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2018年の軽症での救急搬送患者割合は前年比0.6ポイント増、国民の意識改革には時間がかかる―総務省消防庁

2020.1.8.(水)

2018年中の救急自動車による急病の搬送人員数は389万1040人で、疾病分類別に見ると▼呼吸器系:9.4%▼消化器系:9.0%▼心疾患等:8.5%▼脳疾患:7.2%—などが多いが、「症状・徴候・診断名不明確の状態」が3分の1超(34.9%)を占めている。また、傷病程度別に見ると、「軽症(外来診療)」と「中等症(入院診療)」とで9割を占めている状況は変わらないが、「軽症」割合が増加(前年から0.6ポイント増)してしまっている—。

総務省消防庁が12月26日に発表した2019年版の「救急・救助の現況」から、こういった状況が明らかになりました(総務省消防庁のサイトはこちら(概況)こちら(本編・救急))(前年の記事はこちら)。

「軽症」ながら急病として救急搬送された患者の割合は2017年には前年に比べて減少しましたが、2018年には同じ程度、増加してしまいました。国民の「救急搬送は重症者に特化する」という意識の醸成にはまだ時間がかかりそうです。

救急出動の65%が急病、交通事故は減少傾向

総務省消防庁では毎年、消防機関が前年に行った▼救急業務▼救助業務—と、都道府県が前年に行った消防防災ヘリコプターによる消防活動の状況とをまとめ「救急・救助の現況」として公表しています。(1)救急編(2)救助編(救助隊の活動状況など)(3)航空編(消防防災ヘリコプターの活動状況など)—の3編構成となっていますが、ここでは(1)「救急編」のうち「医療に関連する事項」に焦点を合わせて眺めてみましょう。

まず2018年中の救急出動件数(消防防災ヘリを含む)は660万8341件(前年に比べて4.1%増加)で、搬送人員数は596万2613人(同3.9%増)となりました。このうち救急自動車による搬送人員数は596万295人(搬送人員数の99.96%)、消防防災ヘリによる搬送は2318人(同0.04%)です。

救急出動件数・搬送人員数ともに増加をたどっている(2019年救急・救助の現況1 191226)



救急自動車出動の内訳をみると、▼急病:65.0%(前年から1.0ポイント増加)▼交通事故:7.0%(同0.6ポイント減少)▼一般負傷:15.1%(同0.1ポイント増加)—などとなっており、「交通事故の減少」状況が伺えます。

急病による搬送が増加し、交通事故での搬送が減少してきている(2019年救急・救助の現況2 191226)


「軽症」ながら急病として救急搬送された患者の割合、前年から0.6ポイント増加

2018年中に急病で救急搬送された人は389万1040人います。これを年齢区分、傷病程度で分類すると次のようになります。

【疾病分類別】
▼呼吸器系:9.4%(同0.2ポイント増加)▼消化器系:9.0%(前年から0.3ポイント減少)▼心疾患等:8.5%(同0.1ポイント増加)▼脳疾患7.2%:(同0.4ポイント減少)—などが多いが、「症状・徴候・診断名不明確の状態」が3分の1超(34.9%、前年から0.6ポイント増加)を占めている

急病での搬送においては、症状・徴候・診断名不明確な救急搬送患者が3分の1強を占めている(2019年救急・救助の現況3 191226)



【年齢区分別】
▼65歳以上の高齢者:62.0%(前年から0.2ポイント増加)▼18-64歳の成人:31.1%(同0.1ポイント減少)▼7-17歳の少年:2.5%(同0.1ポイント増加)▼生後28日から7歳の乳幼児:4.4%(同0.2ポイント減少)▼生後28日未満の新生児:0.05%(同微減)—

【傷病程度別】
▼軽症(外来診療):48.7%(前年から0.6ポイント増加)▼中等症(入院診療):42.2%(同0.4ポイント減少)▼重症(長期入院):7.5%(同0.3ポイント減少)▼死亡:1.6%(同0.1ポイント減少)―

