医療機関に来院せずにウェアラブル端末等を活用して実施する分散型治験(DCT)、必要な手続き経て保険外併用療養の対象となる—厚労省
2024.7.11.(木)
医療機関に来院せずにウェアラブル端末等を活用して実施する分散型治験(DCT)が増加しているが、必要な手続き(治験実施医療機関とパートナー医療機関との契約締結)を経て実施する場合には保険外併用療養の対象となる—。
厚生労働省は7月4日に事務連絡「分散型治験における保険外併用療養費の取扱いについて」を示し、こうした考えを明らかにしました。
医療機関に来院せずにウェアラブル端末等を活用して実施する分散型治験(DCT)が増加
新たな画期的な医薬品等を国民がアクセスできるようにする(薬事承認を受け、保険適用を受ける)ためには、安全性・有効性を、治験等で確認し、証明する必要があります。
治験に用いられる薬剤は薬事承認・保険適用を受けていませんが、症例、つまり患者を多く集め、データを集積する必要があるため、「保険診療(入院医療費等)と保険外診療(当該保険適用外の薬剤費等)との併用」が認められています(医療保険制度の原則に照らせば、保険外の医療技術を使用した場合、保険診療部分そのものも保険から除外される)。
ところで、最近、分散型治験(Decentralized Clinical Trial:DCT)と呼ばれる「医療機関に来院せずに、スタートフォンやウェアラブル端末を活用して実施する治験」が広がってきています。新型コロナウイルス感染症が流行する中で「感染を避けるために医療機関に来院しない形の治験」が求められたことなどがその背景にあります。
この分散型治験における「保険外併用療養」の取り扱いについて、今般、厚労省は次のような考え方を整理、明確化しました。
●分散型治験(DCT)においては、治験実施医療機関以外の医療機関(パートナー医療機関)が治験の実施に係る業務の一部を実施する場合には、▼「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」第39条の2▼「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」第59条▼「再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令」第59条—に基づいて、治験実施医療機関は「パートナー医療機関と業務の範囲等に係る委託契約」を締結する必要がある
(参考)
〇「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(Gem Med編集部で抜粋・一部改変)
第39条の2 実施医療機関(自ら治験を実施する者が治験を実施する場合にあっては治験責任医師または実施医療機関。以下同)は、治験の実施に係る業務の一部を委託する場合には、次に掲げる事項を記載した文書により当該業務を受託する者との契約を締結しなければならない。
一 当該委託に係る業務の範囲
二 当該委託に係る業務の手順に関する事項
三 前号の手順に基づき当該委託に係る業務が適正かつ円滑に行われているかどうかを
実施医療機関が確認することができる旨
四 当該受託者に対する指示に関する事項
五 前号の指示を行った場合において当該措置が講じられたかどうかを実施医療機関が
確認することができる旨
六 当該受託者が実施医療機関に対して行う報告に関する事項
七 その他当該委託に係る業務について必要な事項
〇「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(Gem Med編集部で抜粋・一部改変)
第59条 実施医療機関(自ら治験を実施する者が治験を実施する場合にあっては治験責任医師また実施医療機関。以下同)は、治験の実施に係る業務の一部を委託する場合には、次に掲げる事項を記載した文書により当該業務を受託する者との契約を締結しなければならない。
一 当該委託に係る業務の範囲
二 当該委託に係る業務の手順に関する事項
三 前号の手順に基づき当該委託に係る業務が適正かつ円滑に行われているかどうかを
実施医療機関が確認することができる旨
四 当該受託者に対する指示に関する事項
五 前号の指示を行った場合において当該措置が講じられたかどうかを実施医療機関が
確認することができる旨
六 当該受託者が実施医療機関に対して行う報告に関する事項
七 その他当該委託に係る業務について必要な事項
〇「再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(Gem Med編集部で抜粋・一部改変)
第59条 実施医療機関(自ら治験を実施する者が治験を実施する場合にあっては治験責任医師また実施医療機関。以下同)は、治験の実施に係る業務の一部を委託する場合には、次に掲げる事項を記載した文書により当該業務を受託する者との契約を締結しなければならない。
一 当該委託に係る業務の範囲
二 当該委託に係る業務の手順に関する事項
