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GemMed塾 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

医療費動向はコロナ禍「前」水準に戻りつつあるが、医科入院では「在院日数短縮→延べ患者数減→医療費の伸び減」続く—中医協総会

2024.9.11.(水)

2016-23年度医療費を眺めると、受診延べ日数(=延べ患者数)・1日当たり医療費(=患者単価)ともに新型コロナウイルス感染症の流行前の水準に戻り、「医療費の伸び」もコロナ禍前の水準に戻りつつある—。

ただし、医科入院では「在院日数の短縮」が継続して、受診延べ日数(=延べ患者数)の減少が大きく、「医療費の伸び」はコロナ禍前の水準には戻っていない。今後はコロナ診療報酬特例の廃止により1日当たり医療費の増加幅も小さくなると考えられるため、「医科入院医療費の動向」を注視していく必要がある—。

9月11日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした議論・報告が行われました。

2023年度医療費は前年度から2.9%の増加

厚生労働省は9月3日に「2023年度の医療費の動向」(概算医療費)を公表し、例えば次のような状況が明らかにされました。
▽2023年度の医療費は前年度に比べて1兆3200億円・2.9%増加し、47兆3000億円となった

▽国民1人当たり医療費は38万円で、前年度に比べて1万2000円・3.4%の増加となった

▽診療種類別の医療費の伸び率(2022年度→23年度)は、医科入院:3.1%増、医科入院外:1.0%増、歯科:1.9%増、調剤:5.4%増、訪問看護:19.5%増となった

▽「延べ患者数」に相当する受診延日数の伸び率を診療種類別に見ると、全体:2.0%増、医科入院:2.3%増、医科入院外:1.9%増、歯科:0.7%増、調剤:6.0%増

▽医療機関の種類別に1施設当たり医療費伸び率を見ると、大学病院:5.4%増、公的病院(国立病院、公立病院など):3.9%増、法人病院:1.4%増、個人病院:2.9%増、医科診療所:1.1%増、歯科診療所:2.6%増、保険薬局:4.7%増となった

▽2023年度の推計平均在院日数を都道府県別に見ると、最長は高知県の41.5日(前年度比0.1日短縮)、最短は東京都の23.2日(同0.1日延伸)で、最長の高知県と最短の東京都との間には、18.3日間の差異がある(同0.2日縮小)

制度別医療費(2023年度概算医療費1 240903)

制度別1人当たり医療費(2023年度概算医療費2 240903)



9月11日の中医協総会では、厚労省保険局調査課の鈴木健二課長から背景なども踏まえた分析報告が行われました。

まず医療費の伸び率を、コロナ禍「前」(2016-2019年度の平均)とコロナ禍「後」(2019-23年度の平均)とで比較すると、コロナ禍「前」は1.8%、コロナ禍「後」は2.1%となり、「コロナ禍『前』の水準に戻りつつある」ことが分かります。

医療費は「受診延べ日数」(つまり延べ患者数)と「1日当たり医療費」(つまり患者単価)に分けることができます。両者をコロナ禍「前」(2016-2019年度の平均)とコロナ禍「後」(2019-23年度の平均)とで比較すると、いずれも「コロナ禍『前』の水準に戻りつつある」ことが分かります。「受診延べ日数」(つまり延べ患者数)が、コロナ流行初期に大きく減少(2020年度にマイナス8.5%)し、結果、医療費も多く減少(同3.1%減)しましたが、その後、回復してきていることが分かります。

▽受診延べ日数(=延べ患者数):コロナ禍「前」はマイナス0.5%、コロナ禍「後」はマイナス0.4%

▽1日当たり医療費(=患者単価)は、コロナ禍「前」は2.3%増、コロナ禍「後」は2.5%増

概算医療費の動向

医科入院では「在院日数の短縮」が続き、受診延べ日数(=延べ患者数)の減少継続

ただし、診療種類別(医科の入院/入院外、歯科、調剤)に見ると、状況は若干異なります。

まず医科入院については、次のように「受診延べ日数(つまり延べ患者数)の減少が加速する一方で、1日当たり医療費(つまり単価)の増加幅がそれほど大きくなく、結果、医療費の伸びはコロナ禍前の水準に戻っていない」ことが分かります。