前年調査はでは「軽症」搬送割合がし、国民の意識が「救急搬送の要請をクリティカルなケースに限定する必要があり、自らも協力しよう」という方向にシフトしていると見られましたが、今般の調査結果は逆の方向に動いてしまいました。また、高齢者の割合が増加していますが、人口の高齢者シェアそのものが増加している点に鑑みれば、これは「当然」と言えるでしょう。今後も動向を探っていく必要があります。



これらをクロスして「疾病分類別×傷病程度別」で見てみると、▼死亡者では「心疾患等」(39.9%)と「症状・徴候・診断名不明確の状態」(36.8%)とがともに4割弱▼重症者では「脳疾患」(23.0%)と「心疾患等」(21.8%)がともに2割強▼中等症者では「症状・徴候・診断名不明確の状態」(29.5%)が3割弱▼軽症者では「症状・徴候・診断名不明確の状態」(42.0%)が4割強―という状況は、前年から大きく変わっていません。

軽症の救急搬送患者において、症状・徴候・診断名不明確な患者が多い(2019年救急・救助の現況4 191226)



また「年齢区分別×傷病程度別」では、いずれの年齢区分でも「中等症」と「軽症」との合計で9割程度を占めていますが、▼新生児では両者(中等症と軽症)が同程度▼乳幼児・少年・成人では軽症が圧倒的に多い▼高齢者では中等症がやや多い—という違いがあり、この状況も前年から変わっていません。

高齢の救急搬送患者では、若年者と比べて重症者の割合が少ない(2019年救急・救助の現況5 191226)

119番から病院収容までの平均時間は39.5分で緩やかな増加傾向に

「119番通報から救急自動車が現場に到着するまでの時間」は全国平均で8.7分(前年から0.1分延伸)、「119番通報から病院に収容されるまでの時間」は同じく39.5分(前年から0.2分延伸)となりました。グラフを見ると「わずかながら延伸傾向にある」ように見え、今後の動向を注意深く見守る必要がありそうです。

現場到着・病院収容までの時間は緩やかに延伸している(2019年救急・救助の現況6 191226)



また病院収容までの時間(救急出動要請を覚知してから医師に引き継ぐまでの時間)を疾病分類別に見ると、精神系の疾患では若干長く(42.6分で、全体平均よりも8%長い)、依然として「精神疾患患者を受け入れてくれる病院」の探索等に時間がかかる状況があるようです。

なお、救急隊の行った応急処理件数は1600万3545件(前年から5.1%増加)で、うち除細動や気管挿管、薬剤(エピネフリン)投与などの特定行為等の件数は23万5749件(同9.2%増加)・1.5%(同0.1ポイント増加)となりました。

さらに、医師が現場に赴いた件数は4万2106件(前年から6.8%増加、全救急出動の0.6%)、うち急病によるものが2万4755件(前年から11.1%増加)という状況です。医師の現場出動が確実に広まっている状況が伺えます。

医療機関への受け入れ照会「1回」の割合が、前年から1.2ポイント増加

最後に、医療機関などへの搬送状況をみると、受け入れ照会回数は「1回」がもっとも多く急病では82.9%(前年から1.2ポイント減少)、次いで「2回」10.9%(同0.7ポイント増加)、「3回」3.5%(同0.2ポイント増加)と続きます。「11回以上」の照会が必要であったケースも1899件ありました(前年より679件減少)。

また搬送先医療機関の種別にみると、救急告示病院に93.8%(前年から0.3ポイント増加)、非告示病院に6.2%(同0.3ポイント減少)の患者が搬送されています。2019年4月1日時点で、救急告示病院等は4172施設あり、内訳は▼民間:2908施設▼公立:748施設▼公的等:308施設▼国立:208施設―となっています。



さらに救急自動車による「転送」は、2018年中に2万2407(前年から6.7%減少)あり、その理由は、▼処置困難:55.9%(同0.5ポイント減少)▼専門外:12.8%(同0.7ポイント減少)▼満床:5.5%(同0.4ポイント増加)▼手術中:0.8%(同0.1ポイント増加)▼医師不在:0.3%(同0.1ポイント減少)―などとなっています。

救急車による「転送」の半数超は「処置困難」事例である(2019年救急・救助の現況7 191226)

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