三 前号の手順に基づき当該委託に係る業務が適正かつ円滑に行われているかどうかを
実施医療機関が確認することができる旨
四 当該受託者に対する指示に関する事項
五 前号の指示を行った場合において当該措置が講じられたかどうかを実施医療機関が
確認することができる旨
六 当該受託者が実施医療機関に対して行う報告に関する事項
七 その他当該委託に係る業務について必要な事項
●パートナー医療機関において「医師が分散型治験(DCT)に係る診療」を行う場合には、初診料、再診料など、および自ら治験を実施する者が治験を実施する場合における検査料等については「保険外併用療養費」の支給対象となり、パートナー医療機関において算定する
あわせて厚労省は、保険外併用療養費の支給対象となる診療については、「『担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等』及び『保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等』の実施上の留意事項について」の一部改正についてを参照するよう求めています。
(参考)
〇「『担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等』及び『保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等』の実施上の留意事項について」の一部改正について(Gem Med編集部で抜粋・一部改変)
2 医薬品の治験に係る診療に関する事項
(1)保険外併用療養費の支給対象となる治験は、医薬品医療機器等法第2条第17項の規定によるもの(人体に直接使用される薬物に係るものに限る)とする
(2)したがって、治験の実施に当たっては、医薬品医療機器等法、医薬品医療機器等法施行規則の関係規定によるほか、医薬品の臨床試験の実施の基準に関するによるものとする
(3)保険外併用療養費の支給対象となる期間については、治験の対象となる患者ごとに当該治験を実施した期間とする
(4)保険外併用療養費の支給対象となる診療については、治験依頼者の依頼による治験においては、医療保険制度と治験依頼者との適切な費用分担を図る観点から、治験に係る診療のうち検査、画像診断に係る費用については保険外併用療養費の支給対象とはせず、また、投薬、注射に係る費用については、当該治験の被験薬の同種同効薬、当該治験の被験薬、対照薬に係る診療については、保険外併用療養費の支給対象とはしない。また、自ら治験を実施する者による治験においては、治験に係る診療のうち、当該治験の被験薬・対照薬(ただし、同種同効薬を除く)に係る投薬・注射に係る費用については保険外併用療養費の支給対象とはしない。なお、いずれの場合においても、これらの項目が包括化された点数を算定している医療機関において治験が行われた場合の当該包括点数の取扱いについては、当該包括点数から、当該診療において実施した保険外併用療養費の支給対象とはならない項目のうち当該包括点数に包括されている項目の所定点数を合計した点数を差し引いた点数に係るものについて、保険外併用療養費の支給対象とする
(5)保険外併用療養費の支給対象となる治験は、患者に対する情報提供を前提として、患者の自由な選択と同意がなされたものに限られるものとし、したがって、治験内容を患者等に説明することが医療上好ましくないと認められる等の場合にあっては保険外併用療養費の支給対象としない
(6)保険外併用療養費の支給対象となる治験において、患者から当該治験の被験薬の薬剤料等を特別の料金として徴収する場合、当該特別の料金の徴収を行った医療機関は、患者に対し、保険外併用療養費の一部負担に係る徴収額と特別の料金に相当する自費負担に係る徴収額を明確に区分した当該特別の料金の徴収に係る領収書を交付する
(7)特別の料金については、その徴収の対象となる療養に要するものとして社会的にみて妥当適切な範囲の額とする
(8)保険外併用療養費の支給対象となる治験を実施した医療機関については、毎年の定例報告の際に、治験の実施状況について地方厚生(支)局長に報告する。また、特別の料金等の内容を定め、または変更しようとする場合は地方厚生(支)局長にその都度報告する
3 医療機器の治験に係る診療に関する事項
(1)保険外併用療養費の支給対象となる治験は、医薬品医療機器等法第2条第17項の規定によるもの(機械器具等に係るものに限る)とする
(2)したがって、治験の実施に当たっては、医薬品医療機器等法、医薬品医療機器等法施行規則の関係規定によるほか、医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令によるものとする
