3か月間隔で投与する統合失調症治療薬を薬事承認、最大限の留意を払った使用を―厚労省
2020.10.2.(金)
3か月間隔で投与する統合失調症の治療薬が薬事承認された。投与間隔が非常に長く、一度投与すれば「体外に薬物を除去」できず、長期間、血中濃度が持続してしまうために、投与の必要性を慎重に判断し、十分かつ頻回に患者の状態を観察することなどが必要である―。
厚生労働省は9月25日に通知「パリペリドンパルミチン酸エステル持効性懸濁注射液(12週間隔筋注製剤)の使用にあたっての留意事項について」を示し、こうした点に注意を呼びかけました(厚労省のサイトはこちら)。
同成分の1か月製剤では「死亡例」の報告もあり、対象患者や用法用量の遵守を
「パリペリドンパルミチン酸エステル持効性懸濁注射液」の12週(3か月)間隔筋注製剤(販売名:ゼプリオンTRI水懸筋注175mgシリンジ、同263mgシリンジ、同350mgシリンジ、同525mgシリンジ)について、同日に「統合失調症(パリペリドン4週間隔筋注製剤による適切な治療が行われた場合に限る)」の効能・効果が承認されました。投与間隔が3か月と長く、患者サイドには「治療の手間が少なくなり、薬剤アドヒアランスが向上する」というメリットがあります。
ところで、既に薬事承認・保険適用されているパリペリドン4週(1か月)間隔筋注製剤(販売名:ゼプリオン水懸筋注25mgシリンジ、同50mgシリンジ、同75mgシリンジ、同100mgシリンジ、同150mgシリンジ)に関して、同剤との因果関係が不明ながら、市販後調査期間中に複数の死亡例が報告されています。
本剤(3か月間隔製剤)と1か月間隔製剤とは成分が同一であることから、厚労省は本剤(3か月製剤)にも同様のリスクがあると考え、本剤(3か月製剤)の使用に当たって次のような点に留意することを求めています。
【対象患者について】
▽本剤(3か月製剤)は、「他の抗精神病薬を併用せずにパリペリドン4週間隔筋注製剤(1か月製剤)が4か月以上継続して投与され、安全性・忍容性が確認された、症状が安定している患者」に投与すること
【用法・用量について】
▽本剤(3か月製剤)は、次の投与量で、パリペリドン4週間隔筋注製剤(1か月製剤)から切り替えて投与する
▼1か月製剤の投与量がパリペリドンとして25㎎の場合 → 本剤(3か月製剤)の投与はなし
▼同50㎎の場合 → 本剤(3か月製剤)の投与量は「175㎎」
▼同75㎎の場合 → 本剤(3か月製剤)の投与量は「263㎎」
▼同100㎎の場合 → 本剤(3か月製剤)の投与量は「350㎎」
▽本剤(3か月製剤)はパリペリドン4週間隔筋注製剤(1か月製剤)により適切に治療され、切り替え前のパリペリドン4週間隔筋注製剤の少なくとも最後の2回が同用量である患者に投与する
▽パリペリドン4週間隔筋注製剤(1か月製剤)25mgからの切り替えが可能な本剤(3か月製剤)の用量はないため、パリペリドン4週間隔筋注製剤(1か月製剤)25mgを投与している患者では本剤(3か月製剤)を投与しない
▽本剤(3か月製剤)の「即時の用量調節」は困難であることから、投与中に症状の悪化が認められた場合や本剤の減量が必要となった場合は、次のように対応し、「本剤で用量調節を行わない」こと
▼本剤(3か月製剤)投与中に症状の悪化が認められた場合
→患者の状態を十分観察し、抗精神病薬の追加が必要となった場合は、本剤の投与中止を検討する
→本剤(3か月製剤)の投与再開は、本剤以外の抗精神病薬により用量調節を行い、パリペリドン4週間隔筋注製剤(1か月製剤)により適切に治療された場合に行う
→本剤(3か月製剤)の主活性代謝物はパリペリドンであるため、「リスペリドン」(販売名:リスパダールコンスタ筋注用など)、もしくはパリペリドン製剤(インヴェガ錠など)を投与する場合には、過量投与にならないよう、本剤の薬物動態を考慮して投与時期、投与量に十分注意し、患者の状態を十分観察する
▼本剤(3か月製剤)の減量が必要となった場合
→本剤(3か月製剤)の投与中止を検討する
→本剤(3か月財政)の投与再開は、本剤以外の抗精神病薬により用量調節を行い、パリペリドン4週間隔筋注製剤(1か月製剤)により適切に治療された場合に行う
【重要な基本的注意について】
▽本剤(3か月製剤)は精神症状の再発・再燃の予防を目的とするため、「急性期の治療」「複数の抗精神病薬の併用を必要とするような不安定な患者」には用いない
▽一度投与すると「直ちに薬物を体外に排除する方法」がなく、投与中止後も長期間血中濃度が持続するため、本剤(3か月製剤)を投与する場合は、予めその必要性を十分に検討し、副作用の予防、副作用発現時の処置、 過量投与等について十分留意する
▽本剤の投与間隔は「12週間」(3か月)と長いことから、投与後には副作用の発現に注意し、次回投与までの間も患者の状態を十分に観察する。特に投与開始後「早期」には、これまでの受診頻度も踏まえて、より慎重に患者の状態を観察する
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