の魅力等PRして学生確保し、教育・研修で資質向上図る—看護師確保基本指針検討部会

2023.7.14.(金)

看護師等確保の基本指針について「30年ぶりの改訂」論議が進んでいる。少子化が進む中で、看護職の魅力・重要性をより強くPRして看護学生を確保し、養成校教育・職場教育・生涯教育を充実し、より質の高い看護職員の確保を目指していく必要がある—。

7月7日に開催された医道審議会・保健師助産師看護師分科会の「看護師等確保基本指針検討部会」(以下、検討部会)で、こうした議論が行われました。今後、都道府県および国民からの意見を踏まえて「看護師等確保基本指針を改正、今秋(2023年秋)に改正告示が行われる見込みです。

なお、「看護補助者」について名称や業務内容の見直し論議も始まる見込みです。看護職員からのタスク・シフトを進めるために「看護補助者の活躍」に期待が集まる一方で、補助者のなり手が不足している状況を改善する必要があります。

7月7日に開催された「第2回 医道審議会 保健師助産師看護師分科会 看護師等確保基本指針検討部会」

看護師確保等基本指針、1992年の制定から改訂されておらず、最新動向踏まえ見直し

1992年に「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が制定され、厚生労働大臣・文部科学大臣には「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」(以下、基本指針)を定めることが義務付けられました。

基本指針には、(1)看護師等の就業動向(2)看護師等の養成(3)病院等に勤務する看護師等の処遇改善(4)研修等による看護師等の資質向上(5)看護師等の就業促進(6)その他看護師等の確保促進—に関する事項が定められ、この指針に沿って看護師等の育成・定着促進策が進められ、就業看護師等(看護師・保健師・助産師・准看護師、以下同)の数は1990年の84万人から、2020年には2.1倍の173万4000人に増加するなど、大きな成果をあげています。

しかし、30年間改訂がなされず、その後の「少子高齢化の進展」「介護保険制度の創設」「働き方改革」「地域医療構想の策定」「診療報酬の大幅見直し」「新興感染症(新型コロナウイルス感染症など)の蔓延」などさまざまな動きを踏まえ、今般、基本指針見直し論議が行われているものです。

厚生労働省は5月29日の前回会合に基本指針改正案を提示。そこでの議論を踏まえて、7月7日の今回会合に「改正案の見直し版」が提示されました。前回案からの見直し・追記のポイントは以下のように整理できます。

【看護師等の養成】について
▽意欲のある看護師等志望者確保のために、専門職としての看護の魅力を積極的に伝えるための行政や職能団体などによる啓発活動が重要となる。その際「都道府県等における看護学生に対する修学資金の貸与」「働きながら看護師等の資格を取得できる仕組み」の周知なども重要となる

▽外国人が看護師等国家試験を円滑に受験できるような対応が重要となる

▽理論と実践を結びつけて指導できる資質の高い看護教員の確保が重要であるため、看護教員に必要な資質・能力の維持・向上に資する効率的・効果的な継続教育を推進することが重要である

▽18歳人口の減少に伴い「看護学生の減少」が予想されることから、地域で資質の高い看護教員や実習施設を安定的に確保し、看護師等を安定的に養成できるよう、地域の学校養成所間で議論を行っていくことが望まれる

▽保健師・助産師の資質向上を推進する観点から、 保健師・助産師に係る大学院をはじめとする様々な養成課程における教育の質的な充実に努めることが必要である

確保の方針(看護師等確保基本指針検討部会1 230707)



【病院等に勤務する看護師等の処遇改善】について
▽ICTの積極的な活用等を通じた訪問看護ステーションにおける情報共有や24時間対応の効率化の推 進によって、看護師等の業務の効率化を図っていくことが重要となる

▽病院で働く看護師等が訪問看護等に従事するケースなど、看護師等の柔軟な働き方に対応できる環境整備や看護師等の人生設計につながるような配慮が行われることが望ましい

▽各種ハラスメントへの対策(相談窓口設置など)を進めることが必要である

▽看護師等から看護補助者へのタスク・シフト/シェアを進めるなど、協働を推進していくことが重要である

処遇改善の方針1(看護師等確保基本指針検討部会2 230707)

処遇改善の方針2(看護師等確保基本指針検討部会3 230707)



【研修等による看護師等の資質向上】について
▽仕事の中断に関わるライフイベント(出産、育児など)があるという前提でキャリアの可視化を図るとともに、キャリアアップの道筋を示す工夫を行うことが重要である

▽「ジェネラリストである看護師」等や「専門性の高い看護師等の育成」を推進するために、看護師等の指導を行う看護管理者の役割が重要である。看護管理者には、自らの病院等のみならず、地域の様々な病院等やその他の施設・事業所、学校養成所等と緊密に連携していく能力が求められる

