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資源投入量が少なく・在院日数も短いDPC病院、DPC制度を歪めている可能性―入院医療分科会(2)

2019.9.20.(金)

 DPC病棟から他病棟への転棟割合が著しく高い病院では、▼DPC病床の構成割合が著しく小さい▼医療資源投入量が小さく、在院日数が短い―という特徴があり、DPC制度を歪めている可能性がある。今後、どういった症例を多く受け入れているのか、どういった診療行為を行っているのか、などを詳しく分析し、必要があれば「DPCからの退出」を求めるルールも検討する―。

 9月19日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で、こういった議論も行われました(関連記事はこちらこちら)。

9月19日に開催された、「令和元年度 第7回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

 

他病棟への転棟割合が著しく高いDPC病院、DPC制度を歪めている可能性も

 2018年度の前回診療報酬改定では、「医療資源投入量が著しく低い・平均在院日数が著しく長い病院」についてDPCからの退出も考えてはどうかという宿題が出されていました。

 DPC制度では、全DPC病院の診療実績データをもとに点数や係数を設定します。例えば、DPC点数は、同じ診断群の症例について、どれだけの医療資源を投入したか(入院日数はどの程度か、検査をどの程度行ったか、医薬品等の投与量はどうであったか、など)を見て設定します。このため、仮に「不適切に医療資源投入量が著しく少ない」ケースが混入すると、DPC点数は低くなり、DPC病院全体で「収益が下がり、投入したコストを回収できない」状況も起こりえます。一方、「医療資源投入量が少ない病院」では、点数と実際の資源投入量との差が「純益」になるため、純益が大きくなり、他病院との間で不公平も生じてしまいます。端的に言えば「DPC制度を歪めている」可能性があると指摘されています。

 このテーマについて入院医療分科会では、(1)アウトライヤー病院(例えば、医療資源投入量・在院日数ともに下位●位など)(2)他病棟への転棟が著しく多い病院(3)専門病院―など、さまざまな切り口で「DPCへの参加が好ましくない病院を明確に区分けできるか」を探っています(関連記事はこちらこちら)。

まず(2)の「他病棟への転棟が著しく多い病院」について見てみましょう。DPC病棟から退出する患者のほとんど(96%)は「退院」しますが、4%は「他病棟に転棟」しています。この「他病棟に転棟」する患者の割合を病院ごとに見ると、一部に50%を超えるところが存在することが分かりました。

 
もちろん「他病棟への転棟」そのものが問題なわけではありません。「急性期の治療を一定程度終えたが、退院できるまでに回復したわけではない」患者について、急性期病棟への入院を継続するよりも、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟などの、いわゆるpost acute病棟への転棟を促すことは「機能分化」の面でむしろ好ましいと言えます。

ただし、厚労省の分析によれば、「他病棟への転棟患者割合が50%を超える病院」では、▼当該病院におけるDPC病床の構成割合が著しく小さい(例えば、DPC19床・地域包括ケア170床などといった具合)▼医療資源投入量が小さく、在院日数が短い(つまり(1)のアウトライヤー病院の一部である)―という特徴があることが分かりました。こうした病院が、上述したような「DPC点数への悪影響」を及ぼしている可能性があり、さらに詳しく「どういった症例が多いのか、どういった診療行為を実施しているのか」などを分析していくことになります。


 

専門病院全般としては、資源投入・在院日数における特徴はない

 
また(3)の専門病院とは、ここでは「特定の診断群分類の患者割合が多い(例えば50%以上)」病院を意味し、例えば、「白内障手術症例を集中的に取り扱う眼科の専門病院」「超急性期の心筋梗塞症例のみを取り扱う心臓血管外科の専門病院」などが思い浮かびます。

この点、専門病院について医療資源投入量・在院日数の関係を分析したところ、特段の傾向は見出せませんでした。例えば「専門病院全般として、著しく効率な医療提供を行い(DPC点数と資源投入量との差が大きく)、莫大な利益を上げている」といった状況は見いだせないということです。

 
このため、入院医療分科会の下部組織である作業グループでは「特定の診断群分類を多く診ていることを今後の検討に用いることは慎重に検討すべき」との見解、つまり「専門病院についてDPCからの退出を促すといった乱暴な検討はすべき」との考えを示しています。

 
もっとも、小児を専門に診る病院については、「医療資源投入料が少なく、在院日数が短い」という特性が見いだされたため、今後も「DPC制度の中で、どういった取り扱いをするべきか」を検討していくことになっています。

 
「DPC制度に相応しくない病院」の退出ルールは、2020年度の次期診療報酬改定に向けて引き続き検討が進められる見込みです。

DPCの地域医療係数、ついに「新型インフルエンザ対策」の評価稼働へ

また9月19日の入院医療分科会では、次のような「DPCの機能評価係数II見直し案」や「DPCデータ見直し案」が示されました。入院医療分科会で採否を決めるものではありませんが、特段の反対意見は出ていません。

【機能評価係数II見直し案】
▽地域医療係数において「治験等の実施を積極的に行う病院」(医師主導治験10件以上など)を高く評価することとしているが、該当病院は2019年4月時点でわずか「2病院」にとどまっている。現行基準が厳しすぎることなどが考えられ、今後「臨床研究中核病院における医師主導治験・臨床研究の実施件数」(医師主導治験1件以上など)を参考に基準値を見直す

▽地域医療係数において「新型インフルエンザへの対応を行う病院」を高く評価することとしているが、現在は動いていない(これまで基準がなかったため)。2019年度から厚労省が「新型インフルエンザ等協力医療機関」を公表していることを踏まえ、2020年度以降評価を稼働させる

▽2020年度の診療報酬改定においても「激変緩和係数」(改定年度1年限り)を適用する

【DPCデータに関する見直し案】
▽回復期リハビリテーション病棟で必須な「FIM」、療養病棟で必須な「要介護度」のデータについて、「公開」する

▽「その他の病院を含めた在院日数」データについて、▼地域包括ケア病棟のみに入院していた症例▼各病棟のみで入院した症例―などの集計を行う

 
 なお、DPCデータについては、入院医療分科会で「データ提出加算」等をテーマにさまざまな角度からの見直し論議が進められており、別稿でお伝えいたします。

 
 
 

 

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