有床診の減少スピード2019月6月・7月と再び鈍化、次期改定の行方は?―医療施設動態調査(2019年7月)
2019.10.1.(火)
有床診療所の減少スピードは再び鈍化しており、現在のペースが続けば今年(2019年)11月末にベッド数が9万床を切り、来年(2020年)3月末に施設数は6500を割る可能性が高い—。
こうした状況が、厚生労働省が9月27日に公表した医療施設動態調査(2019年7月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の施設数、1か月当たり24施設弱のペースで減少
厚労省は、毎月末の病院・診療所の施設数・病床数を「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。
今年(2019年)7月末の状況を見ると、全国の医療施設は17万9293施設で、前月末から13施設増加しました。
このうち病院の施設数は、前月末から2施設減少し8316施設となりました。病院の種類別に見ると、▼一般病院:7262施設(前月から2施設減少)▼精神科病院:1054施設(同増減なし)—などという状況です。一般病院のうち「療養病床を有する病院」は3679施設で前月末から増減なし、「地域医療支援病院」は611施設で前月末から3施設増えました。
地域医療支援病院については、厚労省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」において承認要件見直し内容が固まり、「地域(都道府県)の判断で、医師の少ない地域への医師派遣実施などのプラスアルファ要件を追加(厳格化)できる」こととなります。早ければ来年(2020年)にも医療法改正案が国会に上程され、改正法成立後には、地域医療支援病院数に大きな変化が生じる可能性もあります(関連記事はこちら)。
診療所に目を移すと、医科診療所は10万2471施設で、前月末から23施設増加しています。無床の医科診療所は増加(前月末から39施設増加)を続けていますが、その一方で有床診療所は前月末から16設減少し、6681施設となりました。
有床診療所の施設数は、2年前(2017年7月末)には7363(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2018年7月末)には6968(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2017年7月末から2018年7月末までの1年間で395施設減少、そこから今年(2019年)7月末までの1年間で287施設減少しています。有床診療所の施設数は、2018年7月末以降、次のように推移しています。
▼2018年7月末:6968施設
↓(20施設減)
▼2018年8月末:6948施設
↓(14施設減)
▼2018年9月末:6934施設
↓(25施設減)
▼2018年10月末:6909施設
↓(16施設減)
▼2018年11月末:6893施設
↓(26施設減)
▼2018年12月末:6867施設
↓(31施設減)
▼2019年1月末:6836施設
↓(30施設減)
▼2019年2月末:6806施設
↓(32施設減)
▼2019年3月末:6774施設
↓(44施設減)
▼2019年4月末:6730施設
↓(24施設減)
▼2019年5月末:6706施設
↓(9施設減)
▼2019年6月末:6697施設
↓(16施設減)
▼2019年7月末:6681施設
この1年間は、1か月当たり「24施設弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、来年(2020年)3月末に6500施設を割る計算です(先月までよりも2か月遅いペース)。
有床診のベッド数、1か月当たり336床弱のペースで減少
翻って医療施設の病床数(ベッド数)を見てみましょう。医療施設全体のベッド数は、今年(2019年)7月末には162万4804床で、前月末から710床減少しました。
うち病院の病床数は153万3460床で、前月末から498床の減少です。医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万9211床(前月末から87床増加)▼療養病床:31万699床(同276床減少)▼精神病床:32万7284床(同269床減少)—などという状況です。
また有床診療所の病床数は前月末から212床減少し、9万1286床となりました。2年前(2017年7月末)には10万19床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2018年7月末)には9万5315床(厚労省のサイトはこちら)であったことから、2017年7月末から2018年7月末までの1年間で4704床減少、そこから今年(2019年)7月末までの1年間で4029床減少しています。2018年7月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2018年7月末:9万5315床