▽医療費:コロナ禍「前」は2.2%増、コロナ禍「後」は1.4%増

▽受診延べ日数(=延べ患者数):コロナ禍「前」はマイナス0.1%、コロナ禍「後」はマイナス1.4%

▽1日当たり医療費(=患者単価)は、コロナ禍「前」は2.2%増、コロナ禍「後」は2.8%増

入院医療費の動向



さらに詳しく分解分析すると、▼1施設当たり推計新規入院件数は2023年度には、コロナ流行前の水準に戻っている(コロナ流行直前の2019年度を「100」としたとき、2023年度は「100.5」▼推計平均在院日数は、コロナ禍前から短縮し、コロナ禍後も続いている(同じく2023年度は「96.4」)▼1日当たり医療費は、コロナ禍後に大きく増加している(同じく2023年度は「111.5」—ことが分かりました。「新規入院患者は戻ってきているものの、在院日数の短縮が進んでいる」結果、延べ受診日数(=延べ患者数)が減少していると考えられます。

また、別統計(病院報告)の「病床利用率」を見ると、「コロナ禍前から下がってきており、コロナ流行(2020年度)に大きく減少。その後、徐々に回復しているものの、コロナ禍前の水準には戻っていない」ことが分かります。「延べ受診日数」と同様の動きと言えます。

入院医療費の分解分析



なお、「1日当たり医療費」(=1日単価)が上昇している背景には、▼重症患者の受け入れ▼在院日数短縮(診療密度が濃くなる)▼医療の高度化(高額薬剤の登場など)▼診療報酬改定(プラス改定)▼コロナ診療報酬特例—などがあると考えられますが、コロナ診療報酬特例は「縮減→廃止」と動くため、2024年度以降の医療費動向に大きく影響する(さらに医療費が下がる可能性あり)と見られます。鈴木調査課長は「特例の見直しで、医療費動向がどう変化するのか注視する必要がある」とコメントしています。

医科入院外では、診療報酬特例等により医療費の伸びがコロナ禍前よりも大きく

医科入院外に目を移すと、次のように「受診延べ日数(つまり延べ患者数)の減少が小さくなり、あわせて1日当たり医療費(つまり単価)の増加幅が大きくなった結果、医療費の伸びはコロナ禍前よりも大きくなっている」ことが分かります。

▽医療費:コロナ禍「前」は1.6%増、コロナ禍「後」は2.5%増

▽受診延べ日数(=延べ患者数):コロナ禍「前」はマイナス0.9%、コロナ禍「後」はマイナス0.4%

▽1日当たり医療費(=患者単価)は、コロナ禍「前」は2.5%増、コロナ禍「後」は2.9%増

入院外医療費の動向



ただし、上述のとおりコロナ診療報酬特例は「縮減→廃止」と動くため、2024年度以降は、1日当たり医療費の伸びはそれほど大きくなくなる(=医療費の伸びもそれほど大きくなくなる)と予想されます。

なお、コロナ禍では「小児の外来患者が大きく減少」しましたが、その後、回復し、また2023年度にはインフルエンザの流行などにより大きく伸びています。診療科別医療を見ても、「小児科」で受診延べ日数(=延べ患者数)が同様の動きをしていることが分かります。コロナ感染症の影響は「一時的であった」(ただし非常に大きなインパクトであった)と考えることができそうです。

もっとも、例えば「内科」では、2023年度になっても受診延べ日数(=延べ患者数)がコロナ禍前の水準には戻りきっておらず、コロナ診療報酬特例の廃止により、1日当たり医療費増の影響も弱まっていくため、今後の動向を見守っていく必要がありそうです。

年齢階級別の入院外医療費分析

診療科別のクリニック入院外医療費分析



このほか、▼歯科では、受診延べ日数(=延べ患者数)の減少幅が大きいが、1日当たり医療費増により、医療費の伸びはコロナ禍「前」よりも大きくなっている(貴金属価格引き上げの影響も大きな点に留意)▼調剤では、受診延べ日数(=延べ患者数)が増加しており、医療費の伸びはコロナ禍「前」よりも大きくなっている(高額な抗ウイルス薬の影響も大きな点に留意)—ことなども鈴木調査課長から報告されています。



