2017年に日本人口は39万超の減少、近く「老衰」が死因第3位となる可能性―厚労省
2018.6.4.(月)
2017年、出生数と死亡数の差である「自然増減数」はマイナス39万4373人で、人口減少ペースはますます早まっている。死因をみると第1位のがん、第2位の心疾患に変わりはないが、第3位に脳血管疾患、第4位に老衰が浮上、老衰による死亡数が大きく増加し続けている―。
このような状況が、6月1日に厚生労働省が公表した2017年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
少子化は、社会保障制度はもとより我が国の根幹をも揺るがしかねない問題です。少子化にストップがかかったのか、一時的なものなのか、今後の動向をしっかりと見極めていく必要があります。
2016年から17年にかけて日本国民は39万人超の減少、減少スピードもアップ
人口動態統計は、▼出生▼死亡▼婚姻▼離婚▼死産—の5つの人口動態事象を把握し、少子化対策など厚生労働行政の施策立案のための基礎資料を得ることが目的です。少子化の進行は、「社会保障財源の支え手」はもちろん、「医療・介護サービスの担い手」が足らなくなることを意味し、高齢化がますます進行する我が国では、社会保障制度はもちろん、日本国の存立をも脅かします。
2017年の状況を見ると、まず出生数は94万6060人で、前年に比べて3万918人の減少。出生率(人口1000対)は7.8で、前年から0.2ポイント低下しています。
一方、死亡数は134万433人で、前年に比べて3万2685人増加。死亡率(人口1000対)は10.8で、前年から0.3ポイント上昇しています。
出生数と死亡数の差である「自然増減数」を見ると、マイナス39万4373人で、前年に比べて6万3603人減少しました。自然増減率(人口1000対)はマイナス3.2で、前年から0.6ポイント低下しています。自然減数・自然減率ともに11年連続の減少かつ低下となっており、我が国の「人口減少」にはますます拍車がかかっています。
さらに、「1人の女性が一生の間に生む子供の数」に相当する合計特殊出生率を見ると、2017年は1.43で、前年から0.01ポイント低下してしまっています。2015年に上昇しましたが「一時的な現象」にとどまったようです。
なお、都道府県別に合計特殊出生率を見ると、最も高いのは沖縄県で1.94、次いで宮崎県の1.73、島根県の1.72、長崎県の1.70などという状況です。逆に低いのは東京都の1.21、北海道の1.29、宮城県の1.31などで、「西高東低」の傾向が続いています。
国家が存立するためには、▼領土▼国民▼統治機構―の3要素が不可欠ですが、人口減少は、「国民」の要素が失われつつあること、つまり日本国が消滅に向かっていることを意味しています。社会保障制度はもちろんのこと、我が国の存立基盤が危うくなってきていると言えます。
3.6人に1人ががんで死亡、「老衰」による死亡が大きく増加中
次に死因別の死亡数を見ると、第1位は悪性新生物(腫瘍)で37万3178人(人口10万対の死亡率は299.4)、第2位は心疾患(高血圧性を除く)で20万4203人(同163.8)、第3位は脳血管疾患で10万9844人(同88.1)、第4位は老衰で10万1787人(同81.7)、第5位は肺炎で9万6807人(同77.7)となっています。
第1位の悪性新生物は、2017年の全死亡者に占める割合が27.8%で、日本人の3.6人に1人が「がんで死亡している」計算です。
2016年までは「肺炎」が第3位でしたが、2017年には「脳血管疾患」が第3位、「老衰」が第4位となりました。年次推移を見ると、▼肺炎は2012年頃までは上昇傾向にあったが、その後、横ばいとなり、2017年に大きく減少した▼脳血管疾患は多少の増減を繰り返しながら、大きく減少傾向にある―一方で、「2005年頃から老衰が大きく増加している」ことが分かります。今後、高齢化がますます進行し、医療水準が上がる中では「老衰」が、我が国の3大死因の1つになっていくと考えられそうです。この場合、「自宅」や「介護施設」での看取りが、極めて重要なテーマとなり、例えば施設や在宅医療・介護従事者への「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の普及、さらには一般国民が「自分の人生の最終段階において、どのような医療・介護を受けたいか、また受けたくないか」を家族や親しい友人らと話し合っておく環境・風土の醸成などを進めていくことが求められるでしょう(関連記事はこちら)。
また、年齢(5歳階級)別に主な死因の構成割合を見てみると、5-9歳では「悪性新生物」「不慮の事故」、10-14歳では「悪性新生物」「自殺」、15-29歳では「自殺」・「慮の事故」、30-49歳では「悪性新生物」「自殺」が多くなっています。年齢が上がるにつれ「悪性新生物」の占める割合が高くなりますが、男性では65-69歳、女性では55-59歳でピークを迎えます。つまり、70歳以上の高齢者では「がんによって死亡する割合」が低くなっていくため、「高齢者の特性を踏まえたがん対策」の重要性が伺えます。例えば、「副作用の強い抗がん剤を用いるべきか」、「根治を目指すのではなく、QOLの維持・改善を主目的とした治療プログラムを組むべきではないか」といった議論をこれまで以上に進める必要がありそうです。
さらに、主な部位別に悪性新生物の死亡率を見ると、男性では「肺」が圧倒的に高く(1993年以降第1位)、2015年の死亡数は5万2985人、死亡率は87.3となりました。第2位の「胃」がん(2万9737人、49.0)や第3位の「大腸」がん(2万7309人、45.0)の倍近い死亡数・率となっています。女性では、男性ほどの偏りはなく、第1位は「大腸」(2万3337人、36.5)、第2位は「肺」(2万1110人、33.0)、第3位は「膵臓」(1万6809人、26.3)などという状況です。
男女とも「肺」「大腸」「膵臓」がんでの死亡率が上昇傾向にあります。
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