↓(286床減)
▼2018年8月末:9万5029床
↓(176床減)
▼2018年9月末:9万4853床
↓(352床減)
▼2018年10月末:9万4501床
↓(231床減)
▼2018年11月末:9万4270床
↓(374床減)
▼2018年12月末:9万3896床
↓(379床減)
▼2019年1月末:9万3517床
↓(448床減)
▼2019年2月末:9万3069床
↓(470床減)
▼2019年3月末:9万2599床
↓(669床減)
▼2019年4月末:9万1930床
↓(320床減)
▼2019年5月末:9万1610床
↓(112床減)
▼2019年6月末:9万1498床
↓(212床減)
▼2019年7月末:9万1286床
この1年間では、1か月当たり「336床弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、今年(2019年)11月末には9万床を切る計算です(先月までに比べ1か月遅いペース)。
厚労省は、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定において、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の大きく2類型に分け、後者の「地域包括ケア型」について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診の経営を下支えするために、次のような報酬見直しを行いました(関連記事はこちらとこちら)。
▼診療報酬での対応:介護サービスを提供する有床診では、高い入院基本料(入院基本料1-3)の要件を緩和し、さらに要介護者の受け入れを【介護連携加算】(新設、1日につき38点または192点)として評価する
▼介護報酬での対応:利用者専用病床を1床確保すれば、看護小規模多機能型居宅介護の「宿泊室」の設備基準を満たしているものとみなす
今月末・前月末のデータからは、「2018年9-11月分に続き、こうした改定の効果が再び現れた」(2018年12月から2019年5月末までは、有床診の減少スピードはアップ、関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)ように見えます。さらにデータを追いかけて「効果の有無」を検証する必要があります。
とりわけ地方においては有床診は地域包括ケアシステムの構成要素として非常に重要です。その経営を下支えするために診療報酬等で何ができるのか、2020年度の次期診療報酬改定に向けて中央社会保険医療協議会でどういう議論が行われるのか注目が集まります(関連記事はこちら)。
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総合入院体制加算、地域医療構想の実現や病床機能分化を阻害していないか?―入院医療分科会(3)
救命救急1・3は救命救急2・4と患者像が全く異なる、看護必要度評価をどう考えるべきか―入院医療分科会(2)
「急性期一般2・3への移行」と「看護必要度IIの義務化」を分離して進めてはどうか―入院医療分科会(1)
【短期滞在手術等基本料3】、下肢静脈瘤手術などは外来実施が相当数を占める―入院医療分科会(4)
診療データ提出を小規模病院にも義務化し、急性期病棟にも要介護情報等提出を求めてはどうか―入院医療分科会(3)
資源投入量が少なく・在院日数も短いDPC病院、DPC制度を歪めている可能性―入院医療分科会(2)
看護必要度の「A1・B3のみ」等、急性期入院医療の評価指標として妥当か―入院医療分科会(1)
回復期リハ病棟でのFIM評価、療養病棟での中心静脈栄養実施、適切に行われているか検証を―入院医療分科会(2)
入院で実施されていない「免疫抑制剤の内服」「膀胱脱手術」など、看護必要度の評価対象から除くべきか―入院医療分科会(1)
回復期リハビリ病棟から退棟後の医療提供、どのように評価し推進すべきか―入院医療分科会(3)
地域包括ケア病棟の実績評価要件、在宅医療提供の内容に大きな偏り―入院医療分科会(2)
点数が「DPC<地域包括ケア」時点にDPC病棟からの転棟が集中、健全なのか―入院医療分科会(1)
療養病棟に入院する医療区分3の患者、退院患者の8割弱が「死亡」退院―入院医療分科会(2)
入退院支援加算1の「病棟への入退院支援スタッフ配置」要件、緩和すべきか―入院医療分科会(1)
介護医療院の整備など進め、患者・家族の「退院後の介護不安」解消を図るべき―入院医療分科会(2)
急性期一般1では小規模病院ほど認知症入院患者が多いが、看護必要度への影響は―入院医療分科会(1)
