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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

後発品の使用促進、「安定供給」と「適切かつ十分な情報提供」が鍵―東京都

2020.3.18.(水)

医療機関や薬局では、後発医薬品(ジェネリック医薬品、以下、後発品)の採用にあたり、▼先発品との適応症一致▼メーカー・卸売業者による十分な在庫確保と安定供給▼迅速な納品体制―などを重視―。

患者は、後発品使用にあたり、▼効果(効き目)が先発品と同じ▼窓口で支払う薬代が安くなる▼副作用の不安が少ない―ことなどを重視―。

「安定供給」と「適切かつ十分な情報提供」が後発品使用促進の鍵―。

東京都が3月10日に発表した「後発医薬品(ジェネリック医薬品)に関するアンケート結果」から、こういった状況が明らかになりました(都のサイトはこちら(概要、文章版)こちら(概要、パワーポイント版)こちら(報告書))。

医療機関の後発品採用基準、先発品との適応症一致や情報開示、安定供給を重視

「医療技術の高度化」(代表的なものとして超高額な白血病等治療薬「キムリア」の保険適用などがあげられる)や「高齢化の進展」などにより医療費は増加を続けています。そうした中で、2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達することから、今後、さらに急速に医療費が増加していくことが確実です。その後、2040年度にかけては高齢者の増加ペースそのものは鈍化するものの、支え手となる現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。

「少なくなる一方の支え手」で「増加を続ける高齢者」を支えていかなければならず、公的医療保険制度の財政基盤は非常に脆くなっていくのです。

こうした状況の下では、「医療費の伸びを我々国民の負担可能な水準に抑える」(医療費適正化)ことが必要不可欠で、その一環として「後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮」が重視されています。しかし、「医療従事者・患者ともに後発品使用に積極的でない人も少なくなく、思うように使用が進まない」状況もあるようです。そこで都は今般、都内に所在する▼病院▼病院に勤務する医師▼診療所(医科、歯科)▼薬局▼薬局を訪問した患者▼医療保険者(健康保険組合や市町村国保など)―を対象に、後発品に関する意識等を調査したものです。

まず、病院・病院勤務医・診療所の「医療提供サイド」の意向を見てみましょう。

後発品採用(院内)に関して、病院では▼後発品があるものは積極的に採用(約48%)▼薬の種類によっては後発品を積極的に採用(約40%)―、診療所では▼後発品があるものは積極的に採用(約40%)▼薬の種類によっては後発品を積極的に採用(約32%)―という具合に、多くの医療機関で後発品採用に積極的なことが伺えます。

採用基準をみると、▼先発品との適応症一致▼メーカーによる品質に関する情報開示▼メーカー・卸売業者による十分な在庫確保と安定供給▼迅速な納品体制給―などが重視されています。

後発品採用に際し、医療提供者は適応症や安定供給を重視(東京都後発品調査6 200310)



一方、院外処方に関しては、病院では▼後発品を積極的に処方(約71%)▼薬の種類によっては後発品を積極的に処方(約16%)▼患者によっては後発品を積極的に処方(約9%)―、診療所では▼後発品を積極的に処方(約41%)▼薬の種類によっては後発品を積極的に処方(約34%)▼患者によっては後発品を積極的に処方(約14%)―という具合に、こちらも積極的な姿勢が伺えます。

逆に「先発品を処方する理由」を見ると、病院・診療所ともに「患者からの希望」が6割程度と圧倒的で、ついで「後発品の品質や医学的な理由(効果や 副作用)に関する疑問」が続きます。

また、医療提供サイドの「後発品への不安」(きっかけやその内容)を見ると、病院では▼供給不足による院内採用薬の変更(約54%)▼供給に関する情報不足(約52%)▼原薬への不安感(約44%)―が多く、医師(病院勤務医、診療所)では▼添加物の違い▼先発品との効果の違い―を重視しています。

医療提供者は、供給不足や添加物、効果について後発品への不安をもっている(東京都後発品調査7 200310)

小児と高齢者で後発品使用がやや低調、効き目や副作用情報も重視

次に、病院や診療所で「先発品を処方する」(後発品を処方しない)最大の理由である「患者の希望」に関する事項を見てみましょう。

患者の多くは「後発品の使用経験」を持ちますが、▼10歳未満▼60歳以上―では「使用経験なし」割合が比較的多くなっています。

小児・高齢者で後発品使用が若干低調である(その1)(東京都後発品調査1 200310)



また、「患者が自分から後発品への切り替え申し出経験」を聞くと、全体では約46%ですが、▼20歳未満▼70歳以上―では「切り替え申し出経験がない」人の割合が比較的多くなっています。

小児と高齢者で後発品使用意向が若干低い(東京都後発品調査7 200310)



「切り替え申し出をしなかった」理由については、▼医師や薬局の判断に任せている(約34%)▼すでに後発品を使用している(約20%)―のほか、「後発品を希望しない」という声も約19%あります。

また「薬局で後発品を勧められた場合」には、全体では約44%が「勧められたとおり後発品にする」、約23%が「先発品・後発品にこだわらない」という姿勢ですが、▼10歳未満▼70歳以上―では「後発品に変更する」「こだわらない」人が比較的少なくなっています。

なお、患者が後発品使用にあたり重視している点をみると、▼効果(効き目)が先発品と同じであること▼窓口で支払う薬代が安くなること▼副作用の不安が少ないこと―が多くなっています。

患者は後発品使用において「効果」を重視(東京都後発品調査3 200310)



また「患者が後発品に変更したきっかけ」をみると、「薬局からの説明」が約82%とほとんどを占めています。

薬局での後発品採用ポイントとしては、▼先発品との適応症一致(約75%)▼メーカー・卸売業者による十分な在庫確保と安定供給(約72%)▼迅速な納品体制(約62%)―となっており、医療機関と同様です。

薬局では、後発品採用について適応症や安定供給を重視している(東京都後発品調査4 200310)



また薬局の約27%が「後発品に対する不安感」を抱えており、その内容は▼添加物の違い(約52%)▼先発医薬品との効果の違い(約41%)▼品質、有効性、供給に関する情報量不足(約38%)―などが目立ちます。

なお、後発品使用推進に向けては「安定供給」を重視する声が約81%と多くなっています。

医療保険者の4割、「差額通知の効果検証」は行わず

一方、医療保険者による「後発品使用促進に向けた取り組み」としては、▼差額通知(先発品から後発品に切り替えた場合に自己負担がどれだけ減少するか)の実施(約89%)▼希望カードや希望シールの配布(約77%)▼機関紙やWebサイトでの啓発(約70%)―などで、97%が何らかの取り組みを行っています。

ただし「差額通知の効果」を検証している医療保険者は約61%にとどまっています。



こうした調査結果から、「後発品の使用促進」に向けては、「メーカーが医療機関や薬局に品質情報を十分に提供するとともに、安定供給体制を確保する」ことが非常に重要であることが分かります。このほか、「子供を持つ親」と「高齢者」に対する後発品情報提供の推進も必要でしょう。その際、多くの親は「先発品から後発品への切り替えによる自己負担減」をどれだけ重視しているのかを検証することも重要でしょう。費用面だけでなく、患者の重視する▼効果(効き目)が先発品と同じであること▼副作用の不安が少ないこと―といった点も勘案した情報提供を医療保険者や医療機関等が積極的に行っていくことも重要ポイントになると考えられます。



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