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GemMed塾 病床機能報告

病院経営は減収・減益の危機的な状況、期中の診療報酬対応も含めた病院経営支援を国に強く要請へ—四病協

2024.9.26.(木)

病院経営が極めて厳しい状況が病院経営定期調査で明らかとなっている。キャッシュフローが回らなくなっている病院も出ており、このままでは病院による医療提供が困難になる。11月にも、期中の診療報酬上の対応を含めた病院経営支援を国に強く要請する—。

9月25日に開催された四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成)の総合部会で、こうした方針を確認したことが、日本病院会の相澤孝夫会長から明らかにされました。

9月25日の四病院団体協議会・総合部会後の記者会見に臨んだ日本病院会の相澤孝夫会長

病院経営定期調査の最終とりまとめを踏まえて、病院経営の厳しさを強く訴える

Gem Medで報じているとおり、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3病院団体が行った2024年度の「病院経営定期調査」では、次のように「病院経営が極めて厳しい状況(減収・減益)に陥っている」状況が明らかにされました(関連記事はこちら)。

【2022年度→23年度比較】
→医業赤字はわずかに縮小したが、コロナ補助金を含めても経常赤字となり、経常赤字病院が大幅に増加(コロナ補助金を加味しても、赤字病院割合は22年度の22.7%から23年度には51.0%に増加)
▼医業利益:22年度の「マイナス2億978万円」から、23年度には「マイナス2億29万円」となり、赤字幅がわずかに縮小した(949万円・4.5%縮小)

▼経常利益(コロナ補助金などを含む):22年度の「1億3435万円の黒字」から、23年度には「3412万円の赤字」に転落した
→コロナ補助金を除外すると、22年度の「8718万円の赤字」から、23年度には「8391万円の赤字」となり、赤字幅がわずかに縮小した(327万円・3.8%縮小)

▼経常「赤字」病院の割合:22年度の「22.7%」から23年度には「51.0%」で、赤字病院割合が28.3ポイント増加
→コロナ補助金を除外すると、22年度の「63.1%」から23年度には「64.9%」で、赤字病院割合が1.8ポイント増加

医業・経常損益の22/23年度比較(100床あたり)(2024年度病院経営定期調査・中間報告1 240917)



【2018年度・19年度・20年度・21年度・22年度・23年度比較】
→医業・経常赤字病院ともに増加を続けている
▼医業「赤字」病院の割合:18年度:63.6%→19年度:65.9%→20年度:86.4%→21年度:68.2%→22年度:88.6%→23年度:86.4%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は22.8ポイント増加

▼コロナ補助を含めて経常「赤字」病院の割合:18年度:52.3%→19年度:54.5%→20年度:27.3%→21年度:9.1%→22年度:13.6%→23年度:56.8%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加

▼コロナ補助を除いた経常「赤字」病院の割合:18年度:52.3%→19年度:54.5%→20年度:72.7%→21年度:50.0%→22年度:77.3%→23年度:65.9%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は13.6ポイント増加

2018→23年度の医業・経常損益比較(2024年度病院経営定期調査・中間報告7 240917)



【昨年(2023年)6月→本年(2024年)6月比較】
→医業赤字・経常赤字ともに拡大し、本年(2024年)6月には65.0%の病院が赤字となった
▼医業利益:23年の「1939万円の赤字」から、本年(24年)には「2180万円の赤字」となり、赤字幅が拡大した(241万円・12.4%悪化)

▼経常利益(コロナ補助金等含む):22年の「1379万円の赤字」から、本年(24年)には「1732万円の赤字」となり、赤字幅が拡大した(353万円・25.6%悪化)
→コロナ補助金を除外すると、23年の「1491万円の赤字」から、本年(24年)には「1735万円の赤字」に赤字幅が拡大した(244万円・16.4%悪化)

▼経常「赤字」病院の割合:23年の「61.5%」から、本年(24年)には「65.0%」となり、赤字病院割合が3.5ポイント増加
→コロナ補助金を除外すると、23年の「64.0%」から、本年(24年)には「65.0%」となり、赤字病院割合が1.0ポイント増加

医業・経常損益の23.6/24.6比較(100床あたり)(2024年度病院経営定期調査・中間報告2 240917)



【2019年・20年・21年・22年・23年・24年の「6月」比較】
→コロナ補助金等で診療単価は上昇しているものの、延べ患者数はコロナ禍前の水準に戻らず、医業・経常赤字病院は増加を続けている
▼▽医業「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:79.5%→22年:84.1%→23年:84.1%→24年:81.8%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は6.8ポイント増加

▼コロナ補助を含めて経常「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:72.7%→22年:75.0%→23年:79.5%→24年:79.5%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加

▼コロナ補助を除いた経常「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:72.7%→22年:75.0%→23年:79.5%→24年:79.5%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加

2019→24年(各6月)の医業・経常損益比較(2024年度病院経営定期調査・中間報告6 240917)



このように「病院経営が悪化」している背景について、3病院団体は、▼2024年度診療報酬改定による医業収益減少▼各種補助金(コロナ関連緊急包括支援事業補助金、水道光熱費補助金)の廃止・減額—による「収益減」と、▼給与費増▼物価高騰—などによる「費用増」があると分析(収益減、支出増により当然「利益」は激減(赤字が激増))。

また、病院団体とは別に福祉医療機構(WAM)が示した「2024年6月調査病院の経営状況(速報値)」でも、2023年度の一般病院(急性期)医業利益率は「2.0%の赤字」、同じく経常利益率は「0.1%の赤字」に悪化していることも紹介しています。

WAMデータから見ても病院経営は厳しいことが伺える1

WAMデータから見ても病院経営は厳しいことが伺える2



9月25日の四病協総合部会(4病院団体の会長・副会長ら幹部で構成される会議体)では、こうした状況を再確認。また、回答期限を9月末まで延長した結果、回答病院はすでに1000施設を超えており、さらに精緻に「減収・減益が進行し、病院経営が極めて厳しい状況に陥っている」ことが明らかになる見込みです。

相澤日病会長は、「11月頃には病院経営定期調査の最終とりまとめを行える見込みだ。それを受けて、期中の診療報酬上の対応も含めた病院経営支援策を国に要望する」考えを明らかにしています。

さらに、相澤会長は「老朽化した建物・設備を改修等する資金捻出も厳しい。キャッシュフローすら回らない病院も出ている。このままでは、来年(2025年)にはさらに病院経営が厳しくなることは明らかで、地域における病院医療の確保が困難になる。国には何らかの手を打ってほしいと強く願っており、また国民にも窮状を理解してほしい」とも訴えています。



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