(3)保険外併用療養費の支給対象となる診療については、治験依頼者の依頼による治験においては、医療保険制度と治験依頼者との適切な費用分担を図る観点から、治験に係る診療のうち、手術・処置・歯冠修復・欠損補綴の前後1週間(2以上の手術等が行われた場合は、最初の手術等が行われた日から起算して8日目に当たる日から最後の手術等が行われた日から起算して8日を経過する日までの間とする)に行われた検査、画像診断、当該治験の被験機器、対照機器(以下、当該治験機器)、診療報酬上評価されていない手術、処置、歯冠修復・欠損補綴に係る費用については保険外併用療養費の支給対象とはしない。また、自ら治験を実施する者による治験においては、治験に係る診療のうち当該治験、診療報酬上評価されていない手術、処置、歯冠修復・欠損補綴に係る費用については保険外併用療養費の支給対象とはしない。なお、いずれの場合においても、保険外併用療養費の支給対象とされない検査等が包括化された点数を算定している医療機関において治験が行われた場合の当該包括点数の取扱いについては、当該包括点数から、次の点数を差し引いた点数に係るものについて、保険外併用療養費の支給対象とする
ア 当該診療において実施した当該検査等の所定点数
イ 当該治験機器を使用するために通常要する費用に基づき算定した点数
(4)保険外併用療養費の支給対象となる治験は、患者に対する情報提供を前提として、患者の自由な選択と同意がなされたものに限られるものとし、したがって、治験内容を患者等に説明することが医療上好ましくないと認められる等の場合にあっては保険外併用療養費の支給対象としない
(5)保険外併用療養費の支給対象となる治験において、患者から当該治験の被験機器の費用等を特別の料金として徴収する場合、当該特別の料金の徴収を行った医療機関は、患者に対し、保険外併用療養費の一部負担に係る徴収額と特別の料金に相当する自費負担に係る徴収額を明確に区分した当該特別の料金の徴収に係る領収書を交付する
(6)特別の料金については、その徴収の対象となる療養に要するものとして社会的にみて妥当適切な範囲の額とする
(7)保険外併用療養費の支給対象となる治験を実施した保険医療機関については、毎年の定例報告の際に、治験の実施状況について地方厚生(支)局長に報告する。また、特別の料金等の内容を定め、または変更しようとする場合は地方厚生(支)局長にその都度報告する
4 再生医療等製品の治験に係る診療に関する事項
(1)保険外併用療養費の支給対象となる治験は、医薬品医療機器等法第2条第17項の規定によるもの(加工細胞等に係るものに限る)とする
(2)したがって、治験の実施に当たっては、医薬品医療機器等法、医薬品医療機器等法施行規則の関係規定によるほか、再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令によるものとする
(3)保険外併用療養費の支給対象となる診療については、治験依頼者の依頼による治験においては、医療保険制度と治験依頼者との適切な費用分担を図る観点から、治験に係る診療のうち、手術、処置、歯冠修復および欠損補綴の前後1週間(2以上の手術等が行われた場合は、最初の手術等が行われた日から起算して8日目に当たる日から最後の手術等が行われた日から起算して8日を経過する日までの間とする)に行われた検査、画像診断、当該治験の被験製品・対照製品(当該治験製品)、診療報酬上評価されていない手術、処置、歯冠修復・欠損補綴に係る費用については保険外併用療養費の支給対象とはしない。また、自ら治験を実施する者による治験においては、治験に係る診療のうち、当該治験製品、診療報酬上評価されていない手術、処置、歯冠修復・欠損補綴に係る費用については保険外併用療養費の支給対象とはしない。なお、いずれの場合においても、保険外併用療養費の支給対象とされない検査等が包括化された点数を算定している医療機関において治験が行われた場合の当該包括点数の取扱いについては、当該包括点数から、次の点数を差し引いた点数に係るものについて保険外併用療養費の支給対象とする
ア 当該診療において実施した当該検査等の所定点数
イ 当該治験製品を使用するために通常要する費用に基づき算定した点数
(4)保険外併用療養費の支給対象となる治験は、患者に対する情報提供を前提として、患者の自由な選択と同意がなされたものに限られるものとし、したがって、治験内容を患者等に説明することが医療上好ましくないと認められる等の場合にあっては保険外併用療養費の支給対象としない
(5)保険外併用療養費の支給対象となる治験において、患者から当該治験の被験製品の費用等を特別の料金として徴収する場合、当該特別の料金の徴収を行った医療機関は、患者に対し、保険外併用療養費の一部負担に係る徴収額と特別の料金に相当する自費負担に係る徴収額を明確に区分した当該特別の料金の徴収に係る領収書を交付する
(6)特別の料金については、その徴収の対象となる療養に要するものとして社会的にみて妥当適切な範囲の額とする
(7)保険外併用療養費の支給対象となる治験を実施した医療機関は、毎年の定例報告の際に、治験の実施状況について地方厚生(支)局長に報告する。また、特別の料金等の内容を定め、または変更しようとする場合は地方厚生(支)局長にその都度報告する