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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

7対1の重症患者割合、診療側は「20%台前半」「病床規模別の設定」などを要望―中医協総会

2016.1.29.(金)

 7対1入院基本料の重症患者割合は20%台前半とし、医療現場の混乱を避けるために「病床規模別」「内科系・外科系」の基準値も検討する必要がある―。29日に開かれた中央社会保険医療協議会・総会で、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)はこのように要望しました。

 一方、支払側は「M項目に内科的処置などが追加され重症とカウントされる患者が増える。以前に『最低25%』と述べたが、それよりも高い基準値とすべき」と反論しています。

 2016年度の次期診療報酬改定において最も注目されている「7対1入院基本料の施設基準」を巡り、ぎりぎりの調整が続けられます。

1月29日に開催された、「第326回 中央社会保険医療協議会 総会」

1月29日に開催された、「第326回 中央社会保険医療協議会 総会」

「現場の混乱を避けるための配慮が必要」と診療側・中川委員

 厚生労働省が前回27日の中医協総会に個別改定項目(いわゆる短冊)を提示したことから、2016年度改定に向けた議論はまさに大詰めを迎えています。短冊の項目は膨大なため、「7対1入院基本料」を巡る議論は、29日に持ち越しとなっていました。

 短冊で示された7対1の見直し内容をおさらいすると、次のような点がポイントとなっています(関連記事はこちら)。

(1)看護必要度の項目見直し(A項目、B項目の内容を見直し、術後患者などのM項目を新設)

看護必要度の項目と重症患者の定義見直し案、M項目に新たに「脊椎麻酔」「救命等に係る内科的処置」後の患者が追加されている

看護必要度の項目と重症患者の定義見直し案、M項目に新たに「脊椎麻酔」「救命等に係る内科的処置」後の患者が追加されている

(2)重症患者割合の基準値(現在は15%以上)を引き上げる

(3)在宅復帰の対象に「在宅復帰機能強化型の有床診療所」(新設)を追加し、基準値(現在は75%以上)を引き上げる

(4)7対1から10対1に移行する際の急激な変化を緩和するため、一定期間「病棟群単位の入院基本料」を認める

 このうち最大の争点は(2)の重症患者割合の基準値です。具体的な数値は未確定ながら、12月9日に示された資料から「厚労省は25%を想定している」との見方が強くなっています。

 この点について29日の総会では、診療側の中川委員から「20%台前半を希望する」という具体的な要望が出されました。さらに中川委員は「基準値を一律に設定するのではなく、状況を見て『病床規模別の設定』や『内科系・外科系に分けた設定』などの配慮をし、現場の混乱を避ける必要がある」との見解も表明しました。

 これに対し支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「M項目に脊椎麻酔後の患者・救命等の内科的治療を受けている患者が追加され、12月9日の厚労省試算値よりも重症とカウントされる患者は増える。25%よりも高く設定すべきと考える」と反論しています。

「在宅復帰率は7対1の指標に値しない」と支払側・幸野委員

 また幸野委員は(3)の在宅復帰率について、「これまでは『自宅』『高齢者向け住宅』に退院する患者を最重視し、他院の回復期リハ病棟などに転院する患者の評価を低くする方向で検討が進んでいたが、短冊では在宅にカウントする患者を広げる方針だが、なぜか」と質問。

 厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、「有床診療所の在宅復帰機能を評価すべき」「在宅復帰率は2014年度の前回改定で導入されたばかりで、大幅な見直しは混乱を招く」という診療側の意見を踏まえたものと説明しています。

 しかし幸野委員はこの説明に納得せず、「今回の見直しで、在宅復帰率はかなり高くなる。基準値を引き上げても7対1の指標に値しない」と批判しています。

 さらに幸野委員は「短冊には盛り込まれなかったが、平均在院日数も短縮するべきである。厚労省の調査分析では、平均在院日数の長い7対1病院では診療密度が低いことが分かっている。看護必要度・重症患者割合と平均在院日数、この2点を厳しくするべき」と改めて主張しましたが(関連記事はこちら)、中川委員は「在院日数は年々短縮している。これを政策的に短くすれば地域医療が崩壊してしまう。在院日数は医療の質に関係ない。在院日数が長く安い医療費(診療密度が低い)で、患者が納得して退院すれば医療の質も上がる」と強く反対しています。また同じ診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)も、「同じ7対1でも一般病棟の平均在院日数要件は18日以内だが、特定機能病院は26日以内と長く設定されている。しかし特定機能病院の方が医療の質が低いとは考えられない。高度な医療を提供するには、一定の入院期間が必要である」との考えを述べ、理解を求めました。

 最終的にどのような調整が行われるのか注目する必要があります。

平均在院日数の長い(上位10%)の病院では、看護必要度のA項目に該当する患者が少なく、1日当たり請求点数も小さい

平均在院日数の長い(上位10%)の病院では、看護必要度のA項目に該当する患者が少なく、1日当たり請求点数も小さい

病棟群単位の入院基本料、2018年度改定以降も重要テーマとなる見込み

 (4)の病棟群単位の入院基本料については、万代委員は「非常に厳しい基準が設定されているため、かえって『7対1を維持しよう』との考えに向かいかねない。7対1から10対1への移行を促進し、7対1病床を削減することが目的であると思うが、安心して移行できるような運用が必要」との考えを述べています。

 ところで、7対1からの移行先の1つである10対1について「重症患者割合に着目した加算」の点数が引き上げられます。10対1の魅力を高め、7対1からの移行促進を狙うものですが、この点について万代委員は「十分な充実(引き上げ)をしてほしい」とも要望しています。

 なお、今回の「病棟群単位の入院基本料」は一時的なもの(経過措置)とされています。この点について中川委員は「病棟群の状況を検証した上で経過措置に止めるのか、継続すべきなのかを中医協で議論することとしてはどうか」と提案しており、2018年度の診療報酬改定以降に重要な検討テーマとなることが予想されます。

 

 このように、7対1入院基本料の見直しについては、診療側と支払側で意見の隔たりがあり、今後もぎりぎりの調整が続けられます。

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