看護必要度IとIIとで重症患者割合に大きな乖離、要因を詳しく分析せよ―中医協・基本小委
自院の急性期患者の転棟先として、地域包括ケア病棟を選択することは「問題」なのか―入院医療分科会(2)
7対1から急性期2・3への移行は3%強にとどまる、看護必要度IIの採用は2割弱―入院医療分科会(1)
2020年度改定、入院医療では「救急」や「認知症対策」なども重要論点に—入院医療分科会(2)
DPC対象病院の要件を見直すべきか、入院日数やDPC病床割合などに着目して検討―入院医療分科会(1)
2018年度改定で新設された【急性期一般入院料1】を選択する理由はどこにあるのか―入院医療分科会
2020年度の次期診療報酬改定に向け、急性期一般入院料や看護必要度などを調査―入院医療分科会
「働き方改革」への診療報酬でのサポート、人員配置要件緩和を進める方向は固まるが・・・―中医協総会(1)
リンパ浮腫指導管理料等、2020年度改定に向け「算定対象の拡大」を検討―中医協総会(2)
入院患者のポリファーマシー対策、減薬の成果だけでなく、減薬に向けた取り組みも評価してはどうか―中医協総会(1)
かかりつけ医機能を評価する【機能強化加算】、要件を厳格化すべきか―中医協総会
小規模な急性期一般1で認知症患者が多い背景、回復期リハの実績評価の妥当性など検討を―中医協・基本小委
2020年度診療報酬改定に向けた議論整理、地域医療構想の実現・働き方改革・オンライン診療などで意見対立―中医協総会
スタッフの8割以上が理学療法士の訪問看護ステーション、健全な姿なのか―中医協総会
2040年にかけて人口が70%減少する地域も、医療提供体制の再構築に向け診療報酬で何ができるのか―中医協総会
CT・MRIの共同利用、医療被曝防止に向けたガイドライン活用などを診療報酬でどう進めるか―中医協総会(2)
ポリファーマシー対策を診療報酬でどう進めるか、フォーミュラリの報酬評価には慎重意見―中医協総会(1)
新規の医療技術、安全性・有効性のエビデンス構築を診療報酬で促し、適切な評価につなげよ―中医協総会(2)
オンライン診療、「有効性・安全性のエビデンス」に基づき算定要件などを議論―中医協総会(1)
医師の働き方改革、入院基本料や加算の引き上げなどで対応すべきか―中医協総会(2)
がんゲノム医療の推進に向け、遺伝子パネル検査を6月から保険収載―中医協総会(1)
外来医療の機能分化に向け、「紹介状なし患者の定額負担」「かかりつけ医機能の評価」など議論―中医協総会(2)
画期的な白血病治療薬「キムリア」を保険収載、薬価は3349万円―中医協総会(1)
高齢者へのフレイル・認知症・ポリファーマシ―対策、診療報酬でどうサポートすべきか―中医協総会(3)
診療報酬で生活習慣病の重症化予防、治療と仕事の両立をどう進めていくか―中医協総会(2)
遺伝子パネル検査の保険収載に向けた検討進む、C-CATへのデータ提出等を検査料の算定要件に―中医協総会(1)
「院内助産」「外来での妊産婦対応」を診療報酬でどう支援していくべきか―中医協総会(2)
2020年度改定論議スタート、小児疾患の特性踏まえた診療報酬体系になっているか―中医協総会(1)
2020年度診療報酬改定に向け、「医師働き方改革」等のテーマ別や患者の年代別に課題を議論―中医協総会
介護医療院は2019年3月末で150施設・1万28床、大型施設の転換も―厚労省
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特定機能病院に「第三者評価受審と指摘事項の公表」求めてはどうか、特定機能病院側は「厳しい」と反論―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(2)
地域医療支援病院、「医師の少ない地域」支援をプラスアルファ要件として設定可能に―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(1)
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医師派遣機能、地域医療支援病院の「すべて」には求めるべきではない―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(1)
特定機能病院に第三者評価を義務付けるべきか―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(2)
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地域医療支援病院、「在宅医療支援」「医師派遣」等の機能をどう要件化すべきか―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会
地域医療支援病院の承認要件見直しへ議論開始―厚労省・検討会