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マイナンバーカードの保険証利用で、患者サイドにもメリット—社保審・医療保険部会(3)

2020.10.19.(月)

マイナンバーカードの保険証利用によって、患者サイドには「より安全で有効な医療を受けられる」「大手術のために入院する際に、限度額適用認定証等の申請が不要となる」「医療費向上の手続きが簡易になる」などの大きなメリットがある—。

こうしたメリットを享受するためには、医療機関・薬局におけるオンライン資格確認等システムの導入準備(カードリーダーの設置など)、国民におけるマイナンバーカードの保険証利用手続きなどを進める必要がある。ただし、現時点でカードリーダーの申し込みをしている医療機関等は14.5%にとどまり、「2021年3月に6割」という目標値クリアに向けて様々な取り組みを進める必要がある—。

10月14日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、こういった点に関する議論も行われています(10月14日の医療保険部会の関連記事はこちら(不妊治療の保険適用論議)こちら(新型コロナウイルス感染症を踏まえた医療費の動向))。

10月14日に開催された、「第131回 社会保障審議会 医療保険部会」

カードリーダー申し込み医療機関は14.5%にとどまる

Gem Medでもお伝えしているとおり、来年(2021年)3月からオンライン資格確認等システムが稼働します(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

医療機関において、「患者が医療保険に適切に加入しているか」を即時に確認することを目指すシステムです。さらに、このインフラを活用して▼EHR(全国の医療機関で、患者個々人の▼薬剤▼手術・移植▼透析―などの情報を確認できる仕組み)▼電子処方箋▼PHR(国民1人1人が、自分自身の薬剤・健診情報を確認できる仕組み)—も構築される、重要な役割を担っています。

オンライン資格確認等システムは、マイナンバーカードに「健康保険の被保険者証」(以下、保険証)機能を付加するもので、医療機関・薬局では次のような流れで資格確認を行います。

▼患者が、マイナンバーカードを医療機関窓口でカードリーダーにかざす

▼医療機関等の端末からオンラインで、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)・国民健康保険中央会(国保中央会)のデータに「当該患者がどの医療保険(健康保険組合や国民健康保険など)に加入しているのか」を照会する



医療機関・薬局では、(1)マイナンバーカードの読取・資格確認等のソフトウェア・機器の導入(2)ネットワーク環境の整備(3)レセプトコンピュータ、電子カルテシステム等の既存システムの改修―などの準備が必要となり、まず「社会保険診療報酬支払基金のポータルサイトにアカウント登録を行う」ことが最初にすべき手続です。アカウント登録により、▼カードリーダーの配付▼補助金情報等の提供▼医療機関等からの情報発信―などが可能になるとともに、「システム改修費の補助」などの詳細情報も提供されます。

登録状況を見ると、これまでに▼27.2%の医療機関・薬局が支払基金にアカウント登録をしている▼14.5%の医療機関・薬局がカードリーダーの申し込みを行っている(病院:11.6%、診療所:9.0%、歯科診療所:13.6%、薬局:24.3%)―となっています。

オンライン資格確認等システムの準備状況(医療保険部会(3)5 201014)



「2021年3月に6割の医療機関・薬局でオンライン資格確認等システムを導入する」という目標値に照らすと、若干の開きがあり、さらなる導入促進策をとる必要があるでしょう。佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は「より多くの医療機関・薬局でマイナンバーカードによる資格確認が行える環境が整備されていなければ、患者・国民サイドにはメリットを感じられない。6割は最低ラインである」と訴えています。

この点、厚労省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は、部会終了後の記者会見で「数値目標ありきで進めれば無理が生じてしまう。オンライン資格確認等システムの便利さ、良さを伝えていくことが重要である」と強調しています。

マイナンバーカードの保険証利用で、より安全・有効な医療を受けられるメリット

オンライン資格確認等システムの良さ・便利さの例として、山下医療介護連携政策課長は上述した▼EHR(全国の医療機関で、患者個々人の▼薬剤▼手術・移植▼透析―などの情報を確認できる仕組み)▼PHR(国民1人1人が、自分自身の薬剤・健診情報を確認できる仕組み)―などを改めて紹介。

EHR・PHRが構築されれば、例えば意識不明で救急搬送された患者について「抗凝固薬や抗血栓薬等の服用」があるのか、「降圧剤の服用」があるのか、「過去の手術」はどのようなものか、などの情報を確認し、より安全かつ有効な治療を施すことが可能となります。

