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紹介状なし外来受診の定額負担徴収義務拡大、厚労省は「一般病床200床以上」と解釈―社保審・医療保険部会

2020.3.23.(月)

「紹介状なし外来受診患者からの定額負担徴収」義務の拡充について、全世代型社会保障検討会議の中間報告では「200床以上の一般病院」への拡大としている。しかし法令上「一般病院」という括りはないことから、他の選定療養などの仕組みを参考に「一般病床200床以上の病院」と解釈できる―。

厚生労働省は3月12開催の社会保障審議会・医療保険部会で、このような考えを示しました。

この点、学識者からは「これまでの仕組みとは大幅に考え方を変えるもので、十分な検討が必要である」との指摘が改めて示されています。

3月12日に開催された、「第126回 社会保障審議会 医療保険部会」

「一般病院」の類型はなく、「一般病床200床以上」と解釈すべきでは

安倍晋三内閣総理大臣が議長を務める「全世代型社会保障検討会議」が昨年(2019年)末に、大病院における「紹介状なし外来受診患者」に対する特別負担徴収義務について、▼初診時5000円・再診時2500円を増額する▼徴収義務対象を『200床以上の一般病院』に拡大し、外来医療の機能分化を促す―などの方向性を示しました。

これに対し、社会保障審議会・医療部会では、「外来医療の機能分化やかかりつけ医機能についての議論は十分に行われておらず、共通認識もできていない。そうした中で、外来医療の機能分化の方向性が示されることは極めて遺憾である。また同規模の病院でも地域によって機能は異なる。規模でなく、機能に着目した議論を行うべきである」との意見が多数示されました。こうした意見を放置して制度設計論議を進めることは許されないため、厚生労働省医政局の吉田学局長は、次の2つのレールで議論を進める考えを示しています(関連記事はこちら)。

(1)社会保障審議会・医療部および「医療計画の見直し等に関する検討会」において、ベースとなる「外来医療の機能分化」「かかりつけ医機能の推進」に関する方向性を固める(関連記事はこちらこちらこちら

(2)社会保障審議会・医療保険部会および中央社会保険医療協議会で「対象病院」や「金額」「医療保険の負担を軽減する仕組み」などを議論する

特別負担徴収義務拡大論議のイメージ(医療保険部会1 200312)



すでに「医療計画の見直し等に関する検討会」と医療部会では、外来機能分化論議が進められており、4月中に中間取りまとめを行う見込みです。この外来機能分化の方向を踏まえて、医療保険部会と中医協で「定額負担徴収を義務付ける医療機関の範囲」や「最低金額」などを本格的に議論していくこととなりますが、3月12日にも、この「紹介状なし外来患者からの定額負担徴収義務」について大枠の議論が行われています。医療部会等の方向は固まっておらず、いわば「フリートーク」という位置づけで、方向付けなどをしたわけではない点に留意が必要です。

全世代型社会保障検討会議の中間報告では、定額負担徴収義務の拡大に関して(A)対象病院拡大をどう考えるか(B)最低金額の引き上げをどう考えるか(C)増額分を「公的医療保険の負担軽減に充てる」仕組みをどう考えるか―という大きく3つの課題を検討することが示されています。

まず(A)については「200床以上の一般病院に拡大する」との宿題が出されていますが、医療法等には「一般病院」という類型はありません。そこで、厚労省は「一般病床200床以上と解釈するべきではないか」との考えを示しています。

上述のとおり、現在(2020年3月まで)は定額負担の徴収義務は▼特定機能病院(86病院、2017年度時点、以下同)▼許可病床400床以上の地域医療支援病院(347病院)―となっています(下表の水色部分)。

これが2020年度診療報酬改定により、2020年4月から▼特定機能病院(86病院)▼一般病床200床以上の地域医療支援病院(580病院)―に拡大されます。一般病床200床以上で許可病床数400床未満の地域医療支援病院(233病院)に新たな義務が課される格好です(下表の緑色部分)。