▽病院等において、基本指針の内容を理解し、具体的な運用に向けた取組を推進できる看護管理者を配置するとともに、職能団体がこうした病院等の取り組みを支援することが望ましい

資質向上の方針1(看護師等確保基本指針検討部会4 230707)

資質向上の方針2(看護師等確保基本指針検討部会5 230707)



【看護師等の就業促進】について
▽看護師等に対する都道府県ナースセンターや都道府県ナースセンターの取組の周知を推進することが重要である

▽地域の課題に応じた看護師等確保対策の実施に当たっては、2次医療圏を越えた対策等が必要になることから、都道府県、都道府県の職能団体、病院等の地域の関係者が連携して取り組みを進めていくことが望まれる

▽産後ケア事業の実施に当たって必要となる助産師等の確保を図ることが重要である

就業促進の方針1(看護師等確保基本指針検討部会6 230707)

就業促進の方針2(看護師等確保基本指針検討部会7 230707)



ほか、▼看護師等の専門性の具体的な内容と役割を国民に対して発信する▼特定行為研修修了者、専門看護師、認定看護師その他の専門性の高い看護師の専門性の具体的な内容と役割を国民に対して発信する—ことの重要性なども追記されました。



これらの見直し・追記は前回会合で委員から出された意見を踏まえたものであり、異論・反論は出ていません。新たに日本看護協会の会長に就任した高橋弘枝委員は「改定基本指針を踏まえて、看護職員の確保と資質向上を目指していく。今後、各病院の看護管理者などを中心に、基本指針の内容について現場看護職員の理解を得て、取り組みを推進していきたい」と強調しています。

もっとも、細部について「看護職員が『辞めない』ような取り組みを進めることも重要であり、何かの折に相談できる体制整備も進めるべき」(山口委員)、「都道府県ナースセンターの機能強化とともに、現場看護師などへの周知を徹底していくべきである」(稲井芳枝委員:前徳島県看護協会会長(徳島県ナースセンター))、「一度現場を離れた看護職員の『復職支援』をより強化していくべき」(鎌倉やよい委員:日本看護系大学協議会代表理事)、「医師が年齢を重ねても現場で活躍しているように、看護職員も生涯にわたり医療現場で活躍できるような環境をこれまで居樹に整える必要がある」(小野太一委員:政策研究大学院大学教授)、 「『高年齢者である看護師等』との記載ではなく、『プラチナナース』など輝いて働けるような用語を検討すべき」(樋口幸子委員:済生会看護室室長)などの提案が出ています。

また、病院団体サイドからは「特定行為研修の一部を、大学教育カリキュラムを踏まえて履修済と見做すような対応も考えるべき」(大田泰正委員:全日本病院協会常任理事、菅間博委員:日本医療法人協会副会長)、「准看護師の確保策を強化すべき」(岡本委員)などの声も出ています。もっとも、特定行為研修の履修内容などは別の検討の場(看護師特定行為・研修部会)で議論すべきテーマであり、基本指針論議で提案すべき内容ではありません。また、准看護師確保に関して釜萢敏委員(日本医師会常任理事)は「准看護師養成校の定員充足率は6割台で、将来が見えない」という点を紹介。准看護師確保策を進めるべきかどうかをまず考える必要がありそうです。



こうした多様な意見を吟味して、萱間真美座長(国立看護大学校長)と厚生労働省とで基本指針案を再度修正し、近く都道府県および国民からの意見募集を行います(いわゆるパブリックコメント募集)。そこで得られた意見も踏まえて最終調整を行い、「基本指針を今秋(2023年秋)に改訂する」ことになります。

看護補助者・看護助手の名称・業務内容見直しも検討へ

また、看護補助者の確保・活用推進に向けて「名称の見直し」も論点の1つにあがっています。「補助や助手という名称では、目指そうと考える人がいなくなるのではない。その業務が非常に重要であり、その仕事に就きたいと思うような名称を考えるべき」(山口育子委員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)、「現場感覚では『補助』という名称では人が集まらない。誇りをもって働いてもらうために、名称見直しを考えていくべき」(岡本呉賦委員:日本精神科病院協会常務理事)、「名称を見直すとともに、『看護業務から介護業務を分離する』ほどの抜本的な業務内容見直しを考えるべき」(大田泰正委員:全日本病院協会常任理事)などの声が出ています。

厚労省の調査研究によれば、「看護補助者」「看護助手」という名称を用いる病院が多くなっていますが、ほかに「看護アシスタント」「ナースエイド」「ケアワーカー」などの名称も使用されいます。また、介護福祉士等の資格保有の有無で、補助者の業務を分けている病院は一部であり、多くは「介護福祉士等の有資格者と無資格者とで同じ業務を行っている」ことも明らかにされました。

看護補助者の名称等について(看護師等確保基本指針検討部会8 230707)



基本指針の中で、名称見直しなどを行う」かどうかは決まっていませんが、今後、名称や業務切り分けなどが検討されていきます。



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