こうした分析結果を踏まえて中医協委員からは、▼2023年度医療費では「コロナ禍前の通常の姿」に戻っているようだ。入院では「在院日数の短縮・1日当たり医療費増」などが生じているが、これが「資源投入量の少ない患者(軽症も言える)の早期退院」によって生じているのであれば、妥当と言える。他方、1日当たり医療費増の背景には「医療の高度化」(高額薬剤など)もあると考えられ、医療保険財政が厳しさを増す中で、「医療の高度化」にどう対応していくかも今後の重要視点となる(松本真人委員:健康保険組合連合会理事)▼調剤では、中間年改定による薬剤費減も調剤医療費(→薬局経営にも深く関係)大きな影響を及ぼしており、2025年度中間年改定は慎重に検討すべき(森昌平委員:日本薬剤師会副会長)▼歯科の受診延べ日数(=延べ患者数)減少が「受診控え」であれば深刻な問題である。歯科医療の実態が見えるよう、様々な角度から分析してほしい(林正純委員:日本歯科医師会副会長)—などの意見が出されています。今後も「コロナ禍前とポストコロナで医療費動向がどう変化しているのか」などの詳しい分析が行われることに期待が集まります。

能登半島地震踏まえた診療報酬特例、2024年内で一旦切るが、状況踏まえて延長も検討

また、9月9日の中医協総会では、本年(2024年)1月1日に発生した能登半島地震による被災に伴う被災地特例措置について、次のような対応を行う考えが厚労省保険局医療課の林修一郎課長から示され、了承されています。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「実態把握のうえで、必要があれば特例措置を延長することが重要である。地域医療の確保ができなければ、被災者が地元に戻ることも難しい」と、また支払側の松本委員は「特例延長の是非を判断する重要な調査である。医療現場には負担をおかけするが、しっかりとアンケートに回答してほしい」とコメントしています。

▼まず、本年(2024年)9月中に「被災地特例措置は本年(2024年)12月末まで」と期限を定める(通知等発出)

▼併せて、アンケートにより特例措置を活用している保険医療機関数等を調査する(実態把握)

▼実態を踏まえて「被災地特例の延長を行うかどうか」などを中医協で議論する(2024年冬)



このほか、9月9日の中医協総会では、次のような事項の了承等も行われました。

▽血清・血漿中のC型肝炎ウイルスコアタンパク質(HCVコア抗原)およびC型肝炎ウイルス抗体(抗HCV抗体)の検出(C型肝炎ウイルス感染の診断補助)を行う新検査(エクルーシス試薬 HCV Duo、102点)を本年(2024年)10月1日から保険適用する(厚労省サイトはこちら



▽2型糖尿病治療薬「マンジャロ皮下注」について、「リキシセナチド」(販売名:リキスミア皮下注)を比較薬としてた場合「費用対効果が良い」(費用対効果評価を判断するICERが、200万円/QALY以上500万円/QALY未満)であった(結果、薬価は維持される見込み)(厚労省サイトはこちら

▽コロナ感染症治療薬の「パキロビットパック」について費用対効果評価にかかる分析を行っているが、流行株が変化している中で、オミクロン株流行下での評価を行ったPANORAMIC試験のデータ解析が必要であるため、費用対効果評価を最大1年間中断する(データ解析後に速やかに中医協等へ報告を行う、(厚労省サイトはこちら



▽尋常性乾癬などの治療に用いる「ビメキズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:ビンゼレックス皮下注)について、「化膿性汗腺炎」への効能・効果が追加されることを踏まえ、「保険医が投与することができる注射薬」(処方箋を交付することができる注射薬)としても対応可能となるよう、投与間隔を現在の「4週間に1回投与する場合に限る」旨を、「4週間を超える間隔で投与する場合を除く」と見直す(現在の「4週間に1回投与する場合に限る」規定では、追加された化膿性汗腺炎における「2週に1回投与」を在宅で行えなくなるため、「4週超は在宅使用不可」の旨に見直すもの)(厚労省サイトはこちら)(関連記事はこちらこちら



▽以下の病院についてDPC制度からの退出を認める(報告事項、厚労省サイトはこちら
・医療法人マックシール巽病院(大阪府):本年(2024年)11月1日に地域包括医療病棟へ移行予定
・社会医療法人ONEFLAG牧病院(大阪府):本年(2024年)12月1日に地域包括医療病棟へ移行予定
・社会医療法人垣谷会明治橋病院(大阪府):本年(2024年)12月1日に地域包括医療病棟へ移行予定
・医療法人聖真会渭南病院(高知県):本年(2024年)12月1日に地域包括ケア病棟へ移行予定



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