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GemMed塾 看護モニタリング

法定の「前払金保全措置」講じていない有料老人ホーム、2020年度にも41件・1.8%存在する―2020年度・厚労省調査

2023.7.20.(木)

有料老人ホームは、老人福祉法で「施設の管理者の氏名と住所」「供与する介護などの内容」などを都道府県知事に届け出る義務が定められているが、昨年(2020年)6月末時点で、626件・3.8%の施設が定められた届け出が行われていない―。

また、入居にあたり「前払金」を要求している有料老人ホーム(2268施設、全体の14.2%)のうち、41件・1.8%で「前払金の保全措置」が講じられていない—。

厚生労働省が7月18日に公表した、2020年度の「有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査(第14回)」結果から、こういった状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら(調査結果))。

前払金の保全義務違反など、入所者の経済的安全確保に問題のある施設も依然としてあることから、厚労省は都道府県に対し指導・監督を徹底するよう改めて求めています(厚労省サイトはこちら(指導強化を依頼する通知))。

有料老人ホームは設置前に知事への届け出が必要、未届け施設は626件・3.8%

有料老人ホームは「老人を入居させ、入浴、排せつ、もしくは食事の介護、食事の提供またはその他の日常生活上必要な便宜であって、厚生労働省令で定めるもの(介護など)の供与をする事業を行う施設」のうち、老人福祉施設や認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないもの」と定義されます(法第29条第1項)。

閉鎖的な空間であり、虐待や不当な処遇などが行われる可能性も否定できないことから、都道府県による適切・迅速な指導などを可能とするために、有料老人ホームの設置者には、設置前に都道府県知事に対して▼施設の名称・設置予定地▼設置者の氏名・住所など▼条例、定款その他の基本約款▼事業開始の予定年月日▼管理者の氏名・住所▼供与される介護などの内容▼その他厚生労働省令で定める事項―を届け出ることが義務付けられています(法第29条第1項各号)。

しかし、2020年度の調査結果を見ると、未届け施設が626件・3.8%存在することが分かりました。2009年の初回調査に比べれば未届け施設は減少(7.4%から3.6ポイント減)していますが、依然として未届け施設が存在することから、厚労省は都道府県に対し指導監督の徹底を求めています。

必要事項を届け出ていない有料老人ホームの状況(2020年度有料老人ホーム調査結果1 230718)

前払金保全措置の義務違反、福岡県12件、東京都7件、神奈川県6件等で目立つ

また有料老人ホームの中には、入居条件の1つとして「前払金の支払い」を求めるところもあります(前払金がない施設もある)。なお、施設によっては1億円を超える入居金が必要なところもありますが、これ自体には問題はありません。

前払金にはさまざまな形態がありますが、一般には「終身にわたって居住することを前提に支払う家賃」と解されています。このため、想定入所期間(施設により異なる)よりも前に退所する場合などには、前払金の一部が返還される必要があり、老人福祉法では、有料老人ホームに対して「前払金の返還責務を負うこととなる場合に備えた、必要な保全措置」を義務付けています(法第29条第9項)。

しかし、今般の調査では「前払金を徴収している有料老人ホーム」2268施設(全体の14.2%)のうち、41件・1.8%で保全措置が講じられていないことが分かりました。保全措置義務違反の施設減少しています(2011年度調査から18.0ポイント減、前年度(2019年度)調査から0.2ポイント減)が、厚労省は「有料老人ホーム全体の信頼を揺るがす」として、都道府県に対し厳正な指導を行うよう強く求めています。

都道府県別に保全措置義務違反の施設数を見ると、福岡県(12件)、東京都(7件)、神奈川県(6件)、広島県(4件)、兵庫県(3件)などで多くなっています。

前払金保全措置を講じていない有料老人ホームの状況(2020年度有料老人ホーム調査結果2 230718)



厚労省は、不適切な有料老人ホームへの指導・監督を徹底するよう都道府県等に求めており、「適切な届け出」「前払金の保全措置」のほか、▼福祉・消防・建築部局が連携した防火上の安全性の確保▼スプリンクラー設置—などが重要ポイントとなります(厚労省サイトはこちら(指導強化を依頼する通知))。



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