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「造血器腫瘍または類縁疾患」対象の場合も、がんゲノムプロファイリング評価提供料・がんゲノムプロファイリング検査が算定可—厚労省

2025.3.5.(水)

新たに「造血器腫瘍または類縁疾患ゲノムプロファイリング検査」技術が保険適用されたこと踏まえ、「造血器腫瘍または類縁疾患」を対象とする場合にも、がんゲノムプロファイリング評価提供料・がんゲノムプロファイリング検査を算定可能とする新ルールを追加する—。

新たな医療機器の保険適用を踏まえ、植込型除細動器移植術・経皮的頸動脈ステント留置術に新ルールを追加する—。

厚生労働省は2月28日に通知「『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について』等の一部改正について」を発出し、こうした点を明確にしました。3月1日から適用されています(厚労省サイトはこちら)。

「造血器腫瘍または類縁疾患」を対象とする場合の遺伝子パネル検査等のルールを設ける

今回、改正が行われたのは、2024年度診療報酬改定に関する次の4本の通知です。
(1)診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(2024年3月5日付、保医発0305第4号)
(2)特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について(2024年3月5日付、保医発0305第8号)
(3)特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)の一部改正に伴う特定保険医療材料料(使用歯科材料料)の算定について」(2024年3月5日付、保医発0305第10号)
(3)特定保険医療材料の定義について(2024年3月5日付、保医発0305第12号)



このうち(1)の「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」は、診療報酬点数を算定する際の細かなルール(どういった医療行為を行えば点数算定ができるのか、どういった診療ガイドラインに従わなければならないのか、どの点数と併算定が可能なのかなど)を規定する通知です。

今般、次の4点の診療報酬項目について見直しが行われています。
(a)B011-5【がんゲノムプロファイリング評価提供料】
(b)D006-19【がんゲノムプロファイリング検査】
(c)K599【植込型除細動器移植術】
(d)K609-2【経皮的頸動脈ステント留置術】

まず(a)(b)は、がんゲノム医療を診療報酬で推進するものです。

ゲノム(遺伝情報)解析技術が進み、▼Aという遺伝子変異の生じたがん患者にはαという抗がん剤投与が効果的である▼Bという遺伝子変異のある患者にはβ抗がん剤とγ抗がん剤との併用投与が効果的である―などの知見が明らかになってきています。こうしたゲノム情報に基づいて最適な治療法(抗がん剤)の選択が可能になれば、がん患者1人1人に対し「効果の低い治療法を避け、効果の高い、最適な治療法を優先的に実施する」ことが可能となり、▼治療成績の向上▼患者の経済的・身体的負担の軽減▼医療費の軽減―などにつながると期待されます。

我が国でも、多くの遺伝子変異を一括確認できる「遺伝子パネル検査」の保険適用が進み(関連記事はこちらこちら)、▼患者の同意を得た上で、患者の遺伝子情報・臨床情報を、「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT、国立がん研究センターに設置)に送付する → ▼C-CATで、送付されたデータを「がんゲノム情報のデータベース」(がんゲノム情報レポジトリー・がん知識データベース)に照らし、当該患者のがん治療に有効と考えられる抗がん剤候補や臨床試験・治験などの情報を整理する → ▼がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)において、C-CATからの情報を踏まえて当該患者に最適な治療法を選択し、これに基づいた医療を提供する―という【がんゲノム医療】の実施が始まり、充実・拡大が図られています。
がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキンググループ1 190527

がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議2 190308



こうしたがんゲノム医療を診療報酬で評価するのが(a)(b)の項目で、▼(b)のD006-19【がんゲノムプロファイリング検査】は「検体を採取し、検査機関などに遺伝子パネル検査を依頼し、その結果をC-CAT(国立がん研究センターに設置される「がんゲノム情報管理センターに登録する」ところまでを評価する▼(a)のB011-5【がんゲノムプロファイリング評価提供料】は「C-CATからの解析結果をエキスパートパネルで解釈し、最適な分子標的薬を選定したうえで、患者に説明を行う」プロセスを評価する—イメージです。

がんゲノムプロファイリング検査の評価見直し(2022年度診療報酬改定)



ところで、2月19日の中央社会保険医療協議会・総会で、新たに「造血器腫瘍または類縁疾患ゲノムプロファイリング検査」技術(ヘムサイト解析プログラムおよびヘムサイト診断薬)を保険適用することが認められました。「末梢血、骨髄液、組織または体腔液から抽出したDNAおよびRNA中の造血器腫瘍関連遺伝子変異を検出するための塩基配列情報を取得」(造血器腫瘍または類縁疾患の包括的なゲノムプロファイリング)することで、どの遺伝子に異常があるのかを把握し、最適な抗がん剤治療選択につなげるものです。

ただし、上記の検査料・評価提供料は「固形がん」を対象にしているため、現行規定のままでは新たな血液がんを対象とした検査(造血器腫瘍または類縁疾患ゲノムプロファイリング検査)を保険診療の中で実施できません。

そこで今般、(a)のB011-5【がんゲノムプロファイリング評価提供料】と、(b)のD006-19【がんゲノムプロファイリング検査】について「造血器腫瘍または類縁疾患を対象とする場合の規定」を設け、新検査(造血器腫瘍または類縁疾患ゲノムプロファイリング検査)を保険診療の中で実施可能としました。