さらに、「一般病床200床以上病院」にこの徴収義務が拡大されると、新たに688病院が対象になる計算です(下表の桃色部分)。

一般病床200床以上に特別負担徴収義務を拡大した場合の試算(医療保険部会2 200312)



この点、費用負担者代表である佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は、「全世代型社会保障検討会の中間報告から、限定することなく、徴収義務を拡大すべき」と要望しています。

一方、学識者代表である菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)は「これまでの制度設計の想定を大幅に超えるものである。拡大にあたっては十分な検討が必要である」と注意喚起しています。

現在、紹介状なし外来患者からの定額負担については、上述のとおり「特定機能病院」と「一部の地域医療支援病院」で義務化されています。この2つの病院類型については、法令で「紹介率」に関する要件が定められています。つまり「紹介状のある患者を中心に外来医療を提供する」病院であり、「紹介状のない患者」から特別負担徴収を求めることは「想定の範囲内」と言えるのです。

他方、一般病床200床以上の病院においては、1996年の健康保険法等改正で「紹介状なしの外来患者」から特別負担を徴収することが可能となっています。こちらは「病院の判断」で特別負担を徴収するか否かを決められるのです。

すでに何度も議論されていますが、一般病床200床から400床未満の病院にはさまざまな形態があり、また同じ規模の病院でも地域によってその役割はさまざまです。ここに定額負担徴収義務を課すことは、「紹介状のある患者を中心に外来医療を提供する」と想定されていない病院に、「紹介状のある患者を中心に外来医療を提供せよ」と迫るものであり、菅原委員は「十分かつ慎重な検討が必要である」と訴えているのです。

また、医療提供者代表である松原謙二委員(日本医師会副会長)や池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は、「再診」の状況を十分に分析せよと提案しています。紹介状のある外来は「初診」に限定されます。特定機能病院等で高度な医療を受け、状態が安定した後には「地域のクリニックや中小病院に逆紹介する」ことが求められ、制度上は「逆紹介しても特定機能病院等を受診してしまう患者について、2500円以上の特別負担を徴収する義務」がありますが、「この運用が不十分、曖昧なのではないか」と両委員は指摘しています。

多くの病院団体も「再診患者の逆紹介を徹底していけば、外来の機能分化は十分に達成できる」と指摘しており、非常に重要な視点と言えるでしょう。



なお、上述のとおり「医療計画の見直し等に関する検討会」で外来医療の機能分化論議が進められており(関連記事はこちらこちらこちら)、その結論と「一般病床200床以上」とをどのように組み合わせていくのかも今後の重要検討課題となります。

定額負担の増額分を「医療保険の負担軽減に充当」、道理にかなうのか?

また、(B)の金額については、現在「初診時5000円、再診時2500円」という最低金額が定められており、この引き上げを検討していくことになります。

ただし、5000円・2500円の現行金額設定の根拠となる研究を行った菅原委員は、「政策効果を十分に把握したうえで、引き上げを考える必要がある」と強調しています。

仮に「一般病床200床以上の病院」全般に徴収義務が拡大された場合には、いわゆる地域密着型病院も定額負担徴収を行うことになります。その場合、地域によっては「定額負担がハードルとなり外来受診を阻まれる患者」が出てくる可能性があります。特定機能病院・地域医療支援病院では、こうした弊害は極めて稀ですが、「一般病床200床以上の病院」へと対象を広げた場合には、弊害が目立ってくる可能性のあることを十分に考慮する必要があるでしょう。



また(C)では、この特別負担の増額分を「医療保険の負担軽減」に充当する仕組みを求めています。菅原委員は、この点についても「理論的な整理を十分に行い、道理にかなうかを確認する必要がある」と指摘します。

紹介状なし外来受診患者の定額負担は、例えば差額ベッド代や歯科の貴金属使用などと同列に考えることが可能ですが、「差額ベッドの費用を医療保険の負担軽減に充てよ」という議論はありません。外来受診時の定額負担のみ、なぜ「医療保険の負担軽減に充当する」必要があるのか、選定療養(保険診療と保険外診療との併用を可能とする仕組みの1つ)の在り方に遡って考える必要があるかもしれません。



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