また、意識が清明であっても、患者自身が過去の治療歴を正確に記憶しているケースは稀で、また記録(診療情報提供書やお薬手帳など)を保有・提示できるケースも少数でしょう。やはり医療機関・薬局でEHR・PHRから情報を閲覧できることとなれば、安全かつ有効な治療が行えます。

一方、国民・患者が、自分自身の過去の薬剤情報や健診情報を確認できれば、「昔に比べて〇〇の値が上がってきているな。生活習慣を改めてみよう」と考える重要なきっかけとなります。

山下医療介護連携政策課長は、こうした「過去の治療歴・薬剤歴を確認する画面」の一例をも紹介しています。

EHR・PHRにおける薬剤情報の閲覧イメージ(医療保険部会(3)3 201014)

EHR・PHRにおける特定健診情報の閲覧イメージ(医療保険部会(3)4 201014)



ところで、こうした「過去の治療歴・薬剤歴」などは、極めて重要な個人情報です。「この医療機関には、私の治療情報などを知られたくない」と考えるケースもあるかもしれません。そこで、医療機関・薬局を受診する際に「この医療機関等で、自分の過去の治療歴・薬剤歴などを閲覧することを認めるか、認めないか」を患者自身が選択することが可能となるのです。患者1人1人の診療情報が蓄積され、その蓄積された診療情報へのアクセス権について、医療機関等受診の都度に患者が「付与するか、付与しないか」を決定するイメージです。

具体的には、保険証としての利用が可能となったマイナンバーカードを医療機関のカードリーダーで読み取る際に、「過去の薬剤情報を、この医療機関に提供しますか?」という質問がなされ「はい」「いいえ」を選択する形です。もっとも、「よくわからないので『いいえ』を選択する」という人が多くなれば、EHRを構築した意味が薄れてしまいます。藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は「情報提供のメリット」などを強くPRしていくことが重要と訴えています。

オンライン資格確認等システムにおいて、自身の診療情報を当該医療機関に認めるか否かを都度確認する(医療保険部会(3)2 201014)

マイナンバーカードの保険証利用で、「高額療養費」の活用も容易に

さらに山下医療介護連携政策課長は、マイナンバーカードの保険証利用によって「限度額適⽤認定証等を提⽰することが不要となる」ケースが多くなるという患者サイドへのメリットも紹介しました。

例えば、大きな手術などのために入院する場合、医療費・自己負担が高くなり「高額療養費」の対象になるケースが多くなります。大手術などを受ける場合、1-3割負担であっても自己負担が高額になる(数十万円から数百万円)ため、年齢・所得に応じた暦月の自己負担上限が設定されています(高額療養費制度)。医療機関の窓口において「この上限までの支払い」とするためには、自身の加入する医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)に申請し、都度、「限度額適⽤認定証等」を交付してもらう必要があります(これを医療機関等の窓口に提示することで、上限までの自己負担となる)。

患者の「毎月の医療費」を確定し、高額療養費の対象となるかどうかは、レセプトの集計を待つ必要があるため、「限度額適用認定証等の提示」が全く不要になるわけではありません。しかし上述した「大手術などのために入院し、医療費が高額となり、確実に高額療養費の対象になると想定される」ようなケースでは、マイナンバーカードの保険証利用によって「限度額適用認定証等を保険者に申請し、送付してもらい、それを医療機関等の窓口に提示する」手間がなくなるのです。これは、入院によりさまざまな負担(心理的負担、経済的負担、手続き的負担)を強いられる患者にとって、非常に大きなメリットになることは確実でしょう。

さらに「医療費控除」の手続きについても、マイナンバーカードの保険証利用によって「簡素化」が図られます(2022年度の確定申告から簡素化される)。

患者サイドでは、こうしたメリットを受けるために、マイナンバーカードの「保険証利用」手続きを行う必要があります。▼専用のアプリをスマートフォンなどにインストールして手続きする方法▼役所や医療機関・薬局において手続きする方法—とがあり、後者では「保険薬局を併設するドラッグストアなどで、買い物の際に手続きする」ことなどが期待されます。

マイナンバーカードの保険証利用に向けて、簡単な手続きが必要となる(医療保険部会(3)1 201014)



なお、マイナンバーカードの「保険証利用」手続きが完了している人は、マイナンバーカード保有者の4.4%にとどまっており、この点についても「さらなるPRの強化」が待たれます。



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