●(a)のB011-5【がんゲノムプロファイリング評価提供料】について、次のように「造血器腫瘍または類縁疾患」を対象とした場合の規定を設ける

▽新たな対象患者
造血器腫瘍または類縁疾患患者

▽実施行為
▼「造血器腫瘍または類縁疾患のゲノムプロファイリング検査」を行う

▼得られた包括的なゲノムプロファイルの結果を医学的に解釈するための多職種による検討会(いわゆるエキスパートパネル)で検討を行って治療方針等(どの抗がん剤が最適かなど)を決める

▼治療方針等を、文書を用いて患者に説明する

▽算定点数・回数
造血器腫瘍または類縁疾患の同一疾患につき1回に限り、がんゲノムプロファイリング評価提供料(1万2000点)を算定する



●(b)のD006-19【がんゲノムプロファイリング検査】について、次のように「造血器腫瘍または類縁疾患のゲノムプロファイリング検査」を行う場合の規定を設ける

▽検体
造血器腫瘍の腫瘍細胞、血液、骨髄液または体腔液

▽実施検査
100以上のがん関連遺伝子の変異等を検出するゲノムプロファイリング検査に用いる医療機器等として薬事承認・認証を得ている次世代シーケンシングを用いて、包括的なゲノムプロファイルの取得を行う

▽算定点数
本区分のがんゲノムプロファイリング検査(4万4000点)を準用して算定する

▽算定上の手続き
以下(【がんゲノムプロファイリング検査】を算定するための要件(3)-(5))を満たすこと
▼がんゲノムプロファイルの解析により得られる遺伝子の「シークエンスデータ(FASTQまたはBAM)」「解析データ(VCF、XMLまたはYAML)」「臨床情報等」を、患者の同意に基づき、当該医療機関・検査会社等からC-CATに提出する。この際、患者に文書で「当該データの提出・2次利用」について説明し、同意の有無について診療録・管理簿等に記載する。これらの手続きに当たっては個人情報保護に係る諸法令を遵守する
▼C-CATへのデータ提出・データの2次利用に係る同意が得られない場合でも、当該検査を実施し、算定することができる。その際には同意が得られなかった旨を診療録・管理簿に記載する
▼医療関係団体が定める「インフォームド・コンセント手順書」を遵守し、患者からの同意取得について適切な手続きを確保する

▽対象疾患等に関する留意事項
本検査は下記のいずれかに該当する場合、検体提出時に造血器腫瘍または類縁疾患の同一疾患につき1回のみ算定できる。下記のうち「イ」「エ」「オ」に該当するものについては、医療上の必要性をレセプトの摘要欄に記載する
(ア)初発時に算定できるもの
・急性骨髄性白血病
・急性リンパ性白血病
・骨髄異形成症候群
・骨髄増殖性腫瘍およびその類縁腫瘍
・組織球及び樹状細胞腫瘍

(イ)「従来の方法による検索が行えない」、または「他の造血器腫瘍または類縁疾患と鑑別が困難」な場合において、初発時に算定できるもの
・アグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫
・インドレントB細胞非ホジキンリンパ腫
・T細胞非ホジキンリンパ腫
・NK細胞非ホジキンリンパ腫
・多発性骨髄腫

(ウ)再発または難治時に算定できるもの
・急性骨髄性白血病

(エ)「従来の方法による検索が行えない」または「他の造血器腫瘍または類縁疾患と鑑別が困難」な場合において、再発または難治時に算定できるもの
・フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
・インドレントB細胞非ホジキンリンパ腫
・T細胞非ホジキンリンパ腫
・NK細胞非ホジキンリンパ腫
・慢性リンパ性白血病

(オ)病期を問わず算定できるもの(既存の検査および病理診断等で確定診断に至らず、治療方針の決定が困難な場合に限る)
・原因不明の著しい血球減少



なお、新検査(造血器腫瘍または類縁疾患ゲノムプロファイリング検査)を実施した急性期白血病患者等については、次期診療報酬改定(2026年度改定)までの間「DPCの対象外」(検査のみならず、当該検査を行った入院治療全体が出来高算定)となります。

新機器の保険適用踏まえ、植込型除細動器移植術等に新ルールを追加

また、(c)のK599【植込型除細動器移植術】については、新たな医療機器(体内に植え込み、センシング、カーディオバージョン、抗頻拍ペーシング治療および除細動を行う血管外植込み型除細動器)を用いた場合の点数算定ルールが次のように追加されます。

▽特定保険医療材料の植込型除細動器(III型)・胸骨下植込式電極併用型と植込型除細動器用カテーテル電極(胸骨下植込式)を組み合わせ、関連学会の定める基準等を遵守して使用した場合に限り、K599【植込型除細動器移植術】の「3 皮下植込型リードを用いるもの」(2万4310点)の点数を準用して算定する



さらに(d)のK609-2【経皮的頸動脈ステント留置術】については、新たな医療機器(頸動脈狭窄患者において、経頸動脈的に血管にアクセスし、頸動脈血管形成術・ステント留置時の塞栓を防止するために使用する機器)を用いた場合の点数算定ルールが次のように追加されます。

▽使用目的または効果として「頸動脈狭窄症患者において、経頸動脈的に血管にアクセスし、頸動脈血管形成術およびステント留置術時の塞栓を防止するため」のものとして薬事承認・認証を得ている医療機器を用いて頸動脈ステント留置術を行った場合は、本区分の所定点数(3万4740点)を準用して算定する



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