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自己判断で抗菌剤服用をやめてしまう患者、医師等の指示を意識しない患者もいる―内閣府・世論調査

2019.10.24.(木)

国民の多くは、医師・薬剤師の指示どおりに抗菌剤(抗生物質)を服用しているが、一部には「自分自身の判断で、途中で服用をやめてしまう」「そもそも医師・薬剤師の指示を意識していない」患者がいる―。

こうした状況が、内閣府が10月11日に公表した「薬が効かない(薬剤耐性)感染症に関する世論調査」結果から明らかになりました(内閣府のサイトはこちら)。

抗菌剤の適正使用に向けて、「医師による患者への説明」のみならず、保険者等による被保険者教育を強力に進めていくことが極めて重要と考えられます。

「風邪などに抗生物質が効かない」ことを知っている一般国民は少数派

感染症治療にはもっぱら抗菌剤(抗生物質)投与が行われますが、抗菌剤の効かない「薬剤耐性菌」の発生が大きな問題となっています。薬剤耐性発生の要因として「漫然とした抗菌剤の使用(使い過ぎ)」や「完治前の抗菌剤中止」などが指摘されています。

我が国では、抗菌剤の使用量そのものは諸外国と比べてそれほど高い水準にあるわけではないものの、▼経口セファロスポリン▼フルオロキノロン▼マクロライド—といった幅広い細菌に有効な抗菌剤(広域抗菌剤)の使用量が極めて多いと指摘されています。そこで厚生労働省は薬剤耐性(AMR)対策アクションプランとして「広域抗菌薬(▼経口セファロスポリン▼フルオロキノロン▼マクロライド—)の使用量を2020年までに半減し、抗微生物薬全体の使用量を3分の2(33%減)とする」との目標を掲げ、例えば2018年度の診療報酬改定で、抗菌剤の適正使用に努める医療機関の取り組み(例えば急性期気道感染症などには抗菌薬を使用しても治らないことなどを丁寧に説明するなど)を評価する【抗菌薬適正使用支援加算】や【小児抗菌薬適正使用支援加算】の創設)などが行われています。

我が国では、セファロスポリンなどの広域抗菌剤の使用量が諸外国に比べて極めて多い



一方で、国民の多くは、急性気道感染症や急性下痢症に罹患した場合に「とにかく抗菌薬を処方してほしい」と医師に依頼することが多く、抗菌薬の適正使用にはまだまだ高いハードルが存在しています。

こうした状況を踏まえ、内閣府は今般、18歳以上の日本国民3000名を対象に、(1)抗生物質の理解度(2)抗生物質の服薬に関する意識(3)薬剤耐性の理解度(4)薬剤耐性対策の理解度―の4点について調査(個別の面接調査)を行いました。有効回答は55.6%(1667名)です。

まず(1)の「抗生物質の理解度」について、「どういうものか知らない」という人は少数派(12.7%)で、「細菌が増えるのを抑えるものである」(66.2%)ことは多くの国民が知っています。

しかし、「抗生物質には様々な種類があり、感染した細菌の種類や体の箇所などに応じて使い分ける必要がある」(39.4%)、「風邪やインフルエンザなどの原因となるウイルスには効かない」(37.8%)という点については、十分に理解している国民はまだ少ないことが分かりました。

一部の患者は、自分の判断で抗生物質使用を中止し、また医師等の指示を意識していない

また(2)の「抗生物質の服用」については、少数派(13.7%)ではあるものの「医師の指示通り飲まないことがある」人が一定数います。とくに、ごく僅かですが「自分自身で判断して、医師や薬剤師の指示を守らないことがある」(2.8%)、「医師や薬剤師の指示を守ることを意識していない」(0.7%)という人もいることが明らかとなりました。年齢階級別に見ると、40歳以上でこうした「自分自身で判断する」「医師等の指示を意識しない」人が比較的多いことが分かります。

勝手に抗菌剤の服用をやめてしまう、医師等の指示を意識していない患者が少なからずいる(薬剤耐性菌世論調査1 191011)



医師の指示どおりに抗生物質を飲まない理由については、▼途中で治ったらそれ以上必要と思わない(52.3%)▼そもそも薬を飲むのは最低限にしたい(35.6%)▼指示通り飲むのを忘れてしまう(34.7%)―が上位にあがっています。前2者にどう対応するべきかが、今後の重要課題と言えます(後者は調剤の工夫などで相当程度対応が可能)。

途中で治ったと思い、抗菌剤服用を勝手にやめてしまう患者は少なくない(薬剤耐性菌世論調査2 191011)


若者と高齢者で、「薬剤耐性菌」を知らない人の割合が多い

一方、(3)の「薬剤耐性菌」については、「知っている」が49.9%、「知らない」「分からない」が50.1%で、18-29歳の若者と高齢者で「知らない」「分からない」人の割合が高くなります。

薬剤耐性菌を知らない人は、若者や高齢者で多い(薬剤耐性菌世論調査3 191011)



また「薬剤耐性菌」を知っている人に対し、どういった点を知っているのかを尋ねると、「抗生物質が効かなくなる」ことは4分の3以上の人が理解していますが、▼抗生物質を正しく飲まないと、薬剤耐性菌が体の中で増えるおそれがある(53.7%)▼健康な人でも、薬剤耐性菌を持っている可能性がある(28.4%)▼薬剤耐性菌は、他の菌と同様に人から人に感染することがある(27.8%)―といった点への理解は十分には進んでいないことも分かりました。

薬剤耐性菌の知識は、一般国民では十分とは言い難い(薬剤耐性菌世論調査4 191011)



さらに(4)では「薬剤耐性菌を増やさないための手法」について聞いており、そこでは、▼抗生物質は医師や薬剤師の指示どおり飲み切る(69.4%)▼手洗い、マスクをつけるなどの感染予防対策(54.1%)▼抗生物質を他人にあげたり、他人からもらったりしない(40.1%)▼むやみに抗生物質の処方を希望しない(29.9%)―とバラつきがあります。

薬剤耐性菌対策に向けた取り組みとして、「むやみに抗生物質処方を求めない」と考えている国民は3割に満たない(薬剤耐性菌世論調査5 191011)



医療関係者においては、資格取得の段階(試験勉強など)、さらに日々の業務を行う中で「薬剤耐性菌」の知識を得ており、例えば「抗菌剤(抗生物質)を処方日数どおりに飲まず、途中でやめてしまう」ことなどの危険性は十分に理解していることでしょう。

しかし、患者である一般国民の多くは、医療知識が十分ではありません。年齢にかかわらず「もう症状は治まった。薬の飲み過ぎは体悪いので、●日分も処方されたが、もう飲むのはやめよう」と勝手に服用をやめてしまう患者もいます。また、「とくにかく抗生物質を出してくれ」と言ってきかない患者も少なくないでしょう(抗生物質を出してくれるまでドクターショッピングを続ける患者もいる)。

こうした患者に対しては、まず医師や薬剤師が「抗生物質は医師・薬剤師の指示通り服用しなければ、『抗生物質が効かない菌』が体の中で増えて、治せなくなってしまいます」「風邪などは抗生物質では治りません。抗生物質の服用は体に毒です」と可能な限り平易な言葉で説明することが重要です。

もっとも「抗生物質を出してくれる医師を探す患者」もおり、こうした患者には「保険者」(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)が被保険者に対する教育を行うことが必要です。あわせて学校教育の中でも、保健体育の一環として「薬剤耐性菌」「抗生物質の適正使用」を教育していくことも重要でしょう。
 
 
 
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